35cm以上の犬の運命
(前からの続き)

  捕まった35cm以上の犬の運命は、おそらく抹殺だろう。このことについては、マスコミは一切報道していないし、勿論、処分するという言葉も無い。何故制限が35cmかという理由についても、政府筋からもマスコミからも何の説明が無い。ただ一度だけ北京市公安局治安管理総隊犬類管理科のダン科長という人が、何かのテレビの番組に出演してその三大理由を語ったことがあるらしい。これが何故か詳しくプログなどに採録されていて良く分かる。没収する犬を35cmに制限した三大理由は次のようであった。ダン科長の説明によれば、

  @大型犬(35cm以上)は女子供老人に対して視覚的にも、容易に恐怖感を
    与える。
  A大型犬(35cm以上)は公共の場所に集まると、すぐ喧嘩を始める。そして
   社会秩序を混乱させる。犬が一旦喧嘩を始めたら、飼い主でもコントロールで
   きなくなる。
  B大型犬(35cm以上)は人に容易に噛み付く。飼い主は自分の犬はおとなしく
   て人を噛むことないと思っているかもしれないが、人に噛み付く。

  以上が35cm飼育禁止の理由である。35cm以上の犬が全部こうならば、まるで猛獣のようである。これならば35cm以上の犬のが生存は許されない。そうならば、捕まった犬の運命は抹殺するしかない。これで35cm以上の犬の運命は決まったようなものである。

  ダン科長の談話に依れば、「無証犬」も危険性が高く被害の極めて多いという。しかし無証犬が危険だと言っても、元々大型犬は許可されないから、無証犬にならざるを得ない。小型犬は文明養犬(吠えないようなどの調教が良いなど)でなくても許可証が貰える。大型犬は文明養犬(飼い主が糞の始末をするなど)であっても許可証は貰えない。「この矛盾はどう説明するのか。私はこの道理について、是非市の関係部署の幹部から説明を聞きたいものである」、と愛犬家の掲示板に書かれていた。

  飼い主側の声は、新聞などのマスコミには一切載っていないが、愛犬家などのブログや掲示板には反対意見が結構載っていた。例えば、
もし、飼い主が文明養犬でなければ、
  @吠えるのは、35cm以上と以下では同じではないか。
  A攻撃性は、35cm以上と以下では同じではないか。
  B環境汚染は、35cm以上と以下では同じではないか。
  C35cm以上と以下の犬で、どちらが人類に貢献しているか?

  別の人の意見ではもっと具体的な提案があって、この件については、「大衆が良く見るテレビ番組で、是非討論して貰いたい」と書かれていた。そこで
  @ 一般大衆が理解できない35cm以上の犬の劣性について、
  A 大型犬に許可書がもらえない理由について、
  B 北京市の五環状線以内で大型犬が買えない理由について、
これらについて市の関係部門のお偉い方々の“道理”を是非お聞きしたい。我々愚かな大衆が理解出来ない謎を、テレビに専門家を呼んで、是非解き明かしてもらいたい、とも書かれていた。そう言われても中国のテレビでは、お上の権威に傷がつくような公開番組事はできないのでは? そして市の幹部は再び説明に現れないのでは?

  ダン科長の三大理由は話さない方が良かったかもしれない。愛犬家から決め方が非科学的だとか、人道精神にもとるとか、人が犬を飼う自由を奪うのか、決め方が民主的ではないなどの批判が飛び出して、政治体制の批判に話が飛びそうでもある。35cmに決めた理由など、頬かぶりをして黙っていたほうが良かったかもしれない。市政府のいい加減さ、非民主的な決め方が却って明らかになってしまった。元々「養犬管理規定」は中国にしては民主的決め方で、決めたつもりだったのである。それは公聴会という方法で意見を聞いた。その規定には大型犬の制限も入っていた。しかし35cmという数字は無かったし、市民の正当な代表者の賛否を採ったわけでもない。

  なお、捕まえられた犬の運命であるが、ブログなどで見ると、「捕まえられた犬の運命については、マスコミに報道されていないが、捕まったら最後、一路死の道を辿ることになるだろう」と、処分されることを暗示していた。捕まえられた犬の運命について、マスコミが一切報道していないことも、却ってこの推測が当っていると思える。日本の記者だったら、犬の運命はどうなるのかと、引っ掛かるところがあるはずである。

  もし、このことをブリジットバルドー(現在は野生動物保護活動をしてるとのこと)が知ったらどうだろう。イギリスの動物愛護協会が知ったらどうなるか。中国はいつまでグローバルスタンダード(この場合、35cm以上の犬を抹殺するのは残酷なことである)に逆らえるのだろうか。中国も外圧には弱いのではないだろうか。もしこの事態が二年後の北京オリンピクまで続いていたら、愛犬家達はオリンピックを機会に、中国は残酷な国だと実情を外国に訴えるのではないだろうか。私の予想ではそう思える。私の予想が外れれば中国は依然として野蛮な国との称号を貰うだろう。だからオリンピックまでには400人の犬狩り隊はいなくなり、犬狩りは無くなるのではないかと思うのだけれど。