ハクジラ類のかわった歯と餌



マッコウクジラの歯(14a) 下顎だけにあります。


不思議発見・・・ハクジラの歯

「マッコウクジラ」は上顎に歯がありません。下顎の歯も数が少なく餌をくわえる程度しか出来ないようです。雌にはまったく歯はありません。雌はどのように食事をするのでしょう?

「イッカク」は上顎の左側歯が一本、前方へ角状に3bくらい突き出ています。歯はオス同士の闘争に使います。また歯は雄の強さを誇示する器官のようです。この歯も中は空洞で折れやすく、左巻きの筋がついています。

「アカボウクジラ科」の多くの種類は下顎に歯は1〜2対あるだけ、上顎には歯はありません。雌は歯がないか歯肉に埋没して見えません。形は扇状・スペード状・イチョウ葉状をし不思議な形です。歯は顎の先端、中間部、顎の出っ張り部などに生えています。

「マイルカ類」は上・下顎に多くの歯があります。雌の歯も雄とほぼ同じです。
しかしマイルカ科の「ハナゴンドウ」は上顎に歯がなく、下顎も僅かの歯しかありません。イカを主に食べるクジラは呑込む為か歯数が少ないようです。

淡水性の「カワイルカ科」はクチバシが細長く歯数も多くなっています。目は殆ど見えないので、音で餌を察知しピンセット状の長いくちばしで餌を挟みます。

進化の過程で餌に合わせてクジラの歯は色々と代わっていきました。歯やクジラヒゲの面白い進化です。鼻の背側ヘの移行と共に歯も「クジラの七不思議」です。

ハクジラの歯は食べることと雌を獲得するための闘争・誇示用のウェーポン・武器です。また雌と雄との歯の大きい違いが注目点です。ハクジラは男女格差が大きいです。


マッコウクジラの歯です。下顎だけの歯です。
上顎は窪み・ソケットだけです。主にイカ食。


シャチの歯です。多くの鋭い歯が上下顎にあります。
殺し屋の歯。クジラから魚まで食べます。


イッカクの歯です。「角」とは違います。
普通上顎に1本だけです。2本あると「ニカクさん」?


