アブラナ、身近で複雑な花

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 アブラナは菜の花ともいわれ、身近な植物だ。特に千葉県では県の花にもなっている身近な植物だ(ちなみに県の木はマキ、魚はタイ、鳥はホオジロだ)。房総は切花用の菜の花の一大産地だ。十字型の黄色い4弁の花をつける。ところが、このアブラナが複雑怪奇な植物だ。野生種はスカンジナビア半島からシベリアにかけて自生している。このアブラナから実に「ハクサイ」「カブ」「コマツナ」など多くの野菜が作出された歴史がある。これが、かなり昔(紀元前とも弥生時代とも言われる)に日本に入ってきた。しかし、このアブラナは今ではほとんどない。今、あるのはほとんどがセイヨウアブラナだ。このアブラナはヨーロッパで作出されたそうで、それがめぐりめぐって日本に移入された。明治時代のことだ。さらに、現在、切花用として栽培され、販売されているものはチリメンハクサイから品種改良されたものだそうである。複雑だ。アブラナの葉はセイヨウアブラナに比べ淡い色をしている。セイヨウアブラナはやや暗色で粉白だ。切花用のものはチリメンハクサイの性質を引き継ぎ、葉が縮緬状となり、早い時期から咲き、花が房状になる。
 上2枚の写真のものは萼片が開出していないこと、葉が茎を抱いていること、葉が暗緑色であることなどからセイヨウアブラナ系のようだ。




 写真中2枚は農地の隅にあったのでチンゲンサイ、コマツナなどのアブラナ科の野菜のように思える。ツケナと呼ばれ漬物用にはアブラナ科のなかまがたくさんある。白菜も、アブラナ科の野菜であることは前述の通りだが、この白菜は明治時代に移入された。当初は栽培が困難を極めたとのこと。理由はアブラナ科である白菜が他のアブラナ科の植物と容易に交雑してしまうためだ。そこで、隔離して栽培し種をとる方法がとられたとのこと。宮城県松島湾の朴島、桂島などの浦戸諸島が白菜では有名だ。

一方、下2枚の写真のものは花壇に植えられていたもので切花用のものようだ。葉が縮緬状なのがわかる。


 またまた、さらに菜の花という場合、前述のあらゆる変種(野菜の類も含め)をまとめて呼ぶことがある。そして、やはり、黄色い花が咲くカラシナのなかままで含めることがあるそうだ。セイヨウカラシナはアブラナとクロガラシの交雑種だそうだ。日本でも野生化しているとのこと。栽培種のカラシナはこのセイヨウカラシナを改良したものだそうだ。

 アブラナのなかまとカラシナのなかまの区別は茎と葉でできる。カラシナのなかまのほうが茎に暗色部があるとのことだ。葉は上部の葉を見ると区別できる。葉が茎を抱いているのがアブラナ、抱かないのがカラシナのなかまだ。

 アブラナの呼び名は種子から油がとれるためで、菜種油はそれによる呼称だ。しかし、菜種だけでなく植物全体が食用になる植物だ。

 このようなことを踏まえ、いろいろなところで様々な菜の花を観察すると様々な形態の菜の花があることに気づく。

 

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