最近、野外観察をしていると通常の植物図鑑に載っていない植物たちに出会うことが多くなってきた。つまり、最近、帰化したと思われる植物やあきらかに園芸種と思われる植物たちだ。野外観察といってもいろいろな場所、環境の中を歩くわけで、それらの植物に出会う場合も様々だ。人家が割合、近くにある場合もあれば、人家がまわりに見当たらない場所、水田や畑地の近く、河川の近くやあきらかに放置されたような荒地など。当然、園芸種であれば人家で栽培していたものが、人家外に勢力を広げたと考えられる場合もあるであろう。また、畑地が近くにあれば、肥料に混じり帰化植物が侵入したとも考えられる。また、農業用の品種であれば、畑地周辺に捨てられたということも考えられる。
とにかく、これらの野外観察用図鑑に通常は載っていない植物が、なんであるかを判断するのは結構大変だ。帰化植物の図鑑やインターネットの関連サイト、園芸用植物図鑑などを調べなければならない。園芸用植物に至っては多くの品種が刻々とつくりだされている現状がある上、園芸に疎い私にとっては判断が非常に難しい。
それでは、野外で見つけた園芸種と思われるものをいくつか上げてみる。
まず、はじめにオオアマナ(Ornithogalum umbellatum)。一見して、ユリ科でアマナのなかまだということがわかる植物。ただ、アマナよりぐっと大柄で、花の白色も鮮やかな感じがする。この植物はヨーロッパ、アフリカ、西アジアが原産で、明治の末ごろ帰化した。そのため、広く分布しているようで、林床などを好み繁茂するようだ。花は3月から初夏にかけて見られる。写真のものは建物の影に咲いていたもの。
次のものもオオアマナのすぐ近くに咲いていたもの。ユリのなかまだということはすぐにわかるが、あまりに鮮やかな色なので見慣れた野生種ではなく、園芸種だと思われた。多分、ユリ科の園芸種シラー・ヒスパニカ(Scilla hispanica)か、その近縁種だと思われる。シラーはやはりヨーロッパ、アフリカ、アジアが原産の植物だ。シラーはギリシャ語で「毒のある」という意味で、呼称の通り鱗茎に毒があるそうだ。野外で見られるツルボと近いなかまだ。シラー・ヒスパニカはもともとヨーロッパの針葉樹林に繁茂する植物とのことなので、前述のような場所で見つかったのかもしれない。花の色は白色、紫色、青色などいろいろあるようで4,5月ごろ咲く。
次はバーベナ(Verbena hybrids)のなかまのバーベナ・タピアン(クマツヅラ科バーベナ(クマツヅラ)属 )と思われるもの。タピアンはサントリーによって新たに開発された品種のようで、他のバーベナにくらべ葉が細いのが特徴の植物。クリーピング・タイプ(匍匐性)のものと立ち性のものがあるそうだ。戸神川近くの農道に2株、ぽつんと咲いていた。サントリーといえば園芸種の開発では今、破竹の勢いだ。大学時代、同じサークルだった者がサントリーに就職して、花をつくっていると聞いたときは「?」だったが・・・。右の写真は園芸店で売っていたバーベナ・タピアン。
最後はちょっと自信がないのだが、ツユクサ科のトラデスカンティア属のトラデスカンティア・ブロスフェルディアナ(Tradescantia
blossfeldiana)と思われる植物。観葉植物として認知されているものだそうだ。特徴は表面が緑色、裏面が紫の葉、紫色を帯びた茎、葉裏に銀白色の細毛があること。本来は直立性だが、光が弱い場所では匍匐するそうだ。写真のものは戸神川の近くに最近、開通した高架の自動車道下のトンネル内にあったもの。光は十分とはいえない場所だ。そのため、若干、匍匐状態にあるようなこともこの種の特徴に合致する。葉などの特徴も当てはまるような気がするが・・・という程度の自信しかない。
これも、園芸種として栽培されるハルシャギクというキクのなかまだ。ジャノメギクとも呼ばれる。北アメリカ原産の一年草だ。葉は対生で深裂し、ほぼ線形に見える。頭花は長い柄の先につく。舌状花は濃い目の黄色で頭花の中心よりはなんとも表現のしようがない色(濃い赤茶色、紫褐色?)をしている。全国で野生化しているようだ。写真のものは戸神川の岸から水面の上に張り出して生えていた。群生はしておらず、単独で生えていた。
最近は、このような園芸種?、図鑑に載っていない! というような植物にけっこう出会う機会が増えてきた。