鯨に関わる世界の伝説・迷信




ウニコール:イッカクの歯・高貴薬:縦に立っている角状の歯(千葉県成田の漢方薬局)
国名 伝説・民話・迷信ほか 内容
ベトナム 薬  鯨の「聖水」  海岸で鯨の死体が見つかった。この話は瞬く間に各地の人々に知れ渡り、
果物や菓子、ロウソク、線香を持参し鯨を拝みに訪れる人々で溢れかえっ
た。鯨の死体が腐敗し異臭を放つようになると、人々はその肉と脂肪から
流れ出るあぶらを先を争って壷や瓶にすくい取って持ち帰った鯨は聖なる
生き物として崇められており、鯨の「聖水」は万病に効くと信じられている。
(Vietnam News)
ヨーロッパ 薬 ウニコール
イッカクの歯・高貴薬 
ヨーロッパではユニコーンの角アリコーンは万病に効くという伝承があり、
王や貴族に珍重されていた。
江戸時代の日本にも伝わっており、新井白石が幼時に病気で死にそうにな
った時「ウニコール」という高貴薬を飲んで命をとりとめたと書き残して
いる。
木村蒹葭堂(けんかどう)という本草学者が、このウニコールについて調
べ、現在のイッカク(イッカククジラ)だったことを突き止めた。
(Masahiro Aibara ) 
アメリカ 【白鯨】のモデル
モビー・ディック
モカ・ディック  
モビー・ディックは、1810年頃チリ沖のモカ島で発見され、1859
年に仕留められるまで数多くの鯨捕りの命を奪ったモカ・ディックと呼ば
れる白鯨がモデルになっている。
エイハブ船長が船員の忠告も聞かず<モビー・ディック>という白鯨を異
常なしつこさで追う長編小説。 
NZ クジラをめぐる伝説 
鯨に乗る 
先住民マオリの言い伝え
人はクジラに乗って海の彼方の楽園ハワイキからやってきた。
マオリたちの、ホエール・ライダーの神話です。
(The Whale Rider クジラをめぐる物語) 
ギリシャ ギリシャ神話 
神聖な動物
イルカはギリシャ神話では神聖な動物とされていました。これは、船人た
ちに航海の季節を教えたのと、海の神ポセイドンの使いであると信じられ
ていたためです。
古代ギリシャの人々はイルカを殺すことは、人殺しと同じくらいよくない
こととされていました。(かおりのクジラ・イルカ図鑑) 
イルカのアリオン救助 
イルカに乗った少年
シチリア島の音楽コンクールで優勝したアリオンは、たくさんの賞金を持
って自分の生まれた島コリントスへ向かいました。
その船の水夫たちはアリオンの賞金を奪おうとします。
水夫たちは賞金を船に残して海に飛び込むようアリオンに命令しました。

アリオンは助からぬ命だと悟り、琴をならし最後の歌を歌いました。
琴を弾き終えて海に飛び込んだアリオンをイルカは救い、船よりも先に岬
に送り届けました。
やがて、遅れて帰ってきた船長と水夫たちは、その悪事が発見されて、厳
しい罰を受け、アリオンの名声はより一層高まりました。

アリオンは無事、ギリシャの海岸に届けられ、?以来、人は、イルカを親友
 と考えるように なったというお話。
(ギリシャ神話)(かおりのクジラ・イルカ図鑑)  
カナダ ハイダ族とシャチ伝説
 人⇒シャチ
カナダ西海岸のハイダ族には、シャチをカヌーとして利用した悪い海の民の
話があります。
ある日、彼らはハイダ族の酋長をシャチに変えました。
今ではこのシャチが、ハイダ族をこの海の民の攻撃から守っているといわれ
ています。(かおりのクジラ・イルカ図鑑) 
ギリシャ 海の怪物お化けクジラ 
ギリシャ神話 
くじら座 
鯨⇒石
海の怪物お化けクジラは、海の神ポセイドンの命を受け、ある日エチオピア
の海岸にやってきました。
そして、いけにえのアンドロメダ姫を襲おうとした正にその時に、勇者ペル
セウスが通りかかりました。

彼は、魔女メドゥサの首を取って故郷に帰る途中だったのです。
ペルセウスは姫を助けるために、剣を抜いてクジラと戦いましたが、形成は
たちまち不利になってしまいました。
そこでペルセウスは、自分が勝ち取ってきたメドゥサの首を袋から出すと、
お化けクジラの前にさしだしました。

