ウナギ

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 印旛沼はウナギの養殖で有名だ。今年はシラスウナギの高騰で「土用丑の日」を迎えるにあたり鰻の値も上がっている。ウナギは降河回遊魚で海 で生まれ淡 水に上るものが多い。一部は汽水域に留まるようだ。私たちが食用としているのはAnguilla japonica、ニホンウナギという種類 だ。一時は中国で養殖されたAnguilla anguilla、 ヨーロッパウナギもよく 売られていた。今はこのヨーロッパウナギも資源の枯渇に悩んでいるようだ。そのためか、最近ではアメリカウナギ(Anguilla rostrata)も食用に供されているよ うだ。それだけでなく、オーストラリアやアフリカのものまで輸入されてきているようだ。つい最近、アメリカがウナギの輸出を規制するかもしれないというニュースが出ていた。ヨーロッパウナギはニホンウナギに比べ大型になり、体型が三角形に近いようだが蒲焼き状態ではわかりにくい。ヨーロッパウナギは一時、 スーパーなどで安価で売られていたために味が落ちるように思われがちだが、そうでもないようで、特に脂を好む現代人にとっては「おいしい」と 感じることもあるであろう。アメリカウナギは食べたことがないが(知らないうちに食べているかもしれないが)、ぱさぱさ感があるそうである。 ウナギの養殖はもともとは東京の深川が発祥だそうで、意外な感じがする。
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 養殖の話題が続くが、これは仕方ない。現在、ウナギは「養殖ありき」だからだ。しかも完全養殖ではなく、稚魚(シラスウナギ)をとらえ、育 成するという方法でしか大量に養殖できない。完全養殖は成功しているが、まだ、研究的な段階だ。天然ウナギはもちろんいるが、食用としては非 常に高価で流通も安定していない。天然ウナギが上で養殖は下と思われがちだがそうでもないようだ。天然が高く、養殖は安いとは言えるが、味は そうとも限らないようである。特に天然は生活環境や季節、栄養状態によってかなりばらつきがあるようで、「やはり、天然は違う」という意見の 反面、「天然は泥臭い」という場合もあるそうだ。また、料理人の人でも、同じ養殖でも「浜名湖のがよい」、「印旛沼もよい」などといろいろな 意見を聞くことがある。鹿児島愛知でも養殖は盛んだ。
 さて、印旛沼および周辺ではその天然ウナギがいる。実際にとらえたものを飼育していたことがある。ウナギの飼育はプロにはかなわない。若魚 (メソッコと印旛沼あたりでは言われていた状態であろうか)は成長させるのが非常に困難だ。ウナギはマリアナ諸島沖の深海で孵化するとレプト ケファルスという扁平な幼生期を経て、日本にくる頃にはシラスウナギと言われる体型となる。その後、小さいながら一応ウナギの体型となる。ド ジョウくらいの体長でも、ウナギははるかにスリムだ。たとえれば、ドジョウが大根なら、ウナギは牛蒡、もやしという感じだ。大人となる確率は 素人が飼っているとかなり低い。大人のウナギも個体によっては餌をほとんど食べないものがいたりとやっかいだ。飼育されている方の中には、餌 は養殖業者さんから分けてもらっているというようなことも何かで読んだ気がする。天然のウナギはウナギがま、一本立(おきばり)、ウナギ筒な どの漁具、漁法で捕まえる。餌はミミズ、マビル、タナゴのなかま、モツゴなどの小型の魚、ザリガニ、カエルの小さいものなどであったようだ。 ウナギは肉食系雑食ということだ。印旛沼でウナギを捕らえても天然ウナギとは限らない場合もあるかもしれない、養殖されているものが逃げた場 合もあるであろう。以前、とある淡水魚を飼育している水族館の職員の方からこんな話を聞いた。「展示用に飼育していたオオウナギ、Anguilla marmorataと思っていた)が死んだので、詳しく調べたらAnguilla anguilla、ヨーロッパウナギだっ た。」とのことだ。中国では一時、ヨーロッパウナギとニホンウナギを養殖し、日本に出荷してした。出荷するときは製品として出荷していたであ ろう。ということはヨーロッパウナギは日本に入らないはずだ。しかし、本当に一時期、日本国内でもヨーロッパウナギのシラスウナギを用いて養 殖していたことがあるそうである。ウナギは20年以上生きる場合もあり、そのヨーロッパウナギが養殖場から逃げ、自然の河川で成長して捉えら れ、オオウナギとして展示されたようだ。
 ウナギは日本では、純粋に自然にいる魚としても身近な魚だった。そして、食材としても身近な(価格的には違うかもしれないが)存在だ。しか し、河川にいる魚としてのウナギは身近ではなくなってきている。シラスウナギの減少と価格の高騰で食材としても縁遠いものとなるかもしれな い。「ウナギのいない日」がこないとよいのだが。



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