キンラン、林の中の黄色い花玉
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春4から5,6月にかけて林の中で華麗な姿を見せてくれるのがキンランだ。ラン科の多年生草で、高さは40から50cm。直立し、厚地のみどりの葉を纏い、頭頂に黄色い花玉?(勝手につくった造語です。花がなかなか開かないので)をつけた植物である。この花が浮き立って見えるのは前述のように薄明るい場所に多いので、背景と植物のコントラストが際立つからかもしれない。
キンランは里山の代表的な植物であった。しかし、いろいろな保護対策がとられているにも関わらず、今はその数を減らしつつある。キンランは前述のように里山の林で見かけることが多い。しかし、キンランの周囲が林だからといって、うっそうとしているというわけではない。キンランは土が露出したような場所を好む。つまり、下ばえが生えているような場所は好まないということである。里山の林は人の手が入ることによって成り立つ林である。かつては薪炭林として手厚く守られていた。しかし、利用価値がなくなり、人の手が入らないと里山は荒れる。そのように荒れ、下草が生えると、キンランの生育に適さないということになってしまう。近年、佐倉市の里山も荒れている場合が多い。下ばえが繁茂し、歩くことも困難な林で、行く手に幾重にもクモの巣がはりめぐらされている林。里山と同じような理由により、放置された竹林の竹が勢力をのばし、里山の雑木林を駆逐しているなど。さらに、最近は山野草がブームとなっている。キンランもその美しい姿のためにブームの波を受け、濫獲されることとなってしまった。これは佐倉市や千葉県だけでなく全国的な状況のようで、キンランも「環境庁版植物レッドリスト」(1997)では「絶滅危惧II」に指定されているとのことである。里山を代表し、かつては親しみのあった植物であるだけに現在の状況は残念である。しかし、私が実際にキンランを見た場所は意外な場所である場合が多い。かなり荒れた里山の林、下ばえもしっかりと生えている場所。これは、がんばって生き延びている残党?かもしれない。さらには、休日には、かなりの人が集まるある公園の中の林で見たこともある。キンランもがんばって生きている。あと数ヶ月するとキンランの花の季節がやってくる。今年は見ることができるであろうか。