スイバ、別名スカンポ

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 スイバはタデ科ギシギシ属の植物だ。春から夏にかけて開けた日当たりのよい場所で多く見られる。同じ属のギシギシに似ているがずっとスマートで繊細な感じがする。葉は長楕円形状披針形、花は総状花序で雌雄異株の植物だ。雌株の花穂は成熟すると内花被片は翼状に張り出す(写真下)。北海道、本州、四国、九州とほぼ日本中で見られる。北総地域でも農道、造成地、道端など日当たりのよい場所で普通に見られる。この種より小型のヒメスイバ(写真右)も多く見られる。ヒメスイバの葉はほこ型で、葉の付け根が動物の耳のように見える。

 スイバは別名をスカンポという。また、漢字で酢葉と書き、シュウ酸を含み、茎などを食むとすっぱい。やはり、この酸味のせいで「スシ」という古名もある。若葉は食用となり、利尿、収斂作用があるため、薬用にも用いられる。そのため、ハーブの書籍にも出ていることがある。昔、白土三平氏がかいた漫画で石器時代の生活を描いたものがあった。その中で、獲物(サイのなかまか何かだと思った)を捕り、その肉を思う存分食べた後に「スカンポ」と叫び、人々が草をむさぼり食うシーンがあったことを覚えている。そころは、こどもだったので「スカンポ」という植物がどのような植物かも調べる気もなかったが、なぜか不思議なことに「スカンポ」というその植物名だけは以後も覚えていた。スカンポの正体を知るのはずっとあとのことだ。白土氏は小学館から「フィールドノート土の味」「フィールドノート風の味」という自然の中の食材をテーマにした書籍を出していた。今では絶版のこの本の中では自然の中で暮らす人々と、その食が丹念にまとめあげられていた。この本は記述された内容とともに氏がOLYMPUSやMINOLTAで記録した写真がすばらしい。このように、自然や食に造詣の深い氏らしいシーンだと思う。昔は子供たちが野遊びのときに、その茎をしゃぶったとのことだ。私自身も昔、山歩きやフィールドワークのとき、この植物を食んだことがあったことを覚えている。昔は身近な植物だったのであろうが、今では野草をしゃぶるようなことを子供たちもしないであろうし、あまり、目立つ植物でもないので、やや、人との距離感ができてしまった植物かもしれない。

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