今年の夏は冷夏だった。7月、8月と気温が低く、雨が異常に多い年であった。夏といえば昆虫の季節。その中でも、群がって飛ぶトンボの姿は夏の象徴でであろう。しかし、今年の夏はこのような気象なので前半、トンボの姿はなかなか、見られなかった。北総も印旛沼、手賀沼の2つの大きな湖沼とその水系、多くの水田があるため、通常であれば、多くのトンボが見られる。今年は夏も後半になって、トンボがやっと、多く見られた。
トンボと言っても、いろいろなグループが存在する。ヤンマのなかま、イトトンボのなかま、そして、俗に言う赤とんぼや麦藁トンボを含むトンボ科といわれるなかまなど。今年は印西市を中心にトンボを見る機会が多かった。多くのトンボと出会うことができたが、ヤンマのなかまなど大型のトンボにはなかなか出会うことができなかった。やはり、出会える種は限定されるようだ。
シオカラトンボは私がよく行く、子の橋、神崎川などを含め、多くの場所でいつでも出会えるトンボ。トンボ科のトンボだ。オスは白粉をふき、体が青灰色に見える。メスは胸部の地が透き通るようなクリーム色(七宝のよう)に黒色の模様が入る。腹部を含め、しぶい黄色が目立つため、ムギワラトンボと言われる。オオシオカラトンボと言われる種は名前の通り、大型。メスの模様がシオカラトンボとは異なるので区別はしやすい。シオカラトンボよりは少なめだが、特定の場所ではかなり、見ることができる。
ウスバキトンボは渡りをすることで有名なトンボ科のトンボ。全体に繊細な体つきをしている。南方で繁殖し、このあたりでは繁殖していないとのこと。腹部の全部に細く、蜜に横縞がある。
マイコアカネもトンボ科のトンボ。オスは成熟すると鮮やかな赤い体色となる。胸部の模様は繊細。写真のものは未成熟のオスと思われる。
ノシメトンボもトンボ科のトンボ。羽の先端が黒くなっているので、区別しやすい。他にも羽の先端が黒くなる種はいるが、ノシメトンボはこれが明瞭。羽化すると水辺をはなれるため、林や草地、人家近くなどで、よく見られる親しみのあるトンボ。
シオヤトンボもトンボ科のトンボ。腹部が平べったい。メスは腹部が鮮やかな黄色に黒の模様、オスは青灰色をしている。メスの腹部は老熟すると写真のように灰色になる。
セスジイトトンボも多く見られるイトトンボ科のトンボ。似た種にオオセスジイトトンボがいる。両種は非常に似ているがセスジイトトンボが腹部の長さが3cm以下なのにくらべ、オオセスジイトトンボは3cm以上になる。模様は眼部、腹部の一部が微妙に異なる程度。セスジイトトンボの春型は大型のものが出現する。写真の左側のものはセスジイトトンボにしてはかなり大型で、体もがっしりしていて、オオセスジイトトンボのようにも思えるが、眼部の特徴、腹部の模様、発見時期から考えて、セスジイトトンボの春型と思われる。オオセスジイトトンボの分布は限られていて、東北の一部、信濃川や利根川の下流デルタ地帯とのことだ。いろいろな分布図を見てみると、北総にも分布はしているようだ。次はタンデム中のセスジイトトンボ。上のオレンジ色をしているのが♀。タンデムはハート型に見える。
ハグロトンボはカワトンボ科のトンボで、戸神川周辺では多く見られる。このトンボは繁殖期以外には水から離れた場所で暮らす。そのため、水田に近い林の中なのでふらふらと飛んでいる姿がよく見られる。オスの腹部はメスに比べ、背側が緑色になる。
この他にナツアカネ、アキアカネなどの赤トンボのなかまも多く見られる。珍しいところでは今夏はチョウトンボを2回、確認できた。