チクッ、ノアザミ

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 野外観察などでは、夏でも長袖、長ズボンというのが基本だ。自然の中には人体を傷付けるものがけっこうある。刺状のものがささる植物、肌を切る鋭い葉を持つ植物もある。また、昆虫に刺されることもある。転んで、擦傷になることもあるであろう。
 長ズボンをはいていても、薄手だったりすると、野原や細いけもの道のようなところを歩いて、チクッと鋭い痛みを感じることがある。その痛みの原因としてかなりの頻度があるのがアザミのなかまだ。アザミの葉には刺があり、それが痛みの原因だ。そのため、刺草とも呼ばれた。アザミのなかまは、その痛みがまず頭にあるので、あまり、よい印象は持っていないのだが、花を見ると大柄なものが多く、かなり美しい。独特な形の頭花をもつキク科の植物だ。頭花には舌状花はなく、管状花だでがある。北総で多く見られるのはノアザミ、ノハラアザミなどが多い。この両種は一見、よく似ている。キツネアザミ(右写真)もあるが、こちらは全体がひょろひょろという感じで、ノアザミ、ノハラアザミがアザミ属なのに対してキツネアザミ属で分類上も異なる。
 左写真のものはノアザミ。ノハラアザミとの区別には総ほう片と花期が役に立つだろう。ノアザミの総ほう片は反り返ることがなく直立している。また、粘液によってべたつく。一方、ノハラアザミは総ほう片が反り返り、べたつくこともない。花期はノアザミが5月から8月、ノハラアザミは8月から10月とシフトしている。ノアザミはアザミのなかまとしては、春から花が咲く少数派だ。多くはノハラアザミと同様に夏季から花が咲く。分布はノアザミが本州、四国、九州なのに対し、ノハラアザミは本州中部以北となっている。北総ではノハラアザミはよく見られる。どちらも頭花は4-5cmで鮮やかな紅紫色で、先入観を持たなければ美しい花だ。ただ、痛みが頭をかすめると、毒々しく見えるかもしれない。
 アザミは、痛みをともなういやな植物というイメージが強いが、薬用としても利用されていた。強壮、解毒、利尿の効果があるそうである。アザミは野外では夏を中心によく見られ、身近な、ちょっと気をつけなければならない植物だ。

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