すると、お化けクジラの姿は、みるみるうちに、黒い岩へと変わっていき、
とうとう海に沈んでしまいました。
※鯨石や鯨岩になった伝説は日本にもあります。 
北米 海のオオカミ 
インディアン伝説 
オオカミ民話 
オオカミ⇒シャチ
一人の男が海岸で二頭のオオカミの仔を見つけました。
男はその仔らを家に連れて帰り、大事に育てました。二頭のオオカミは成長
し、ある日海に入りクジラを殺して男の家に持ち帰りました。

それから毎日のようにオオカミ達はクジラを持ち帰るようになり、やげて海
岸にはクジラの死骸が山のように残され、次第に腐って悪臭を放つようにな
りました。これを見て嘆いた天上の神は、嵐を呼び、霧を起こしました。

オオカミ達はクジラを見つけることげできず、そのうえ高波のせいで岸にも
戻ることができなくなりました。
こうして二頭のオオカミは海にとどまり海のオオカミ、クジラハンターとな
ったのです。(瀧川紫音) 
カナダ 五本の指 
海に帰る 
進化 
鯨⇒人間
20世紀中頃、カナダ太平洋コーストで捕らえられたクジラのお腹には ?まだ
生まれる前の赤ちゃんがいて、そのクジラの赤ちゃんのヒレにははっきり
5つの指がついていたそうです。
母親のお腹の中で5本の指はひとつのヒレにかわり、そして生まれます。

遥か大昔、クジラたちは一度、陸地を目指し、実際、陸に上がり、 ?けれど、
やはり海の世界が愛おしく、陸を去り、海へ帰っていった。
一方そのとき、陸に残った者たちもいて、彼らが人間になったとさ。
(The Whale Rider クジラをめぐる物語)
チュクチクジラの消えた日 
シベリア文学 
鯨⇒人間
ナウという女がいた。ナウは一人で暮らしていたが、ある日、海岸で一人の
男と出会った。
男の名はリョウ。リョウはクジラだったが、ナウという人間の女を愛したことで、
クジラから人間となった。ナウとリョウは夫婦となり、子供をもうける。最初の
子はすべてクジラだった。
次からは人間だった。ナウとリョウが子を産み、育て、海岸には村ができた。
(ユーリー・ルィトヘウ  <青山出版社>) 
アマゾン アマゾンカワイルカ伝説 
未婚女性を誘惑するイルカ
人間変身
アマゾンカワイルカは、祭りの夜に、魅惑的な男性の姿をして村へ現れ、未婚の
女性たちを誘惑する。
その祭りのあとに、未婚の女性が身ごもると、その父親は美しいイルカであった
と伝えられています。(かおりのクジラ・イルカ図鑑) 
イタリア 『ピノッキオ(ピノキオ)』と鯨
鯨の腹にいるピノキオ 
苦難を乗り越えて人間の少年へと変化するまでの童話・逸話。最後に「鯨の腹」
の中でおじいさんと出会い おじいさんを助けて自分は死んでしまうが美しい
心をブルーフェアリーに認められ 人間の子供に生まれ変わりピノッキオとお
じいさんが仲良く暮らせるハッピーなエンディングが有名な物語
(『ウィキペディア』)
イスラム国 コーランに登場する動物のお話
ユーヌスを呑み込んだ鯨
そのむかしニナワという国に神様は預言者ユーヌスを神のみ使いとして送られ
ました。
他の預言使者と同じようにユーヌスもその国の人たちが神様に従うことを説く
ために使わされました。

ある日誰にも言わずにユーヌスはニナワの国を逃げ出して行きました。
そしてある海辺にたどり着き 一艘の舟が出発しようとしているのが目に入り
ました。
ユーヌスはその船の人たちにいっしょについて行っていいかどうかを尋ねま
した。

いいことになり、ユーヌスはその人たちと船をともにすることになりました。
船が出て何日かした後すごく大きな台風が吹き荒れました。
大きな波が船を襲い、船の底が割れてしまいました。彼らは必死に水を船底か
らくみ出しましたが水は沢山入ってきます。

