追い出される北京の地下室の住人
(2008年6月27日)


  今、北京の地下室から人が続々と追い出されています。但し高級マンションの地下室とは関係がありません。そう、オリンピックの関係です。どうも秘密に追い出しが行われているようです。

  “秘密”と言っても機密ではありません。新聞には発表しないでと言う意味です。追い出される人には秘密にはできません。中国は世間とか世界とを気にしているかもしれません。

  続々と人が追い出されている地下室、又は半地下室とは、ある意味では特殊でありまして、特殊ではありますが、たくさんあります。特に半地下室であれば、外から見えますから、分かります。北京に来られた方はよく観察してみてください。しかし、そこがどうなっているかは分からないかもしれません。一階の住人と地下に住んでいる住人とは違うのです。

  その地下室、又は半地下室は、何故特殊であるのか? 北京の地下室には農民工と言われる臨時工などの外地人がたくさん住み着いているからです。かなりの数になるようです。例えば、私がよく行く、藩家園の骨董市で、骨董を売っている人々などがここに住んでいます。私が住んでいる牛街にも半地下室や地下室があって、地方から出てきた人が住んでいます。

  そこは一種の旅館みたいになっているのです。しかし長期滞在者が住むので、旅館と言うよりウイークリーマンションと言ったほうがいいのかもしれません。しかし、窓もトイレも台所も、何〜んにもない、ただベットだけがある部屋です。だからドヤ街と言ったほうがあたっているかもしれません。

  値段は安いです。空気は淀んでいます。しかしゴミが散らかっていると言うわけではありません。一応管理する人がいますから。

  その旅館のような空間を誰が経営しているのか? 多分ビルの管理会社から、旅館の経営者が借りて経営しているのだとおもいます。元の使用権はビルの管理会が持っているのではないかと思いますが。中国のビルの管理会というのは住民のためのビルの管理だけをやっているのではないようです。

  地下室の住人を追い出す方法は、この旅館を閉鎖するから出てくれ、と言う方法らしいです。「あなたのように、地方から出てきて、ちゃんとした仕事のない人は、オリンピックのときにいると、心配だし、ふさわしくないから、北京から出て行ってくれ」と言うようなことは決して言っていません。

  北京に戸籍がない農民工に対して、「オリンピック中は、戸籍がないのだから北京にいないで、故郷に戻って、おとなしくしていてくれ、そうすれば北京の印象がよくなる」ともいっていません。

  さすがに、「一つの世界、一つの夢」と宣伝しているオリンピックですから、そんなことは、表立っては言えないのでしょう。世界の目がありますから。

  追い出す理由は、オリンピックを迎えるにあって、地下室は法規に照らして安全ではないから、人に貸す部屋は閉鎖すると言うことです。

  その法規と言うのもおかしなものでして、地下室を一斉に閉鎖するとか、住人を追い出す根拠が、そこにあるとは思えませんが、一応それらい変った規則があります

  その一つは、「北京市人民防空条例」 といいます。何と日本では、戦争時に掘った、防空壕と同じく、空からの襲撃を防ぐ防空です。日本では60年以上も前にあった施設です。

  しかし、今の北京市人民防空条例の目的は、平和時と戦争時を結合した施設を作るということにあるらしいです。世界の平和の象徴とも言うべきオリンピッに際して、「北京市人民防空条例」を引き出してきて、外地人を追い出すというのもおかしなものですが。
 
  もう一つの法的根拠は、「普通地下室安全使用管理法」というのがありますが、こんなのは、日本にはない規定だと思います。何故なら地下室でも、建物の三階であっても、同じく安全でなければならないはずで、例えば日本でならば消防法などで、安全を取り締まっているのではないかと思いますが。北京の地下には特殊な空間があるのです。

  そこを整理するのに、地下空間総合整治指揮部なんてのもできたらしいです。北京を建設した建設者でも追い出されるようです。
<http://zhidao.baidu.com/question/55609243.html>

  撤収の最終期限は、今月末かもしれません。もしかしたら、強制排除もあるかもしれません。日本からの報道だと、25日の朝。北京南駅付近にいた100人を超える陳情者が拘束されたといいますから。
<http://sankei.jp.msn.com/world/china/080626/chn0806261027001-n1.htm>

  この日はその後、中国のトップが北京南駅を視察しました。立派な近代的な建物(東洋一の駅とか)ができていました。やはり不平、不満、不公正を訴える農民がいるところとしては、相応しくないのでしょう

  実は北京南駅付近は、直訴村として知る人ぞ知るところでした。かってはここに、5000人とも6000人とも言われる直訴者が、劣悪なドヤ街のようなところに住み着いていたところなのです。しかし、すでに私が三ヶ月前位に行ってみたときには、殆どの建物が取り壊されていて、直訴者などは見かけませんでした。だから、今回の100人を超える陳情者を拘束というのは、朝早く、どこかの建物の中に踏み込んで拘束したのでしょう。もしかしたら踏み込んだところは地下室だったかもしれません。その後、胡錦涛主席の視察となったようです。

  ついでにで書きますと、陳情者って、どんなことを訴えるのかですが、例えば阜陽市のホワイトハウスを告発した人などが、この辺りに泊まって、直訴の機会を伺っていたのかもしれません。しかし直訴しても殆ど採り上げられることはないようで、却って地元の役人に通報されたり、地元に連れ戻されたりするようです。阜陽市のホワイトハウスを告発した人は、地元に帰ったところで地元の公安に捕まってしまって、監獄の中で不自然な自殺死体として発見されました。

  話が北京の地下室から逸れてしまいましたが、上の話は「阜陽のホワイトハウスの疑惑」として別に書きます。