利根川の河川敷には多くのタヌ
キが棲息していることは前に触れた。糞を特定の場所にするため、タヌキのため糞と言われるが、そのような場所もわかっていた。大量の糞が
蓄積されていく。しかし、生きているタヌキの姿自体を見ることは滅多にない。一番見かけるのが交通事故に遭ったタヌキの無惨な姿だ。利根
川の河川敷ではそのような事故に遭った姿のタヌキは見ない。ほとんどが蘆原となっており、その中を未舗装の道路などが通っているだけだか
らだ。しかし、死んでいるタヌキは見かける。ただし、交通事故ではなく、病死ないしは衰弱死したものだ。生きているタヌキは夜行性のため
かほとんど見かけることがない。
ある朝、車をいつものようにゆっくり走らせていると前方の道の脇にのそっと動く生き物を発見した。タヌキだ。距離は20mくらいだろう
か。とりあえず写真を撮った。逃げられるかな?と思いつつ、少しずつ車を近づけ、撮影、また、近づけを繰り返した。そのようなことを繰り
返しているうちにタヌキは車のすぐ脇に来ている。遠くから見ても動きが鈍いと思ったが、やはり、かなり衰弱していて、逃げる気力もな
いようだ。車から降りて、近づき撮影しても逃げない。タヌキが疥癬症を煩うことは有名だ。都市に近いところに棲息するタヌキはペットの動
物を介して感染して、大きな影響を受けている。このタヌキも体側が大きく脱毛しており、ただれていた。ただ、それが弱っている原因か否
かはわからない。
タヌキは学名Nyctereutes
procyonoidesといい、日本ではエゾタヌキ(N.p.albus)とホンドタヌキ (N.p.viverrinus)の2亜種がいる。利根川のタヌキはホンドタヌキだ。英名は
Raccoon dogといい、その名の通
りネコ(食肉)目イヌ科タヌキ属に属する動物だ。分布は日本だけでなく、ユーラシア大陸にまで広がる。河川敷や水辺に適応して生活してお
り、水生動物や小型動物を補食する。ずんぐりした体つきで足が短く、親しみのある可愛らしい体型だ。「狸」と書くように、昔から身近な動
物と言える。ただ、山林の減少で都市進出が進んでいるそうで、そのため疥癬症にかかるものが増加している。疥癬症の感染は可哀想に感じる
し、哀れさだ。タヌキの毛は色は地味だが、筆作りにも使われるように本来は艶やかで美しい。一部、地域では「むじな」と呼ばれることがあ
る。アナグマ、ハクビシンも「むじな」、「たぬき」と呼ばれる。「たぬき」と「むじな」の呼称は複雑に呼び方と実像が入り乱れていたよう
だ。同じイヌ科のキツネとではなく、イタチ科やジャコウネコ科の動物たちと呼び名が入り乱れている。
写真のタヌキは本当に弱っていて、先が長くないかもしれない。脱毛して、ただれた体側には目をそらし、顔のアップだけ掲載しておくこと
とす る。