ヒヨドリはスズメと同じくらい身近な鳥だが、スズメほど名前を知られていない鳥だ。「ヒーヒー」あるいは「ピーピー」と、けたたましく鳴く声を耳にしたことがない人はいないと思うし、耳羽が赤褐色で、全身がグレー、頭部の羽毛がやや立ち気味なこの鳥の姿を、見たことがない人も少ないと思う。大きさも、ムクドリなどより大きめで目立つ。だが、この鳥の名を答えられる人は意外と少ない。鳥に興味がない人の場合、スズメ、ハト、カラスは知っていても、ヒヨドリは意外と認知していない。「あいつ」とか「あの鳥」ですまされてしまうことが多い。最近は都市でも1年中、見られるが、かつては冬にやってくることが多かったためかもしれない。
ヒヨドリはスズメ目ヒヨドリ科の鳥だ。雑食に近く、昆虫、果実、葉の類といろいろなものを食べるたくましさがある。夏は昆虫食の傾向が強く、冬は植物を食べる傾向にあるようだ。また、雛に餌を与えるときも、はじめは昆虫中心で、少しずつ植物へと移行するようだ。雛の成長を考えてもタンパク質をはじめに、多量に与えることは合理的なのかもしれない。冬などはピラカンサなどの実を食べる姿がよく見られる。いっぱいに実がなったクロガネモチに集団で来て、数日でひとつ残らず、平らげる姿をみたことがある。食べごろのカキの実をうまく見つけ、人間の先を越すのも得意だ。
前述のように、元来は渡りをする鳥であったようだ。都市では冬鳥であった。しかし、この鳥も見事に都市化を成し遂げ、季節を問わず、都市でもみることができる。ただし、同じ個体がそこにとどまっているのかはわからない。スズメと同様、身近かすぎてじっくり見ることが意外とない鳥だろう。あらためと見ると、堂々としていて、分かりやすい体色、体形の鳥だ。バードウォッチングなどで、はじめに覚えるのに適した鳥の代表であろう。しかし、慣れてくると「なんだ、ヒヨドリか」と軽く扱われやすい存在でもある。飛ぶときも波打って飛ぶ性質があり、すぐにわかる。あえて、鳥に興味がない人にもスズメ、カラスなどと同様に名前がそろそろ定着してもよい鳥だと思うのだが。