5月、印旛沼、戸神川

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 5月も最早、終わろうとしている。このところ、印旛沼周辺や嘗ての中心的な活動場所だった印西の戸神、神崎川周辺によく行く。実はちゃんと 見てまわるのは久しぶりだ。特に印西のフィールドは長い間、工事が入っていて近づけない状況にあった。工事は終わったが大きく様変わりしてし まった。前によく行っていた場所に行くための道が封鎖されていたり、新しい大きな道ができていたりする。車で近づくのに戸惑った。それでも、 昔に歩き込んだところなので、古い道筋をたよりに嘗ての活動場所へいくことができた。
 最初に印旛沼周辺から
 akabanayuugesyou
 アカバナユウゲショウは最近、見ることが増えたような気がする。印旛沼の岸辺、戸神川の岸辺でも見られる。花は小振りだが美しい色をしてい る。花弁の脈が赤く目立つことと、めしべが4裂して目立つことで識別できる。アカバナ科マツヨイグサ属の帰化植物で南アメリカ原産で明治時代 から鑑賞のために栽培されて きたようだ。単にユウゲショウという呼び名もあり、ユウゲショウで記載されている図鑑もある。オシロイバナもユウゲショウと呼ばれることがあるので混同し やすい。花もそんなに大きくなく、花弁の色も落ち着いている。植物全体の姿も清楚な感じがする。観賞用というとけばけばしい印象を受けるがそ のような感じはしない。この辺りでは確実に野生化していて、気がつくと水田の畦、川の岸辺に叢生している。これからさらに勢力を伸ばすかもし れな い。
ooban
 なじみの深いツル目クイナ科のオオバンだ。アフリカ、ユーラシア大陸に広く分布し、同じオオバン属には頭部が赤く小型のバンもいる。オオバ ンは印旛沼、戸神、神崎でもよく見ることができる。見かける頻度はバンよりも多い。一見、地味に見えるが、虹彩の赤色、嘴から頭部にかけての 白色系の色、脚の淡緑色、足指の独特な色合い、そして黒色の体とじっくりみると味わい深い。印旛沼のものは特別で人が頻繁に活動して いる船着き場に平気でいる。警戒心なく、マガン模様のアヒルやガチョウとともに、人の営みや休みにはボートの出入りの激しい場所になじんでくれている。陸 上にもよく上がっている。そのおかげ で、足の特徴がよくわかる。水掻が植物の葉のような形で発達しているのがわかる。神崎川でもオオバンはよく見られるが、人が近づくことは困難 だ。
アサザ
 オオバンのいる船着き場の近くに、笠井貞夫氏の印旛沼の水生植物に関する長年の活動を記念した水生植物の育生場所がある。笠井氏は教育に従 事されながら、印旛沼を中 心に水生植物の研究を長年にわたり継続された方だ。千葉県立中央博物館にも氏の作成した水生植物の分布を表した図が展示されている。ここでは、アサザがき れいに花をつけていた。アサザを復活させようという運動がある反面、アサザは水面を覆うため、水中の溶存酸素量を減らしてしまうなどの意見も ある。いずれにしろ、人や人の営みにより、嘗てあった植物や生息していた動物が激減していることは事実だ。そして、それを考 慮し、また、人の手を加わると別の意味の問題が生じることがあるのも事実だ。難しい!
 
 次に戸神川周辺。工事が終わって、川の流路も変わってしまった。以前は立ち入り禁止だった湿地は、県立花の丘公園の一部として木道が整備さ れ歩けるようになった。花の丘公園は典型的な箱もの的なところがあったが、この木道付近はそれに比べるとよいかもしれない。戸神川の護岸工事 はコンクリートで固めるのではなく石を積み、金網で固定するタイプだ。これだと、生物の棲家も確保され、植物も繁茂しやすい(アオダイショウ が喜びそうだ)。しかし、周辺で見 られたヤマユリを見かけなくなったように、公園の工事、戸神川の流路の工事と周辺の環境には何らかの影響があったことは否めないようだ。ナガ オカモノアラガイがいた細やかな場所、ドジョウの多くいた小池も丸ごと無くなっている。流路の直線化と明確化?は湿地的な場所や小さな澱みを 奪うことになる。ササバモが揺らぎ、大きなコイが泳いでいる 光景に変わりはない。
egonokisuikazura
 エゴノキだ。この時期は樹木の白い花が目立つ。英名がJapanease SnowBellであることは前に紹介した。この花の形からの命 名のようだ。実はサポニンを含み、昔は漁獲や石鹸の代用として使われたそうだ。他にはガマズミ、ウツギなども白い花を咲かせていた。スイカズ ラも独特な形の花を咲かせてい た。
kabutomusikitateha
 昆虫たちも気温の上昇とともに活発になっている。カブトムシは鳥にでも襲われたのであろう、バラバラの状態だ。そこにアリが集まっていた。 そ れでも、このとき、カブトムシはまだ動いていた。戸神川岸のヨモギやタンポポにはキタテハが来ていた。
yabujirami
 オヤブジラミのようだ。ヤブジラミとともにセリ科ヤブジラミ属に属し、刺毛で他の生物、人の衣服につく。オヤブジラミは茎が紫色になってい る。
 このところ雨の日と天気の日が繰り返されているが、晴れると本当に初夏、夏に近いかもしれない程、気温が上がる。同じ場所でも季節の変化に ともない景観も、そこで会える生物たちも変わっていく。
 


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