中国人には自分用の箸が無い
(2008年12月8日)


  中国人に「日本人は茶碗、箸、湯飲みなどは、自分用の物を使う」と言うと、そんなことは理解できないと言う。中国には自分用の茶碗、箸、湯飲みなどは無く、家族共用の茶碗、箸を使っているからである。彼らにとって疑問なのは、自分用の茶碗や箸を使いたいと思ったとして、どうやって自分用の物を区別するのかという疑問である。箸ならナイフで傷をつけておくことも可能だが、茶碗ではそうもいかない。日本人なら直ぐ理解できることだが、箸にしても日本のは箸の長短、箸の断面の形状、塗り、描かれた模様が、数知れずある。茶碗にしてもサイズや模様が変わったものがたくさんあるから、その中から好みの物を選べば、それが自分の箸や茶碗になる。

  しかし、中国では、そんなことは不可能なのである、売っている茶碗、箸、湯飲みの種類が極端に少ないのである。中国では夫と妻の茶碗は区別できないという状況は、中国の瀬戸物売り場に行けばよく理解できる。中国の瀬戸物売り場では、二三種類しか茶碗を売っていない。これを全て買って家族全員に割り当てても、どうしても家族全員に種類を割り当てられない。中国で食器を購入したのでは、自分用の茶碗を持つことは不可能に近いのである。中国の日用雑器の瀬戸物の種類がとても少ない。

  それに引き換え、日本の瀬戸物売り場に行けば、茶碗の大小だけではなく、形も柄もさまざまなものがある。箸でもその種類は日本では本当に多い。とにかく中国の食器類は無味乾燥であるが、日本の日用雑器の文化はなかなかすばらしいのである。

  中国と比べると日本の食器、瀬戸物の文化は特別なものであることがわかる。もしかして日本人が日用雑器を好むのは、世界でも特異なことなのかもしれない。そう言う物が好きだから、自然と日本人は自分の好みの箸や湯飲みを使うことなのかもしれない。実際に日本の瀬戸物売り場には中国と比較すると、溢れるばかりの種類の茶碗がある。中国の食器類は無味乾燥というか、味気ないというか・・・・・。

  日本の家庭では料理によって皿をいろいろ変える事が多い。それだけ食器の数が多くなる。中国の家具売り場に食器棚というのがあっただろうか。無いような? 中国のドラマの中に食器棚がでてくるだろうか。見たことが無いような?  そう言えば、靴箱と言う家具もあまり中国では見かけない。 靴も日本人は中国人よりたくさん持っているはずである。

  ある中国の観光地の日本語による紹介の番組があったが、その中のナレーションで、夫婦(めおと)茶碗を作っていると紹介があった。これは「夫婦で茶碗を作っている」の間違いではなかろうか。夫婦(めおと)茶碗を作って日本に輸出している話ならわかるが、中国では、夫婦でサイズを変えた湯飲み茶碗を使う習慣は無いはずである。

  始めに、中国人に「日本人は茶碗、箸、湯飲み茶碗などは、自分用の物を使う」と言うと、と書いたが、このことは案外中国人にとって難しい言葉が含まれている。中国人は、「茶碗」と言うと、お茶を飲むものかと思ってしまい。「湯飲み茶碗」と言うと、スープを飲むものかと思ってしまうのである。「茶碗」で何故でお茶を飲まないのか。中国人にとって「湯」はスープであるから、何故「湯飲み茶碗」でスープを飲まないのかと言うことになり。茶碗はご飯を食べるものであって、湯飲み茶碗はお茶を飲む物だと教えなければならないのでややこしい。それに「お椀」はスープを飲むものだけれど、スープと言っても味噌汁を飲む為の物だと教えなければならず、これもややこしい。

  それはともかく、あなたの家に中国人を連れて来て、日本人のうちの食器棚を見せたら、その数の多さにびっくりするかもしれない。