先日も、休日のお決まりコース、潘家園の骨董市場に行ってお目当ての物を、目標の値段までやっと値切って買って、疲れたので、潘家園の外に出て、ベンチで休んでいました。柳の緑の芽吹きが始まり、晴れて暖かい日でした。 すると隣のベンチにちょっと陽気そうな男が座りました。しばらくしてその前に、別の自転車を押した中年男が現れて、陽気な男に潘家園の門はどこだとか聞いているようでした。そのうち、自転車を押した中年男が私の前に移動してきて、やはり潘家園の門はどこだと聞くのです。それで、「あっち、100mくらいのところにある」と教えてあげました。すると、ベンチに座っていた男も私の前に移動してきて、 「ベンチの男」;自転車の男に、「何をしに潘家園に行くのか」と尋ねました。 「自転車の男」;「頼まれて、品物を届けに行くのだ」 「ベンチの男」;「何を持って行くんだ。見せてみろ」 「自転車の男」;何かブツブツ言って、見せるのを嫌がる様子。 「ベンチの男」;自転車の前の籠から強引に品物を引っ張り出して、 「これは良い物だ」、と言う。 「ベンチの男」;私に向かい、これは「清朝の物だ」と言いつつ、 今度は、自転車の男に向かって、「500元で売らないか?」と聞く。 「自転車の男」;「そんなこと突然言われても、・・・・・・・・ 」 「ベンチの男」;「これは確かにいい物だ」と繰り返しつつ、対になっている 花瓶のような物の底に書かれた銘を私に見せる。 確かに乾隆年間製とか書いていたかもしれない。 「自転車の男」;まだ何かブツブツ言っているが、門のほうには行かない。 再び私が、「門はあっち、真っ直ぐ100m行くとある」 と言うのだが、 自転車男はやはり行かない。そのうち、 「ベンチの男」;「これは絶対にいい物だ、これをどうしても欲しい、 600元でどうだ」 「自転車の男」;「600元なら、売ってもいいかなぁ・・・・、 だけど・・・・・・」 渋ってるが売りそうでもある口ぶり。 こんなやり取りを数回繰り返して、私の目の前でやっているのです。しかし何だか展開が変だなと不自然さを感じました。そのうちベンチにいた男が立ち去り、自転車の男は、後に残って何か言っていましたが、その男も立ち去りました。 そこで、このやり取りはなにか引っかかるものがあるなぁ〜と、考えたらはたと思い当ったことがあったのです。 これは私をペテンにかけようとしたやり取りであったのではないかと思いついたのです。二人とか三人とかで、巧妙にしかかけるペテン師が中国には居るのです。以前新聞記事で読んだ事が有ります。 それで、二人の行く方を目で追ってみると、自転車男は門の方には行かず、先に行ったベンチの男の跡をついて行くではありませんか。二人は、顔見しりではないはずですが、実はグルであったようです。 まあ、ペテン師であったにしも、騙しのシナリオがあまり上手くなく、ペテンに必要な巧妙な話術があるわけでもなく、本気でペテンにかけようとする本気度も感じはなかったですが、うまく引っかかれば引っかけようとぐらいは思っていたかもしれません。 私は骨董市場によく行きますが、陶器類には全く関心が無く、関心があるのは土器ですから、ペテンに引っかかる可能性はゼロでした。例え持ってきたものが土器であったとしても、引っかかる可能性は無かったでしょう。以前はかなり騙されて買いましたが、今は相当目が肥えましたから、騙される可能性は今では殆どありません。ですから、ペテン師に遭遇するなら、貴重な体験ですから、もっとディープというか本格的というか、そう言うペテン師に遭遇したかったです。 しかし相手側から見れば、ちょっと金を持っていそうで、騙しやすそうな爺さんがベンチに座っていると見られたのかもしれません。 昔、聞いた騙しの例ですが、人通りの少ない通りで、前を行く人が小さい包みを落としました。それを拾おうとすると、別の男が脇から飛び出してきて、良い物だったら二人で山分けしようと提案します。そこで包みを開けてみると、果たして高価な時計でした。どうして高価なことが分かったか。高価であることを証明する仕掛けがあるのです。例えば○○の功績に対しての贈り物だとか、領収書だとかが入っているわけです。プレゼントに値段が分かる領収書まで入れて置くのかとも思うのですが、ここは中国での話でもありますので、そう言うこともありなのかとも思いました。 山分けすると言っても時計を二つにするわけにはいかないので、飛び出してきた男が「私はこの時計を要らないから、あなたが持っているお金を全部私にくれないか、私はそれで十分だ」と提案します。今で言えば、何十万円もするローレックスの時計が自分の物になると,欲の皮が突っ張ってしまった被害者は、それで承諾して、持ち金を全部男にあげてしまいます。結果は本物だと思っていたローレックスが、安物の偽物だったということです。包みを落とした男と、脇から飛び出してきた男はグルであったわけです。 この話の通り、騙されるのは欲の皮が突っ張っているからで、無欲でいれば、こう言ったタイプのペテン師は、怖くはないと思います。 |