身近にある木、イヌシデ
戻る
 このあたりの雑木林には多くの種類の樹木がある。木は毎日のように目にしているのだが、意外と「なんの木」とあらためて考えると名前を知らないことが多い。それでも代表的な種類については知っておくことが必要であろう。どんな木があるかはその林の置かれている環境や歴史にかかわる。ただ、木はいつでも葉がついているわけではないものもあるし、いつも花が咲いているいるわけではない。写真図鑑などではわかりやすい写真があるものがすくない。紙面の制限があるので、掲載写真が限られるためであろう。木の全体を写せばディテールがわからないし、花や葉、枝だけでは区別しにくい。樹皮、葉、花、樹形などがすべて網羅されているとよい思うのだが。そのような写真図鑑もあるが高価だ。高価な図鑑で図版だけ(写真ではなく)のものは、それだけでは区別しにくい。説明文を読めばよいが、さっと区別するときには、少し躊躇してしまう。「丹念に調べ、知りなさい」ということであろう。そんな、状態なので名前だけ知っている樹木や何回も見ているのに、名前を知らない樹木は結構ある(不勉強なだけ?)。

 そこで、避けて通っていた樹木だが、少しずつこの場でもふれていくこととしよう。まず、はじめはイヌシデ。イヌシデはこのあたりの雑木林には必ずといってよいほどあるのに、クヌギ、コナラなどにくらべると知名度は低い。イヌシデはカバノキのなかま。本州では東北の一部除く地域、四国、九州に分布する。二次林に生育するとのことなので、代表的な里山の樹木ということになる。落葉樹だ。花季は4,5月で尾のように垂れ下がる形状をしている。葉には細かい毛がある。幹はかなり灰色っぽく、樹皮に特徴的な縦方向の模様があり、これがネットを貼り付けたような模様になるので、これを手がかりに同定できることが多い。樹形はコナラなどに比べ枝の横方向への広がりが弱く、上に伸びる傾向が強いためスマートに見える。

 イヌシデもそうだが、「イヌ」とつく植物名は多い。イヌタデ、イヌムギなどは聞いたことがあるかもしれない。この「イヌ」とは「犬」ではなく「何々でないという意味のいぬ」だそうである。つまり、他にタデやムギがり、似ているがそうではないという意味の名前だ。これから、考えるとイヌシデもシデでないということになる。シデのなかまは他にもアカシデやクマシデなどがある。それらではないという意味なのであろうか。一説には、他のシデのなかまに比べて見劣りがするからということだそうだ。この辺は本当はどうなのであろうか。

 イヌシデはちょっと気にするればこのあたりなら必ず目にする樹木だ。クヌギ、コナラ、クリをわかるようになったら、次にわかるようにする落葉高木がイヌシデかもしれない。