クロヤマアリ、クロオオアリ

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 アリは身近な昆虫だ。ただ、小さいために「アリ」とひと括りにされてしまうことも多いようだ。しかし、日本だけでも300種近い種類のアリが生息している。反面、アリが一部のハチと同様に社会性を持つことは有名だ。女王を中心に、繁殖のときだけ登場するオス、ワーカーと呼ばれるメス、一部には兵アリなどのカーストも出現するものがある。また、そのコロニーの情報伝達手段としてフェロモンが役立っていることもよく知られている。

 そのようなアリだが、その中で割合、大きさもあり、数も多く、多くの人が目にしているアリが、クロオオアリとクロヤマアリだろう。ちょっとでも夏に野外で活動すれば、このどちらか、または両方を目にするはずだ。

 クロヤマアリとクロオオアリはどちらもアリ科ヤマアリ亜科に属する。次の段階、属でクロヤマアリがヤマアリ属に、クロオオアリがオオアリ属オオアリ亜属に分類される。どちらも黒を基調とした体色のアリだ。この、2種類はどうにか肉眼で、ぱっと見ても他と区別しやすいアリであろう。しかし、アリを本当に同定するためには拡大し、その細部をじっくりと確認しないと種を確定することはできないようだ。そこで、見慣れた2種のアリだが、拡大して見てみよう。


 クロヤマアリFormica japonicaは体長4.5-6mm程度で黒色ないしは黒灰色で光沢が鈍いアリだ。複眼は発達していて、顔は側面から見るとわりあいと細長く見える。胸部前部(前胸背板)が盛り上がって見える。肢には頸節刺がある。腹柄はひとつでサザエの貝殻のふたのような形だ。腹部にはまばらに毛が生える。もっとも、身近なアリ、目にする機会が多いアリといえる。


 クロオオアリCamponotus japonicusは体長が12mmほどになり、このあたりで見られるアリとしてはもっとも大きなアリだ。クロヤマアリに比べ明らかに大きく、光沢がある。腹部にはやはり毛がある。クロヤマアリよりごつい感じがする。頭部後方は張り出し、かなり頑丈そう見える頭部だ。触角の付け根はやや隆起が目立つ。前胸背板、中胸背板、前伸腹節へとつながる胸部は上から見ると中央がくびれるように見えるが、側面から見るとこんもりとして滑らかだ。腹柄はやはり貝の蓋のように見える。

 これから、アリの季節がしばらく続く。

 クロオオアリの女王アリと卵。採集して飼育箱に入れたら、無事に産卵してくれた。いつも気にして守っている。6月はアリの繁殖期。注意をしていると交尾をした女王アリたちが歩き回ったり、もがきながら羽を落とす姿がいろいろなところで見られる。このクロオオアリのほかにクロヤマアリの女王も飼育中だ。

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