ほとんど中華料理を食べない生活
(2008年4月24日)


  ほとんどと言っては言い過ぎなのだけれど、中国に居ながら中華料理を食べないなんてもったいないと言われるかもしれないが、あまり中華料理を食べないのは事実である。とは言っても会社のお客さんがきたときは、必ず中華料理になるからそのときは食べる。お客さんというのは日本から来たお客さんで、中国一日目か二日目ぐらいだから中華料理がいいのである。

  以前は、昼食は社員食堂みたいなところで食べたから、必ず中華料理になったが、最近は弁当を作って持って行くようになったので、中華料理を食べることがほとんどなくなった。社員食堂みたいなところの料理(平均的な)中華料理かもしれない)と言うのは、殆どが炒め物で、どろっとした物でからめてある。日本料理のさっぱりした炒め方と違って、マーボ豆腐のように片栗粉で絡めるよう料理である。そうなると全ての料理が、材料と、味もたしかに少しは違うのだが、全部同じような料理になってしまう。

  社員食堂では、金属のトレーに数種類の料理を豪華(?)にたっぷりと載せてくれるのだが、その数種類の料理はトレーが小さいので混ざってしまう。しかし混ざってしまっても、この中華料理は何の違和感も起きない料理なのである。つまりどの料理でも、あの中華なべで油たっぷりで炒めた料理だからである、

  夕食や休日に外食はしないのかと聴かれれば、外食もする。たまには美味しい物を食べたいと思うときは、日本食か西洋料理、それも最近はロシア料理が多い。本当に中華料理は食べないのかと聞かれると、羊のシシカバブーみたいなものは、これはよく食べる。ウイグル族の麺もよく食べる。回教徒料理のセンマイみたいな内臓料理も食べる。考えてみると、本格中華でないものは結構食べているかもしれない。しかし中華料理らしい中華料理は宴会のときだけである。いや、今年は、一ヶ月前くらいに羊のしゃぶしゃぶ(羊肉を胡麻ダレでたべる)を食べた。これは美味しかったが、例によって一人では食べる料理ではないので、かなり食べ残してしまった。この点も中華料理は不便のである。

  自分で作る弁当は当然、日本の味である。日本の味とは基本的には醤油味である。この醤油は中国のでは駄目で、必ず日本の物を使う。あるとき納豆(最近は北京でも売っている)を買って食べたが、とても不味かった。何故かと思ったら、納豆についていた醤油が中国製であったからである。その納豆に日本の醤油をかけて食べたら普通に食べられた。

  最近は、作った料理を会社に持って行って、日本の醤油味の料理の普及につとめている。普及効果があったか? 無いですね。 恐らく、日本製の高い醤油を買ってまでもそれを使ってみようとまではならないのである。日本の醤油は中国製と比べて20倍もするし、彼らにとって普段食べるには、醤油の日本の味より、油をたくさん使った辛い料理の方がいいに決まっている。

  しかし、私が自分で作った料理は、彼らにとってかなり変わった料理であることは確からしい。味は醤油味でダシの素を使って、ほとんど油は使わない煮物料理であることも珍しいかもしれない。それに材料も簡単に買える物であっても、北京の人には結構珍しい料理になる。たとえばサトイモとかレンコンをよく使うが、これらはあまり北京あたりでは食べないらしい。そういえば中国の包丁ではサトイモの皮は剥けない。本当ですよ。リンゴの皮も剥けないのだけれど。サトイモをあまり食べないのは、中国の包丁が原因か? 関係ないかもしれない。

  それはとにかく、サトイモは普通に買える。イカも普通に帰るのだけれども、イカと大根の煮物などを作ってみれば、こちらでは珍しい日本料理となる。コンニャクも簡単に買える。コンニャクは日本だけの食べ物かというと、中国にもあるのであるが、多くの人はその存在さえも知らない。しかし四川省あたりの人はよく食べるらしい。北京で売られているコンニャクの製法は明らかに日本の製法で作られているもので、糸コンなんかもある。

  遠いところまで、買いに行かなければならない日本の食材としては、竹輪、ハンペンなどであり、最近は冷凍食品のハンバーグやコロッケなどの出来合いの料理も少し出てきた。しかし近くでは買えない。今年になって初めて見たのだが、冷凍の鯖が買えるようになった。日本料理屋に行けばマグロの刺身が食べられるけれど、北京では海の魚は、ほとんど買えなかった(太刀魚だけが買えた)のである。

  つまり私が作る料理は、味も変わっているが、材料も結構珍しいのである。最近会社に持って行って評判が好かったのは、アスパラガスのマヨネーズ和え、モツの味噌煮込みなど。モツとは牛や羊の胃でセンマイのことである。センマイは中国語で「百葉」という。何故、中国語では百で、日本語では千枚なんだろう。アスパラガスはまた北京では珍しいのである。

  会社におかずを持って行って社員に分けてあげる理由は、料理を作ると一人では食べ切れないからである。そうしないと、三日も四日同じ料理を食べることになる。たとえば鯖の味噌煮を作るにしても、半分だけ料理するわけにはいかないし、一回の食事で一匹丸ごと食べるには多すぎる。それにお世辞かもしれないが、美味しいと言われるので、料理を作り過ぎたときはよく会社に持って行く。中華料理をあまり食べないのは、私が作った日本料理のほうが美味しいからである。