カワウ

戻る
 カワウも身近な大きめの鳥だ。体長は80cmほどある。全身が黒く、顔の一部が黄色や白色だ。嘴の先が独特な鉤状をした形になっている。ウのなかま(ウ科)は日本では、ウミウ、カワウ、チシマウガラス、ヒメウの4種が繁殖するとのことだ。他のウの中で一番、カワウに似ているのはウミウ。背の体色がやや光沢のある緑になること、顔の黄色い部分の形のちがい、生息場所のちがいなどで判別することができる。鵜飼に使われるのはウミウだ。

 カワウが身近な鳥である理由は、池、沼、河川、公園など多くの場所で見ることができるためだ。上野、不忍池のウの島は有名だ。いつでも、間近にカワウを見ることができる。ただ、一時は減少傾向にあり、繁殖地も不忍池(東京都)、鵜の山(愛知県)の2箇所だけという危機的状況もあったそうだ。カワウは樹上にねぐら、営巣地を大々的につくることでも有名だ。樹上に巣をつくるのはウの中ではカワウだけだ。この、大々的なねぐらが問題になることがある。糞害だ。カワウは、ねぐらを中心に広範囲で魚を求め、移動する。潜水も得意で10m近く潜るそうである。時間も数十秒間は潜っている。この魚食のカワウの糞は白く、油分を多量に含んでいる。服や体につくとこの油分のせいでなかなかとれないほどだそうである。この糞は樹木も枯らす。これが問題となっている。このカワウ問題を解決する方法で面白い話が読んだことがある。カワウを駆除するために、卵を除去するだけでは、すぐに、また産卵してしまうそうだ。そこで、偽物の卵を置いておくことが考えられたとのこと。これで、カワウは孵らない卵を抱き続けることになるわけだ。一方、カワウの糞は長い目でみれば、自然環境にとってはマイナスではないとの考えもあるようだ。糞は水中に落ち、重要な生物の栄養となるとの考えもある。かつては、カワウの糞は農業用の肥料に使われていたこともあるそうである。いずれにしろ、糞で覆われた樹木は真っ白で異様な光景を呈する。
 また、海洋の汚染物質に関わる研究・調査でもカワウの名は出てくる。生態系において高次の捕食者で、かつ、魚食であるカワウには汚染物質が蓄積しやすいそうだ。奇形が出ている例も知られている。このような、かわいそうな状況もある。
 このあたりでは、印西市の戸神調整池に大規模な営巣地がある(写真)。樹木は遠目には雪をかぶったように白い。春に営巣地近くに行ったときには多くの卵殻が落ちていた。ここを中心にどのあたりまでカワウたちは行っているのだろうか。手賀沼、印旛沼あたりまでは行っているような気はするが、南方に向かう姿を見ることもある。カワウは継続的な移動調査が行なわれており、最大、生涯のうちで、200km以上の移動も確認されている。採餌のための移動でも50kmくらいは移動するとのことだ。戸神の調整池から手賀沼、印旛沼は10km程度、谷津まででも20kmはない。そのため、谷津あたりまでは採餌に行っている可能性は十分にあるであろう。もしかしたら、南方に向かうカワウは谷津あたりまで出かけているかもしれない。カワウも賢いところがあり、戸神あたりでは近くによることはできない。ところが、谷津や不忍池ではすぐ近くで観察することができる。場所によって、人間との距離を変えているようだ。
谷津干潟で撮影したもの

先頭にもどる