全員が沈んでしまうよりはこの中の一人が犠牲になる方がいいということに
なり、くじを引いて生け贄を決めることにしました。
船頭はくじにあたってしまった人の名前を告げました。なんとユーヌスだっ
たのです。

ユーヌスは神様が命を与えたそこの人たちを救うために海へ飛び込んでい
きました。
ユーヌスが海に飛び込んだとき、神様は一匹の鯨にユーヌスがおぼれて死
なないように助けるよう命じていたのでした。

荒れた海の中におぼれているユーヌスを見つけると、鯨はかけつけていっ
きに飲み込みました。
3日3晩鯨はユーヌスを守るために食事もせずに泳ぎつづけました。
4日目に入り、鯨はやっとのことで島を見つけました。

鯨は陸に乗り上げ口をあけた。少ししてユーヌスは弱った体で鯨の腹から
出てきました。
鯨は簡単に挨拶をするとすぐに海へ戻っていきました。
鯨は地上でアッラーが作った生き物として立派なことをしたわけです。

※聖書の大魚に呑まれたヨナとそっくりです。
(コーランに登場する動物のお話、コーランのアッサファアト章の142節
から144節)  
ヨナを呑み込んだ鯨 
聖書
預言者ヨナは異邦の町ニネベ(古代アッシリアの首都)に行って説教せよ
との神の命を受けるが、それをいやがり、南スペインの、当時世界の西の
果てと考えられていたタルシシュ行きの船に乗る。
途中で船は大嵐にあい、それを静めるためにヨナは海中に投げこまれる。

彼は大魚に飲み込まれ三日三晩その腹中で過ごす。

彼の祈りにこたえて神は彼を魚から吐き出させ、ヨナは心を入れかえニ
ネベに行って主の言葉を説教する。

町中の人びとはそれを聞いて悔い改め、王もまたそれにならったので町
が滅びなかった、という。
※ヨナとユーヌス、ニネベとニナワの読み違いくらいで略同じ話です。
(32)ヨナ(ヨナ書より)  
ケルト 妖精物語 
ケルト民話 
鯨に呑み込まれた話
ヒュー・クールハ王はティール・コナルに住んでいた。彼には娘が3人
いて、その名はフェア、ブラウン、トレンブリングといった。
フェアとブラウンは新しいドレスを着て日曜ごとに教会へ行ったが、
トレンブリングは家に残って料理と掃除をさせられていた。

2人の姉は、美しい妹が自分たちよりも早く結婚してしまうのを恐れて
彼女に家から出ないよう強いていたのだった。
7年たったある日曜日の朝、姉たちの留守中に、年老いた鶏飼い女が現
れてトレンブリングに言った。

「今日は教会へお行き。」トレンブリングはお願いした。
「教会へ出掛けるためには、雪のように白いドレスと緑の靴が欲しい
わ。」願いは叶えられ彼女は教会へと出掛けたが、誰にも彼女だと知
られずに済んだ。

次の日曜日にも鶏飼い女は現れた。
「今日は教会へ行くかい?」トレンブリングはお願いした。
「とびきり上等な黒レースのドレスと赤い靴が欲しいわ。」

3度目の日曜日、「腰から下はバラの赤、腰から上は雪の白。
肩には緑のケープ、頭には赤・白・緑のの羽つき帽子。足の靴は爪先が
赤、中程は白、裏とかかとは緑」のいでたちで教会に現れたトレンブリ
ングは、エマニアの王子の手に片方の靴を残したまま家に帰った。

それから靴の持ち主探しが始まり、王子に見つけられたトレンブリング
は彼のもとに嫁ぎ、2人の間に男の子が生まれる。
ところが、その時介護に来ていた姉のフェアは、幸せそうな妹を妬んで
トレンブリングを海に突き落としてしまう。

鯨に飲み込まれたトレンブリングは、助けにかけつけた王子と牛飼いの
少年の手によって助け出される。
その後の2人は、老齢で亡くなるまで幸せに暮らした。
※「シンデレラ(La Cenerentora)」にそっくりです。
(ケルト民話「フェア・ブラウン・トレンブリング」J・ジェイコブズ編)  
アメリカ 北米のシャチ伝承
トリンギット族の物語
― アラスカおよび北西の海岸からの物語- 
Killer Whale(シャチ)がこの世に現れる前に、Natsilane(ナチレーン)
という人がいました。
彼は、Duke島のチーフの娘を妻とし、彼女の一族とともに暮らして行く
ことにしました。

