桜(サクラ)、上野桜木

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 上野桜木の 桜並木の桜の開花だ。上野と言えば桜、花見で有名だが、ここの桜は上野公園と比べるとずっと静かな雰囲気で鑑賞できる。もともと、上野山内の 花見は江戸期には静かなものであったようだ。幕府の方針で、花見に際して、山内の飲食は禁じられていた。そのため宴会をともなう庶民の花見は 王子の飛鳥山が好まれていたようだ。今の上野公園の花見はにぎやかなものだが、個人的には好きではない。ここで、静かに歩きながら桜を見るほ うがずっと風情がある。

 ところで、上野の山と言えば桜だが、開山時の桜と今の桜は違うようだ。もちろん、サクラという樹木 自体、寿命が短いこともあるが、開山時と今ではサクラの種類自体が違うようだ。開山時に開祖、天海が数千本のサクラを吉野から取り寄せたこと は有名だが、吉野のサクラはヤマザクラだ。ヤマザクラはソメイヨシノと異なり、開花時に葉がついているサクラだ。現在、上野にあるサクラのほ とんどはソメイヨシノだ。ソメイヨシノは明治になってから、オオシマザクラとエドヒガンを交配してつくられた種だ。開山時にはソメイヨシノと いうサクラは存在していない。ソメイヨシノは120年くらいのものが最高齢と言われるので、ソメイヨシノ自体も世代交代しているであろう。ソ メイヨシノをはじめ、園芸種のサクラの多くは実生でなく接木で増やされる。つまり、遺伝的にはソメイヨシノはみな同じということになる。そのため、いっせいに、同じ場所のサクラは開花するそうだ。サクラはバラ 科の植物だ。もちろん、園芸に用いられるバラやイチゴのなかまと同じだ。花弁5枚が基本形。日本には約10種類くらいの自生種があり、園芸種 となると数百種類の品種がある。上野公園にもソメイヨシノをはじめ30種類以上のサクラがあり、1月ころから咲くものもあるようだ。花を楽し むサクラも花が終わればしっかりと実をつくる。ソメイヨシノも例外ではない。

 桜の種類は変わっても、天海の上野の山を桜で満たそうとする思いは今も残っている。江戸期の桜満開 の雰囲気は上野公園より、ここや、谷中霊園内の桜並木のほうが残っているような気がする。
(2004.4.3)