冬の風物詩、ミノムシ

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 子の橋で樹木の枝に目をやると、いくつかのミノムシがついていた。なにか、久しぶりにまじまじと見た気がした。小さいころはそこらじゅうにあって(いるというより、あるという感覚が強かった)、いたずらした覚えがある。葉が落ちた冬の落葉樹の枝にぶらさがっているミノムシは「冬なんだ」という実感を与えてくれ、頬がぴりぴりとする気がする。ミノムシはミノガといわれるガのなかまで、日本には数十種類がいる。多くの種類がいるミノムシだが目だち、わりあい目にとまりやすいのは数種類で、オオミノガ、ニトベミノガ、シバミノガ、チャミノガなどのようだ。
 幼いころはガの幼虫が入っているということはなんとなくわかっていたが、ミノガの変わった生活史は知らなかった。ミノガは通常のガになるのは雄だけで、雌はならない。メスは一生を蛆虫形で過ごす。ミノムシは蓑の中で初夏に孵化すると風を利用し移動する。適当な枝などに到達すると葉を食べながら蓑をつくっていく。数回の脱皮を繰り返し、秋になると幼虫(種類により老齢幼虫や中齢幼虫で)のままえさを食べなくなり越冬に入る。この時期のミノムシの蓑がわれわれの目にふれやすい。春になるとさなぎとなる。ここで、雄と雌の生活史が大きくことなる。雄は成虫になると普通のガ?となる。メスは成虫となっても羽もはえずに蛆虫のような形をしたままで、蓑の中にとどまったままだ。雌はフェロモン(生物が利用する化学物質)を利用して雄を引き寄せ、交尾する。「雄は普通のガに」といったが実は口もなく食餌をしない。交尾すると用無しだ。雌も交尾後、数千の卵を産み、すぐに死んでしまう。卵は孵化して、また、夏を迎える。
 ミノムシというと自分が幼いころの記憶が強いことは前述の通りであるが、それは最近、自分が目を向けることがなかっただけではないようだ。このミノガに寄生するハエに数種類のミノガヤドリバエというハエがいるそうで、これが海外から入ってきて、ミノガを食べてしまい、数が減ったようだ。食べるといっても、巧みな方法で食べる。このヤドリバエのなかまは葉に卵を産み、その葉を食べたミノガの幼虫の中で、内側からミノガを食べるわけだ。最近は少しずつ回復の兆しもあるという話もある。
 蓑ばかり目立つミノムシだが、こんなに変わったガである。
小枝のオオミノガの蓑シバミノガ