ハクジラの歯の形のいろいろです。


ハクジラの顎に生えている形・位置です。特殊は物を図示しました。

【ハクジラ類の変わった口・歯と餌】

【種】 【種類】 【上顎本数】 【下顎本数】 【雌の歯】 【形・歯の位置など】 【くちばし】 【餌の種類】
コマッコウ科 コマッコウ 0 20-20 普通は上顎に歯はない。細い円錐状、長い犬歯状。 なし。歯は上顎の窪み・ソケットにおさまる。 深海のイカ類、魚、エビ
オガワコマッコウ 0-6 14-26 長い、曲がって非常に鋭い なし 深海のイカ類
マッコウクジラ科 マッコウクジラ 0 36-50 なし 下顎のみ。厚く円錐形、長さ20a、重さ1kgを超える物がある なし。歯は上顎のソケットにおさまる。 頭足類、大型魚類
イッカク科 シロイルカ 16-22 16-18 雄と同じ 前部:円錐状、後部:二股状 短いくちばし 主に魚類。軟体動物、底生無脊椎動物
イッカク 0-2 0 上顎骨に埋没、なし 長さ3b。左巻きの歯。空洞。普通1本。長さ3m。 痕跡程度のくちばし 主に魚、イカ、エビ
アカボウクジラ科 ミナミツチクジラ 0 4 雄と同じ 扇形。前歯は大、後歯は小。 長いくちばし 深海性のイカ、ガンギエイ、タコ、甲殻類、深海魚
ツチクジラ 0 4 雄と同じ 扇形。前歯は大、後歯は小。クジラジラミ、フジツボがついていることがある。 長いくちばし 深海性のイカ、ガンギエイ、タコ、甲殻類、深海魚
キタトックリクジラ 0 2〜(4) 歯茎に埋もれている 普通2本。さらに埋没歯もある。細い円錐状。下顎の先端に生えている 短いくちばし 主にイカ。魚類、深海魚、ナマコ、ヒトデ、エビ
ミナミトックリクジラ 0 2 歯茎に埋もれている 普通2本。細い円錐状。下顎の先端に生えている 短いくちばし イカ
ヨーロッパオオギハクジラ 0 2 なし 扇状。下顎先端と口元中間に生えている かなり長いくちばし イカと小型魚
タイヘイヨウオオギハクジラ 0 2 なし 扇状。下顎先端から20aの所に生えている 尖ったくちばし
ハッブスオオギハクジラ 0 2 なし 扇状。扁平。下顎先端寄り後方に生えている 尖ったくちばし イカ、深海魚
コブハクジラ 0 2 なし 扇状。下顎は強く盛り上がり、そこに前向きに生えている 尖ったくちばし 主にイカ。魚
ヒガシアメリカオオギハクジラ 0 2 なし 扇状。下顎先端から7〜10aの所に生えている 細いくちばし イカ
イチョウハクジラ 0 2 なし イチョウの葉状。扁平で幅広い。盛り上がり部分に生えている 目立つくちばし
ミナミオオギハクジラ 34〜44 2 埋没? イチョウの葉状。幅広い。下顎先端から20〜24a部分に生えている。上は退化した歯 細く長いくちばし
ニュージランドオオギハクジラ 0 2 なし 扇状。扁平で三角形。下顎先端近くに生えている 比較的短いくちばし イカ?
ヒモハクジラ 0 2 なし カールした歯。口先端から30a後方に生えている。上顎をカールする為上顎は完全に開けない。 長いくちばし イカ
アカボウモドキ 0 2 歯茎に埋もれている 米状。歯は下顎の一番先端についている くちばしは中程度の大きさ、下顎が長い イカ?
タイヘイヨウアカボウモドキ 0 2 なし データ不足で不明。歯は下顎の一番先端についている くちばしは中程度の大きさ、下顎が長い
レッサー・ビークト・ホエール 0 2 雄と同じ 米形。下顎の反った部分に生えた小さい歯 くちばしは中程度の大きさ、下顎が長い
オオギハクジラ 0 2 なし 扇形。頑丈で扁平した歯。下顎先端から20aの所に生えている くちばしは長く、口裂は強く反っている。 イカ
タスマニアクチバシクジラ 34〜42 46〜56 ほぼ同じ 円錐状。雄のみ下顎先端に1対の大きい歯を持つ。アカボウクジラの中で唯一機能的歯を持つ。 長く細いくちばし、先端は尖っている。 主に深海の魚類。
アカボウクジラ 0 2 なし 膨らんだ円錐状。顎先端に生えている。フジツボにおおわれていることが多い。 目立たないくちばし。 深海性のイカと深海魚
マイルカ科 ユメゴンドウ 16-24 20-16 雄と同じ 円錐状。イルカ類も捕食する 丸い頭部。くちばしはない イカ類、大型魚類、小型のクジラ類
コビレゴンドウ 14-18 14-18 雄と同じ 円錐状。クジラ類も捕食する 球場の頭部。くちばしはない。 ほとんどは頭足類、魚
ヒレナガゴンドウ 16-24 16-24 雄と同じ 円錐状 前頭部がくちばしの上を覆っている。 イカ類、魚類。
シャチ 20-26 20-26 雄と同じ 円錐状。殺し屋。歯は上下かみ合う。 丸い頭部は先端ほど細い。 クジラ、アザラシ、ジュゴン、魚、鳥、亀
カズハゴンドウ 42-50 42-50 雄と同じ 円錐状 ほっそりとした頭部。先端に向かい細くなる。 イカ類、小型魚類
オキゴンドウ 16-22 16-22 雄と同じ 円錐状 長くほっそりとした頭部。丸くなった吻端に向かい細くなる。 イカ類、大型魚類、小型のクジラ類
マイルカ 80-120 80-120 雄と同じ 鋭い円錐状。尖った小さな歯 長いくちばしと頭部境目ははっきりしている。 イカ類マイワシ、アンチョビー、ニシン
セミイルカ 74-98 74-98 雄と同じ 鋭い円錐状。細くて鋭く尖る。 短くほっそり 表層・中層のイカ、ハダカイワシ
