網で鯨を捕った

 
台部に「鯨敷網」と書かれた「鯨にのった恵比須様」 唐津市神渡島  (撮影:ユ 義人氏)
 
神集島の漁船 「村張り大敷網」専用の漁港   (撮影:ユ 義人氏)

「網干し場」                        「神集島定置網漁場遠景」 (撮影:ユ 義人氏)

神集島 漁協支所   (撮影:ユ 義人氏)


断切網による捕鯨

伊根湾の断切網  (亀島区所蔵)

鯨が湾内・入り江に入ると、出口を網で塞ぎ、この網を徐々に岸方向に
絞込み鯨の動きを止めて、銛や剣、手形包丁で突いて鯨を仕留めました。
小さいイルカや小型の迷い鯨はさらに小さい入り江に追い込み網で塞ぎ
捕獲していた。この漁法は縄文時代から行われた「原始的漁法」です。
この網漁法が網掛突取捕鯨法の開発の切っ掛けになったとの説もある。

断切網による捕鯨で有名なのは京都府与謝郡伊根(天文年間)です。上図
の様に伊根湾の入り口に青島があり天然の防波堤となり湾口を仕切るのに
適していました。捕獲は年に平均2頭以下で常時捕獲は出来なかったので
鯨組は発生しなかったが、鯨が湾内に入って来たときなどは漁民が総出で
捕獲していました。
「伊根はよいとこ 後は山で 前は鰤(ぶり)とる 鯨(くじら)とる」
と唄われております。
断切網は江戸時代に長門青海島の紫津浦・瀬戸崎浦(1677)でも行われ、
岸近くは断切網、沖合いは網掛突取捕鯨と、2漁法は併行して使用されました。

定置網(大敷網)による捕鯨

捕鯨敷網の敷設図(長崎歴史文化博物館)

網の長さ400間(727b)、幅135間(245b)

五島列島漁業図解(長崎歴史文化博物館)

定置網とは、海岸付近に魚や鯨が誘導されて入るよう立体的に仕掛けた
網を張り、網に獲物が入ると逃げ難いように工夫し固定した定置網です。

網が底部・脇部にあり、周りを徐々に絞込み、網の上にいる鯨をすくいあげ
て動けなくし、後は突取捕鯨法と同じように銛や剣で突いて仕留る漁法です。

網は竹のウキで浮かし、綱を方々に張って碇や土俵などで網全体を固定します。
簡単な仕掛けの網は「台網」「大敷網」といい、魚が逃げやすいのが欠点です。

魚が逃げないように立体的迷路状にし魚取部をつけたものを「落網」といいます。
魚を誘導して、下部に落す魚取部を二つ付けたものを「二重落網」という。

現在でも各地で行われ、ブリ・マグロ・サケマス定置網が活躍しています。
大仕掛けの定置網で、獲物が入るのを待つ「受身の消極的漁獲法」です。
設置費用も多くかかります。神集島(かしわじま)の「鯨大敷網」
が有名で、珍しい「鯨にのったエビス様」(写真参照)があります。

「鯨大敷網」は唐津市神集島(明治15年頃〜大正2年、毎年7〜8頭捕獲)、
五島・魚目浦(文化9年・1812)、宇久島、薩南片之浦、長門湯玉浦・
紫津浦(1532年〜55年)、土佐窪津(網掛突取の後,網二つ、一網に年2〜4頭
捕獲があった)などで行われた。
「鯨台網」は能登宇出津で行われていました。
 
大敷網・台網(漁具漁法学:宮本秀明著)

鯨大敷網(第3回内国勧業博覧会)

網掛突取法による捕鯨
網掛け突取法とは、網を用いて鯨の行動を制し、突き捕りやすくした漁法で
「断切網」と「突取捕鯨法」を合わせた様な捕鯨です。多くの勢子船が音や銛で
鯨を脅し、網代に追い込みます。そこで鯨の前方に三重に網を張り、囲い込みます。

網は鯨体・ヒレに絡まり鯨の泳ぎが封じられます。泳ぎが鈍くなった鯨に「綱付き
の銛」を投げます。当った綱で舟を引かせ疲労させて、剣で内臓を突き致命傷を与えます。
ここで羽刺が手形包丁を持って鯨に乗りロープを通す穴を鯨の鼻や数箇所に開けます。

鼻頭にロープを通した後2隻の舟が鯨体をはさみ、2隻間をつないだ木の棒に吊るし
鯨体の下にもロープを通します。後は処理場(納屋場)へ曳航、海岸で解体します。
多くの舟・人・場所を要する大規模の捕鯨です。ザトウクジラや足の速い
ナガスクジラがこの漁法で捕獲できるようになり漁獲効率が上がりました。

※突取捕鯨
古式の原始的な漁法。伊勢湾の師崎に始まり、太地、土佐、西海地域に広がりました。
多くの勢子舟が鯨を追い、綱付の銛を沢山投げて鯨に勢子舟を引かせ疲労させ、
弱った鯨体を剣で突き致命傷を与えます。最後に羽刺しが鼻に通す穴をあけ、
ロープを通し持双舟2隻が間に鯨体を抱き基地に曳航します。

安房勝山の槌鯨漁は明治時代までこの漁法を用いて捕鯨を行っていました。
捕獲に時間が掛かる、鯨を逃すことが多いなどの欠点がありました。

捕鯨初期には欧米の捕鯨船も船の大きさは違いますが銛・剣を用いて捕獲していました。
(資料)
くじら取りの系譜 中園成生著 長崎新聞新書
鯨取り絵物語 中園茂生・安永浩著 弦書房
クジラと日本人の物語 沿岸捕鯨考 小島孝夫編 東京書房
くじらといきるー西海捕鯨の歴史と文化 佐賀県立名護屋城博物館
西海のくじら捕り 立平 進著 ろうきんブックレット
漁具漁法学(網漁具編) 宮本秀明著 金原出版