ナチレーンの義理の兄弟の中で最も年若い弟は、ナチレーンを賞讃しま
したが、他の義兄達は彼の意図を誤解し、ねたむようになりました。
そして、彼に対して陰謀を 計画し始めました。
彼らは、アザラシ狩り競争でNatsilaneと勝負をしよう、ということに
なりました。

準備も終わり、競争の日が来ました。Natsilaneと彼の4人義兄弟とは、
広い海峡でWest Devil Rock(西の悪魔岩)へ、それぞれカヌーを漕い
で行きました。
カヌーが岩に近づいた時、彼はそれへ飛び下り、最も近いアザラシに
槍を突っ込みました。

不運にも、槍の穂先が折れ、アザラシは海へ逃げ込みました。
更に悪いことには、彼の義兄達が、義弟の猛烈な反対にも関わらず、カ
ヌーを漕いで逃げ去って行きました。
食物も武器もなく、ナチレーンは孤島に置き去りにされました。

ナチレーンは翌朝彼の名前を呼ぶ声に目を覚ましました。
人の姿をしたアザラシが、波の下の家に来るように合図しているのを見
ました。(ついて行くと海底の)大邸宅では、アザラシのチーフが、負
傷した息子を助けることができるかどうかNatsilaneに尋ねました。

Natsilaneは、若いアザラシの身体にNatsilaneの槍の穂先が埋まってい
るのを見て、取ってやりました、そしてアザラシの息子の怪我は治りま
した。
アザラシのチーフは非常に感謝し、Natsilaneにより大きな力(技術)
を与えて、彼が村へ安全に帰ることが出来るように計らいました。

(故郷に帰って)Natsilaneは彼の妻に会い、それまでの話を伝えまし
た。彼女には、彼が還ったことは秘密にするように約束させました。
彼は彫刻刀を持って、彼を裏切った義兄への報復のために森に入りま
した。

アザラシのチーフの約束を思い出して、Natsilaneは支援をチーフに求
めて、大きな黒魚(black fish)(以前にはなかったようなエゾマツ{製}
のシャチ)を彫刻し始めました。
三匹試作してから、Natsilaneは、黄色の杉{製}のwhaleを作りまし
た。完成して、それを海に放つと、命を得て泳いで行きました。

彼は黒魚(上の黄色の杉のクジラのこと、即ちシャチ)に、彼の義兄
弟を見つけ、彼らの舟を破壊するように命じました、ただ、最年少の
弟は助けるように命じました。
黒魚は出発し、その午後遅く義兄弟を見つけました。

黒魚は、舟をまっ二つに壊し3人の義兄を溺れさせました。
最年少の弟は、無事に帰郷して、大きな黒魚の話、および彼の兄達の
裏切りの話を人々に伝えました。
村民はNatsilaneが大きな黒い魚を刻んで作りそれに生命を与えたこ
とを不思議に思いました。

そののち、歯を備えた奇妙な黒魚が海岸近くで見られ、死んだばかり
のアザラシやハリバット(白身の魚)を村民のために時々置いて行き
ました。
Natsilaneは大きな黒魚に、二度と人間を襲わないように諭し、それ
ばかりか、人間を支援するように教えました。

黒魚が村民を助け続けるとともに、村民は、そのシャチが Natsilane
からの贈り物をしているのだ、と思うようになりました。
村民は、シャチを紋章とするようになりました。

Natsilaneの話はこの村の伝説になりました。
また、幾人かは、Natsilane が2匹の大きな黒魚の背中に乗って海を
渡るのを見たと主張しました。
(― アラスカおよび北西の海岸からの物語-)(北米のシャチ伝承より)
アメリカ オーロラ伝説 
マカインディアンの神話
鯨油⇒オーロラ
北極の光(オーロラ)は,はるか北方に住む小人たちが作るとされ
ている.
小人たちが,氷の上で鯨の油を蒸してとりだすため,燃やす火が
オーロラだという.

また星たちは,人間やすべての動物の精霊である.
特に流星と彗星は死んだ酋長の精霊だという.
(アメリカ大陸の星の民話)
(Stellar Legends of Anglo and Latin America )