シロハラセミイルカ 88-89 88-89 雄と同じ 鋭い米状 短く小さい イカ、ハダカイワシ
コビトイルカ 52-70 52-70 雄と同じ 鋭い米状 長い 魚、エビ、カニ。河川にも入る。
シナウスイロイルカ 58-76 58-76 雄と同じ 細長い米状 長くほっそり 魚食
アフリカウスイロイルカ 52-62 52-62 雄と同じ 細長い米状 細長い 魚食
スジイルカ 78-106 78-110 雄と同じ 細い米状。細く尖る。 黒色で突き出す。長い。 魚類、イカ、小エビ。主にハダカイワシ類。中層性。
クライメンイルカ 78-98 76-96 雄と同じ 細い米状。細く尖る。 長い 魚類、イカ
ハシナガイルカ 84-128 84-124 雄と同じ 細い米状。非常に細く先が尖る。 細長い 魚類、イカ
マダライルカ 70-96 68-94 雄と同じ 細い米状。細く鋭く尖っている。 細長い イカ、サバ、トビウオ
タイセイヨウマダライルカ 64-84 60-80 雄と同じ 細い米状。先はとがっている。 長くズングリしている。 多種類の魚類。イカ
シワハイルカ 38-52 38-56 雄と同じ 円錐状、縦に沢山の筋が入り名前の由来の歯のシワである。 細長い イカ、タコ、魚類
ハンドウイルカ 40-52 36-48 雄と同じ 円錐状。太い かなり短い。長さと厚さは変異に富む 魚類、イカ、タコ
イロワケイルカ 56-68 52-70 雄と同じ 細い米状。尖った歯 黒い円錐形の頭部 エビ、ペヘレイ、マイワシ、メルルーサ
ハラジロイルカ 56-68 56-66 雄と同じ 米状。小さな先端が尖った歯 不明瞭なくちばし 甲殻類、頭足類、魚類
コシャチイルカ 44-56 44-56 雄と同じ 細い米状。小さく鋭い。 不明瞭なくちばし 主に魚類
セッパリイルカ 52-64 52-64 雄と同じ 米状。先端が尖る。 不明瞭なくちばし 小魚類、イカ
ハナゴンドウ 0 4〜14 雄と同じ 下顎の先端に強い卵形の歯、イカ捕食で歯が少ない 僅かに膨らんだ前頭部は口に向かって急激に傾斜している。 魚類、頭足類。イカが主食
サラワクイルカ 72-88 68-88 雄と同じ 米状。 短いがはっきりしている。 中層の魚類、甲殻類、イカ類
タイセイヨウカマイルカ 58-80 58-80 雄と同じ 米状。先がとがる 短いがはっきりしている。 ニシン、イカナゴ、サバの幼魚、イカ
ハナジロカマイルカ 44-56 44-56 雄と同じ 米状。 短く薄い。 主にイワシ科、タラ科、シシャモ
ミナミカマイルカ 54-66 54-66 雄と同じ 細い米状 短く目立たない。 タコほか
ダンダラカマイルカ 56 56 雄と同じ 米状。小さく鋭い歯 短く薄い。 小魚ほか
カマイルカ 42-64 42-64 雄と同じ 細い米状。先は鋭く尖る。 僅かに認められる黒いくちばし 群集性の小魚、イカ類。中深性・底性の餌
ハラジロカマイルカ 48-72 48-72 雄と同じ 細い米状。先は鋭く尖る。 短く黒いくちばし アンチョビー、イカ、ハダカイワシ
カワゴンドウ 34-40 30-36 雄と同じ 円錐形、釘状。 大きいメロン、くちばしはない 魚類、頭足類、甲殻類、無脊椎動物
アマゾンカワイルカ科 アマゾンカワイルカ 46-70 46-70 雄と同じ 膨らんだ円錐形 細長く僅かに下方に曲がったくちばし 魚類とかに。
ガンジスカワイルカ科 インダスカワイルカ 52-78 52-70 雄と同じ 前部は細い円錐状。後方の歯は内側に縁どりがある。 細長い。先端ほど薄くなる。 魚と甲殻類。ナマズ、コイ、ハゼ、ニシン科
ガンジスカワイルカ科 ガンジスカワイルカ 52-78 52-70 雄と同じ 細い円錐状。先端ほど歯は長くなる。ピンセット状のアゴ。 細長い。先端ほど薄くなる。雌がより長い。 魚類、甲殻類、軟体動物
ラプラダカワイルカ科 ラプラダカワイルカ 106-116 102-112 雄と同じ 円錐形。先の尖った細い歯 長いくちばし 魚類(ニベ科)イカ、タコ、甲殻類、車えび
ヨウスコウカワイルカ 62-68 64-72 雄と同じ 円錐形。 細長いくちばし。少し上方に反る。 多くの魚類。ナマズなど。
ネズミイルカ科 スナメリ 26-44 26-44 雄と同じ 小さい扇状 僅かに上方に曲がった小さい口。 イカナゴ、エビ、タコ。植物性も食べる。
メガネイルカ 36-46 32-40 雄と同じ 小さい扇状。スペード状。 黒い唇。くちばしはない。 不明
ネズミイルカ 44-56 42-52 雄と同じ 小さい扇状。へら状で先の丸い歯 黒い唇とアゴ。くちばしはない。 ニシン、アンチョビー、オキアミ
コガシラネズミイルカ 34-42 34-40 雄と同じ 小さい扇状 黒い唇とアゴ。くちばしはない。 不明。ニベ、イサキ、イカ
コハリイルカ 28-32 34-38 雄と同じ 小さい扇状。へら状。 黒い唇とアゴ。くちばしはない。 アンチョビー、ニベ、メルルーサ、マイワシ
イシイルカ 38-58 38-58 雄と同じ 小さい扇状・スペード状。最も歯が小さい。 唇は黒い。くちばしはない。 イカ、ハダカイワシ、メルルーサ

(参考)
クジラとイルカの図鑑 日本ヴォーグ社
海の哺乳類 FAO種同定ガイド NTT出版