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ウスタビガは成虫より繭の方が有名かもしれない。まるで、サメの卵鞘のような緑色の繭はいろいろなところで紹介されている。しかし、成虫も繭に劣らず個性的である。ウスタビガはヤママユガ科のガ。ヤママユガ科のガは大型で翅の真ん中に丸い班がある種が多い。写真のものはメスの個体だ。からだ全体が毛で覆われていて、毛あしのながい絨毯のようである。翅は黄色で、黒いすじ模様が目立つ。前翅の長さは50mmほどになる。
同じく、大型のガの代表選手がオオミズアオ。これも、ヤママユガ科。翅の色が美しいガだ。形も最新鋭の飛行機のような均整のとれたスタイルをしている。写真のものは、だいぶ翅が傷んでいる状態だ。民家の灯火にもくるので、よく目にするガだと思う。
一方、ユウマダラエダシャクはシャクガ科のガだ。色は何色かが入り乱れており、光沢もあるが、鳥の糞をイメージさせる。
ヨトウガの成虫は地味で、あまり、美しいとは思えないヤガ科のガだ。このガは幼虫のほうが知られていると思う。園芸が趣味の人には害虫として憎たらしいガであろう。
ガのなかまは落ち着いてみるとなかなか、美しいと思える種も多いのだが、「気持ち悪い」と思う人の方が圧倒的に多いようだ。多分、鱗粉と夜に活動するなかまが多いためかもしれない。もちろん、昼行性のものもたくさんいるのだが。鱗粉はチョウにもあるが、チョウのイメージとはかなり違う。ある意味、ガは身近すぎるのかもしれない。確かに夜、室内に無遠慮にガは侵入し、キッチン、食卓の近くで鱗粉をふりまく。しかし、前に述べた通り、ガも落ち着いて見ると美しいもの、本当に鮮やかなものが多い。そこに、惹かれる人もいるようで、ガの収集家やマニアもいる。ガとチョウの区別は簡単そうで実は難しい?分類上はアゲハチョウ上科などいくつかの上科のものをチョウ、それ以外をガというそうだ。そのため、単に昼行性・夜行性、翅のたたみ方、触角の形状などで分けるわけではない。ガとチョウの区別のない国、言語もあるそうである。これを聞いて、われわれの場合は「ガ」「チョウ」という言葉による違いから受けるイメージによって、つまり、実物より語句から、感覚的な相違が生じているのかもしれないと思った。ときどき「わっ、ガだ。」という人に「チョウだよ。」と言うと「なんだ、チョウか。」ということがある。