相変わらずの中国・中国の汚職
(2010年4月20日)


  中国について久しぶりに何か書こうかと思ったが、日本に戻って一年以上になるので中国について詳しくなくなってしまった。それで中国の新聞を見れば何か新しいニュースがあるかと思って見てみたのが、特別新しいニュースは無かったが、やはり中国的汚職事件はあった。「中国新聞」のサイトの4月14日の社会欄に、二件もの汚職の記事が載っていた。4月14日はたまたまニュースを見ただけなのであるが、二件もの中国的汚職事件が載っていたのである。

  日本にも汚職はある。しかし中国とはその件数もやり方も全く違うのである。やはり汚職においても中国は中国的なのである。4月14日の二件の汚職事件を紹介して、どんなところが中国的であるのか書いてみたい。

  一つの事件は、安徽省の臨泉県の公安局長が収賄(中国語では受賄)と贈賄の罪で17年の有期徒刑と20万元の個人財産の没収の判決を受けたというニュースである。中国の県は日本の県より小さい行政単位で、日本の行政都市の“区”に相当するくらいだろ。まずもって中国的なのは犯罪者が公安局長であることである。日本なら警察署長に相当するとおもうが、日本ではこの役職者の犯罪はあまり聞かないのではなかろうか。そして中国では、収賄と贈賄がはびこっているのは、地方と言うか田舎というか、中央の目の届かないところなのである。

  さて元公務員であった楊華傑の罪は、49人から260万元余の現金と買い物カード44000元を受け取り、相手に何らかの便宜を図ってやったとのである。それだけではなく、国家公務員に対して便宜を図ってもらおうとして、30万元余の現金を贈った罪もあったのだとか。つまり一方では賄賂を受け取り一方では賄賂を贈っていたのである。このことは一方では官吏の職位を売り、一方では官位を金で買っていたことになる。このようなことを中国語で表す言葉があって「買官売官」と言う。言葉があるくらいだから日常的なことなのであろう。49人という人数も多いが、260万元といえば、日本円で言えば3600万円くらいか。とにかくスケールが大きい。

  ところで、楊華傑の地位は公安局長であっただけではなく、県の政法委員会の書記であり、県委員会の常任委員でもあった。楊華傑は公安局長であるから人事権などの利権で汚職ができたのだろうか。どうも中国ではそうでもないらしい。中国には県長とか市長を、脇からチェックし補佐する役があるのであるが、日本の会社で言えば監査役みたいなものであるが、中国のは日本の監査役と違って非常な権力があるのである。何故なら中国では共産党が全てを指導することになっているからである。その指導役が市の共産党委員会とかその書記なのである。その指導とは人事権も含めての数々の実質的利権も握っているらしい。だから市長より市の委員会書記の方が、権力があるのである。楊華傑公安局長の汚職が可能なのは、公安局長であることより、県の政法委員会の書記であることの方が中国的汚職のキーポイントなのかもしれない。
         この事件のニュースは

  しかし「政法委員会の書記」や「県委員会の常任委員」にどんな権力があったのかは組織名を見ただけでは、本当のところは分からない。しかし同じ日の、4月14日の別の公務員の賄賂事件は、市長でもないのに市の幹部から多額の賄賂を受け取り、「官位を売っていた」事件である

  この汚職事件で起訴されたのは、明光市委書記である張松堅であった。張松堅が除州市南焦区の常務副区長、区長、区委員会書記、除州市人民代表常務委員会副主任、明光市委書記であった12年の間の汚職事件であったのであるが、この12年の内、どの職位にあった時、盛んに収賄を受けたのかはニュースには書いてない。しかし明光市委書記の時代に、明光市の市長ではないのに、盛んに明光市の幹部から賄賂を受け取っていたのである。
         この事件のニュースは

  張松堅は市長ではなく市委書記であった。明光市でほしいままに利権を操れたのは「市委」という名前からしてハッキリしない組織が、監査役のような組織でありながら共産党が政治を指導するという権力を握っているからだろう。「市委書記」とは「市委員会のトップ」と言うだけにすぎないのだが、極端に省略化された「市委」とは市の共産党委員会なのであって、市の行政を指導するだけではなく、強大な利権と権力を握っていると考えられる

  張松堅は162人から現金428.5万元(6000万円くらいか)や他にも金券を受け取って、各種の便宜を図ってやったという罪で起訴された。どんな罪かというと、自分の職務を使用して、ある企業を有利に取り計らったり、ある公務員を幹部に任用してやったり、職場の配属で便宜を図ったり、土地の転用や開発で他人の利益を図ったり・・・・・、などなどである。

  受け取った賄賂は162人からで400回以上。その内張松堅に賄賂を贈った党政幹部は153名にも達している。賄賂を贈ったのは共産党員である公務員が大部分なのである。中国の官吏は相当汚染されているのである。その中には財務局、物価局、交通局などの政府の幹部も含まれていた。さらに驚くべきは明光市の検察院副検察長、明光市の司法局長、明光市の「紀委」副書記までもが張松堅に賄賂を贈っていたのである。

  検察院とか司法局とか「紀委」と言えば、司法の番人であるはずの立場の組織であるのに、そこまでもが汚職まみれとは。「紀委」とは共産党員が規律を守っているかどうかを審査するところなのであるが、そこの副書記までも賄賂を贈っていたのだから凄い。

  訴状によれば、一回の最大賄賂は10万元(1400万円くらいか)以上にも達し、10000元以下の収賄であれば100件に達していて、最小は800元だったとか。それは例えば3万元を茶筒に入れて渡されたり、5万元の年賀謝礼金として渡されたり、1千元の買い物カードとして渡されたが、張松堅は来る者は拒まずであったとか。

  さらに起訴状によれば、企業に土譲渡などで他人に便宜を図ったりなどしたりことは24件にものぼり、任官とか昇級で便宜を図ったのは何百件もあり、上は明光市の局長から下は中学の一教師まで。起訴状中には,誰だれを取り立てたとか、配慮に感謝されたとかの文字が多数見られたのだとか。

  なお、後者の張松堅の収賄事件は、まだ起訴された段階であって、検察が用意した361名の証人の証言は全部ウソだと張松堅は否定したのだとか。またこの二件の事件は特別に賄賂事件を探し出したのではなく、たまたま目についただけなのである。それだけ中国にこの種の事件が多いということだと思う。