トイレの横に食堂がある
(2008年8月29日)


  以前、会社に弁当を持っていって食べていると書いたことがあるが、最近は全く弁当を作って行かなくなった。会社に弁当を持っていっていた頃は、自分で作った弁当の方が美味しくて、昼食時にあまり美味しくない中華料理を食べる必要が無くなったと書いた。本場の中華料理というのは、一人前のセットの料理というのが殆ど無く、大皿料理である。一人で食べる一種類だけの大皿料理は困るのである。弁当を持って行けば、それで悩まされることは無かった。

  本場の中華料理は日本の中華料理ほどは美味しくないし、自分作った醤油味の煮物の方がずっと美味しいのであるが、会社で机の前で食事をすることが禁止になり、会社で弁当が食べられなくなってしまった。

  その理由はちょっと複雑なのだが、会社で弁当を食べることは禁止ではない、会社内には食堂らしきところもある。そこで弁当を食べるなら、なんら問題は無い。しかしその場所が問題なのである。そこは通路なのである。通路には椅子も少しはあるのだが、大勢の人が食べるには椅子が足りないから、立ったままで食べなければならない。立ったままで食べるのは、日本の立ち食い蕎麦でも同じと考えればいいのかもしれない。しかし更に問題なのは、そこがトイレの脇であるということである。日本人の私は、弁当を食べる場所が、通路であること、立ったままで食べることも我慢がならないが、特にトイレのすぐ傍で食事するなんてことは、最も我慢がならない。

  日本と中国の食堂の差は、厚生施設の差と考えることもできる。日本の会社のようなまともな食堂は、中国の会社には無いのかもしれない。日本式の食堂の基準からいえば、これは食堂とは言えないのは明らかである。通路なのである。しかもそこは、トイレの真横にある。私がいるその会社は、小さい会社ではない。その事業所だけでも、5、600人はいる。結構大きい会社である。

  元々、トイレの横の通路で食べなければならないことになったのは、事務所の机や会議室では食事をしてはいけないと言うルールができたからである。そのルールは全く新しいルールというわけでもなく、以前から会社の中で避けるべき行為として、そのような習慣のようなものがあったらしい。何故会社で事務所の机のところで弁当を食べてはいけないのか? 聞いてみると、中国の料理は刺激的で、強烈な匂いがして、あたりにその匂いが残るからだと言う。食べ物の匂いと言うのは一般的に食欲をそそる良い匂いではないのだろうか。確かに本場の中国料理には、強烈な匂いがする漬物などがある。私のなどは、辛い臭いを嗅いだだけで、汗が吹き出る。しかし日本人にとっては強烈な匂いであるのは確かであるが、中国人にとってみれば普段の食べ物なのだから、嫌な匂いなのではないと思うのだが。匂いは確かに後に残るが。

  それより、中国人の食べ方というのは、骨などをテーブルに吐出すから、食事をすると机を汚すと言うことは言える。だから中国人が、机の前で食事をすると、机が汚れてしまうという理屈なら分かる。それに食べ滓を床に捨てることもありえる。中国ではテーブルに新聞紙を敷いて食事をすることがある。吐出したものでテーブルを汚さないためである。

  机や床を汚すのが問題であるならば、テーブルの上や床に食べかすを吐き出すことを禁止すれば済むことである。または新聞を広げてテーブルクロスの替わりするとか、汚したとしても、後で拭くことを義務付ければ済むことであろう。

  立ったままで食事をしたり、トイレの横で弁当を使ったりするのは、我が社だけのやり方と思ったら、日本帰りの留学生から聞いてみると、どうもそうではないらしく、中国では有りがちな事であると言う。どうも中国人からすると、トイレの横や通路で、立ったまま食事することは、あまり気にならないらしい。しかし仕事場に食事の匂いが残るとか、机が汚れるのは、気になることであるらしい。どうもそのように思える。

  日本人の私から見れば、トイレの近くで立ったまま食べるなんて、せっかくの美味しいで弁当でも食欲がなくなってしまう。一方事務所の机の前で椅子に腰掛けて、ゆっくりと弁当を食べるなら、リラックスできて、おいしい弁当の味を賞味できる至福の時間となりえる。

  ここまで考えてきたら、日本の小学校には学校給食があって、学校給食は学習机の上で食べることに気が付いた。もしかしたらあの習慣は、中国人の習慣からするとおかしいのかもしれない。普通中国には学校給食は無いらしく、昼飯は爺さん婆さんが校門前まで出迎えに来て、家に帰って食べるのが普通らしい。しかしもし中国で給食が始まったとしたら、どうなるのだろう。ちゃんとした食堂を作ってそこで食事することになるのだろう。一方教室で食事することは禁止にするのだろうか。もし予算が無い学校ではどうするのだろう。廊下で食事することになるのだろうか。そしてそのすぐ傍にトイレがあっても殆ど気にならないのだろうか。

  中国人に、食事のとき横にトイレがあったら、気になるのか気にならないのか、事務所で弁当を食べていけない理由は、匂いが残るのが嫌だからなのか、もっと詳しく聞いてみる必要がある。今の段階では、会社で作業机や会議室で昼食を食べてはいけないと言う理屈も、今ひとつ理解できない。もっといろいろ聞いてみればトイレとの親近感(?)のなどについて、日本人と中国人の考え方の違いが浮かび上がるかもしれない。

  日本人はトイレには親近感など無いが、中国では地方へ旅行したとき、共同トイレで弁当を食べていた。

  会社のトイレは綺麗なのか。他の中国のトイレよりは綺麗だと思うがやはり汚れている。それは中国人のトイレの使い方が、男の場合、小便を遠くからするからである。だから辺りがびしょびしょにある。これはどこでもそうである。それにある人は小便器にするのではなく、大便器に小便を出したいらしい。立ったまま出すので、ここでも周りがビショビショになる。 何故か知らないが、あまり便器に近寄ってしない。遠くからするのである。そうすれば汚れることは、わかっていると思うのだが、汚れる事が気にならないらしい。こんなところも日本人とは違うのである。