これから夏、秋にかけて多くのイネ科の植物が目立つ季節となる。イネ科の植物は単子葉で葉にあまり特徴がなく、見慣れないと判別できない。さらに、花も目立つことはなく、小花も呼称の通り小さいので、注意して、よく見ないと種類を判別しにくい。図鑑などでも「○○と似ており、区別は難しい」のような記述も目にすることが多い。しかも、日本だけでも700〜800くらいの種類がある。日本にある植物の10%ほどになるそうだ。このように種類が多く、判別しにくいため、どちらかというと私自身、近づくのを避けてきた植物のなかまだ。しかし、目にすることが多いイネ科の植物、代表的なもの、身近でみかけるものだけでも見ていくこととしたい。
まず、非常によく目にするのがイヌムギおよびノゲイヌムギだ。どちらも、アメリカ大陸原産で扁平な3cm強の小穂がつく。「牧野日本植物圖鑑」にはイヌムギについて「蓋シ明治初年ニ渡来シ今ハ廣ク路傍原野ニ野生スル」という記載がある。かなり、古い時代から身近な植物であったことがわかる。ひとつの穂には6-10ほどの小花がつく。外花穎の付け根が白いため独特の模様となる。麦に似ているが麦でないので「イヌ(○○でないの意)」がつく。この両者は本当によく似ていて、区別は芒(外花穎という外側のからのような部分の先につくひげのようなもの)の長さで判断するしかない。ノゲイヌムギはこの芒が4-5mmほどで、イヌムギは1mm以下だ。これらのいずれであるかは別として、荒地や野原などでは必ずと言ってよいほど目にしている植物だ。
左:イヌムギ 右:ノゲイヌムギと思われる。 芒の長さが異なり、ノゲイヌムギのほうが目立つ。
イヌムギを縦に引き伸ばしたようなのが、ネズミムギのなかま。ネズミムギは明治時代に牧草として移入された植物でイタリアン・ライグラスと呼ばれ、各地で野生化した。小穂が楕円形に近いネズミムギと、より細長いホソネズミムギがある。ユーラシア原産の帰化植物で、両種は雑種をつくりやすい。ホソムギもこの両種に似ているので注意が必要。
ホソネズミムギ 小穂は左右交互に間隔をおいて出る。
次に空き地やグランドなどには必ずあるスズメノカタビラ。これも小穂が扁平な植物だ。高さ30cmほどまでの小型の植物だ。花序は横に出る。小穂には3-4個の小花がつく。この植物に似たものとしては、ニワホコリやナガハグサ(ケンタッキーブルーグラス)などがある。どちらも花序を横に出す。スズメノカタラビの花穂の下部、少し離れた位置に一葉が目立つ。
左:スズメノカタビラ 右:ナガハグサ ナガハグサは東京都足立区鹿浜で撮影
ナギナタガヤは最近、果樹栽培の畑の雑草繁茂防止、土壌改良などに使われている植物。西アジア原産で野生化している。芒が長く、スマートな小花が目立つ植物だ。上部の葉は非常に長くスマートな形をしている。別名は「ネズミノシッポ」、英名「Rat’s
tail」。この植物は全体的に細く、スマートで集まって風になびいていると、さわやかな印象を受ける。
左:風にゆられるナギナタガヤ 右:花序、先の部分は小穂が片側につく傾向にあるようだ。
イチゴツナギは別名をザラツキイチゴツナギという。確かに花穂の直下の茎をこすると細かい棘のためにざらつき感がある。やや紫がかった小穂をつける。これも日当たりのよい場所ではよく見られる。
イチゴツナギ 小穂の先はやや紫色。
カモジグサもよく見かけるもので、穂が垂れる。そのため、ひとつひとつの小穂が目立って見える。割合と大型のなかまで長い芒がある。夏に穂が出て、緑色が鮮やかなものにアオカモジグサがある。
カモジグサ