Japanese Beauty Berry

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 野外を歩いていて樹木の同定が難しく感じることは前にも述べたが、そのような樹木の中でも印象深く、他と区別しやすいものもいくつかある。その代表のひとつがムラサキシキブだ。一番、目立つのは実がなる10月から11月にかけてだ。小さな紫色の実をたわわにつける。その紫色が本当に美しい。そのために英語で「Japanese Beauty Berry」という名前がついている。ミムラサキという別名もある。ムラサキシキブという名前も紫式部からとられたものだ。古くからこの樹木の美しさは様々な人々に讃えられてきたようだ。

 クマツヅラ科の植物で、葉は対生につき、鋸歯がある。花期は6,7,8月ころ、小さな花が咲き、色はやはり薄紫色だ。いくつかが集まって、房ないしは玉のように見える。雑木林で普通に見られる樹木だ。庭木にも使われる。ただ、まぎらわしいのが、同じなかまにコムラサキという樹木があることだ。こちらは、葉の鋸歯が先のほうだけつく。葉もムラサキシキブより細身だ。実も集まり方(房、玉のように見える)が小ぶり(密に集まる)で、どちらかというと串に刺した団子のように見える。それが、ムラサキシキブより美しく見られるためか、コムラサキが、庭木などでは「ムラサキシキブ」として流通していることもあるそうである。ムラサキシキブのほうが、やや野性的な観があり、コムラサキのほうが体裁が整っていると言えるかもしれない。どちらも、それなりのよさを持った美しい樹木だ。実が特徴のある木なので、秋の実のなるころに、どこにあるか覚えておくとよいだろう。この木も落葉樹だし、花や実がないとき、さらには葉もないときには、樹木に精通していないと、見分けやすいという訳にはいかない。私自身、樹木は本当に苦手なので、この木だけでなく、花が目立つとき、実が目立つときにしっかりと場所を覚えておくことが大切だと思う。そうすれば、少しずつ樹形や樹皮の特徴がわかるようになると(よいと)思っている。

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