日本の常識は中国の常識ではない−1

  中国には、日本の常識が中国の常識ではないことはたくさんあって、日本ではトイレに入るときドアを閉めてから用を足すのが常識であるけれども、中国では必ずしもそうでもない。そう言うことを挙げていったらきりがないのだけれども、今まさに聴いているところの中国で買ったCDは、日本の常識から見ればおかしい。

  そのおかしい点とは、CDの音楽の演奏者の名前がパッケージに記載されていないことである。今聴いているCDはタイトルが「月光大提琴」とあって、英語名は「Best Cello」とあるからチェロ名曲集のようなものである。中国の音楽のCDは日本で買うよりもずっと安いので、時々は買うのだけれども、全集物とかベストギター名曲集みたいなものになると、何故か演奏者の名前がCDのパッケージに記載されていない。

  中国のCDでも例えばパバ゙ロッティーの歌なら、パバ゙ロッティーの歌が売りだから、タイトルにはちゃん歌手の名前が書いてある。しかしチェロ名曲集とかの音楽CDになると、何故か演奏者の名前が載っていない。このことは以前から気が付いていたのだが、軽音楽集(言い方がチョッと古いが)とかムードミュージックのCDでは、殆ど演奏者の名前が書かれていないのである。但し軽音楽においては、リチャードグレーダーマンだけは別で、この人は中国では有名だから、ピアノ王子リチャードグレーダーマンなどと書かれている。

  私が買ったCDは「盗版」ではないはずである。正規の店で買ったものである。値段もコピー品の値段ではない。今、目の前にあるCDは、偽物にしてはパッケージは立派にできていて、エッセイみたいな文章が印刷されている。しかし音楽に関する情報は殆ど無くて、曲名さえも字が小さくて、しかも英文字で書かれている。これでは中国人には殆ど分からないのではなかろうか。中国人は英語が解らないという意味ではなくて、中国では、作曲家の名前を中国語で書くからかなり訛っている。音楽用語も日本のように外来語としてそのまま使われることが無いから、多くの中国人には英文字で書かれた作曲者とか曲名は理解出来ないのではないかと思う。

  先に挙げたパバ゙ロッティーの歌のCDについてあるが、このCDにはパバ゙ロッティーの歌であることと曲名は書かれてある。しかし曲名の中国名もあるがよほど目の良い中国人でなければ読めないほど小さい。そして日本のCDならばよくあるライナーノート風の解説などはない。中国ではCDは音楽があればそれだけでいいと言うことなのだろうか。日本のCDはサービスをし過ぎなのだろうか。

  演奏家の名前がCDに書いてなくて、その音楽に関する情報も殆ど無いCDが中国に存在する理由は、結局のところ日本人の私には理解できないのだけれど、中国人は良い音楽なら誰の演奏でもいいと考えるからなのだろうか。また演奏家とか曲名とかに関心が無いままに音楽を聴くのだろうか。

  ここは中国のことなので、私が買ったのは、勝手にあちこちからコピーして著作権を無視して、CDにした可能性は無くは無い。よく考えてみると正規の店で売っている違法コピーのCDなのかもしれない。実はこのCDにほんの小さくチェロ演奏家のヨーヨー・マの写真が載っているのだが、全ての演奏がヨーヨー・マの演奏であるとは思えない。JAZZ系のスイングする曲も入っている。ヨーヨー・マがそのような曲を弾かないこともないだろうが、いろいろな曲が入っていて統一感が無い。統一感が無いのは多くのCDが二枚組になっていて、曲がたくさん入っているからかもしれない。日本のCDと比べると二枚組でお得な感じはするのだけれども。

  ヨーヨー・マが自分の小さな写真の掲載を許すとは考えられないから、これは常識の問題と言うより、知的所有権・著作権の問題なのかもしれない。そうだとしても、違法なコピー品を作るならば、ついでに演奏家の名前などもコピーして、聞く人の為に情報を提供して貰いたいものである。そうした方がもっと本物らしくなると思うのだが。

  以下の文章は追記なのだが、上の文章を書いたときは、“違法なCDかもしれない”と半信半疑で書いたが、よく考えてみると、あれはどうしても違法なCDとしか考えられない。それらのCDは、「知的財産権(?)を保護しよう」などの掲示もある正規の店で買ったものである。北京の西単にある新華書店とか、国営の友諠商店で買ったものもある。そういった店で買ったものにもかかわらず、私にはやはり違法コピー物だと思える。一方中国当局はこれらのものは違法ではないとしていないのかもしれない。もしそうだとすれば私の常識と中国当局の見解とかなりずれていることになる。聞くことができるならばこれは違法ではないのでしょうかと、中国当局に聞いてみたい気もする。