爛れたビルのその後

  9月2日(土曜日)のことだが、こう言うことも起こり得ると思っていたのだが、塀に書かれた「中国共産党は・・・・」と言う部分は塗りつぶされて消されていた。しかし その上にやはり「中国共産党は・・・・」と新たに書き直されていた。泊り込み現場の前に行ってみたら、消したのも、書き直しされたのも新しかった。 誰が消したのだろう。以前泊り込み現場のガラスを塗りつぶしたのは、城監(街の中の違法な商売や商品、偽物などを取り締まる半警察的組織)というから、また城監がやったのかもしれしない。 やはりこの「中国共産党は・・・・」と言う言い方は当局の気に入らないらしい。ここに書かれた言葉は、江沢民はこう言ったとか、胡錦濤主席はこう言ったとかいう中国共産党のスローガンを逆手に取っているように見える。


これは9月9日の状態。消されたがまた書いた。前より字がきれいになった。
人民に背くのは恥!と書かれているが、元々は今流行りのスローガンである。

  やはり最近のテレビで見たのだが、他の都市の例であるが、開発商が起こした悪質な事件であっても、市には実質的にその責任を追求できる能力がないようである。その市の担当者は、責任者が見つからないとか、金がなくて払えなのだから仕方がないとか言っていた。前にも書いたが、競売も、開発商の財産の没収などもできないようである。


オリンピックまであと699日、未完成のビルに住み込んでから30日と書かれている。
これは政府相手の宣告であって、長期戦も覚悟のようである。

  政府の管理監督能力のことを、中国語では執政能力と言うらしいが、今回の泊り込みの抗議は、開発商に向けてではなく、政府の執政能力に向けての抗議のようである。大型犬を没収する能力はあるが、無責任な開発商の財産を没収して罰する能力は有いようである。無責任な開発商ではなくて、悪徳な開発商だったら責任を追及できるのだろうか。他の市の例では、悪徳な開発商であっても手が付けられないようであった。

  土地の再開発がらみだと、殺人事件になってもその事件が解決しなくなる。今年1月24日に起きた事件は、強制取り壊しの時に、一人が衆人環視の中で数人に取り囲まれ、頭を集中的に殴られ、その後2月12日には死亡してしまった。開発商か取り壊し業者とかが絡んでいる事件だと思われるが、最終的には未だに解決していない。

  南礼士路というところで古い住宅ビルが取り壊されることになった。しかし、200戸のうち60戸が条件が合わないということで立ち退きを拒んでいた。更にその中の4戸が、裁判所から強制立ち退きの命令を受けて、強制執行になった。更にその中の1戸が入り口を鎖で硬く閉ざし、主人(おばさん)はその中に立て篭もった。三時間もの現場での、開発商との交渉が続き、追加の立退き料を払うということで、交渉が成立した。それで人が立ち去ろうとした時に、その成り行きを見物していた一人が突然数人から殴られて、昏倒してしまった。周囲には強制執行の警備に何人もの警官がいたと言う。警官にあの暴力を止めてくれと言った人も居ると言う。それなのに暴行を止めるでも、調査するでもなく立ち去ったと言う。その場に血を流して倒れている写真もある位だから、そのときから重症であったはずである。それに多くの人がこの凶行を見ていた。凶行を働いたのは背の高い若者達で、同じ運動服のような物を着ていていたと言う。更に証言者の話では事件が起こる前から立ち入り禁止の線を自由に出入りしていた人物だという。だからこそ、周囲の人が警官に助けを求めても、そして警官から暴行が見えていても、何もしなかったのかもしれない。

  暴行を受けた当人は、偶然殴られたのではなくて、襲撃の標的になっていたらしい。殺されたといってもいいその当人は、上の4戸の、強制撤去の対象に入っている家の一戸の主人である。

  白昼堂々と衆人環視の中で凶行を働いた犯人は、3月6日の時点で北京市公安局の「闇の部分を打ち砕き悪を取り除く」部門の調査によって、ある程度分かったらしい。建物を撤去することを請け負った会社の運転手が、あるクラブの警備員8人を、現場の秩序維持のために呼び寄せたものだという。これは今年の3月6日間でに分かったことである。しかしそれ以来犯人の追求は一向に進展していない。

  この被害者の名前は「李建平」と言って、不幸な事で一部の人には知られるようになった。ちなみに、“南礼士路の北京市民李建平”と入力して中国語のページを検索してみると、多くのページが引っ掛かる。血を流して倒れている写真も有る。
       http://www.chinatimes.cc/news/list.asp?id=49108

  しかし未だに事件が解決したと言うニュースは無い。衆人環視の中の殺人が未だ未解決なのは不思議な気がする。

  取り壊し請負会社と関係があると分かったのだから、その先の黒幕が何故探し出せないのだろう。運転手が人を雇ったの言うのもなにか怪しい。見え見えの事件が解決しないのは、開発商とか取り壊し請負会社の経営者かと、市の幹部と間に何か特別の関係は無いのだろうか、利権絡みの話が絡んでいないのだろうか。

  元々は無料の国家の土地が、どうやって開発商に渡るのだろう。土地の払い下げは競売によると聞いたことがあるが、国家の土地の競売の話は聞いたことがない。中国に競売の制度がないわけではない。骨董品の競売は盛んだし、以前は賄賂を貰って、その後没収されたた品物の競売さえもあった。国家の土地が、開発商に渡る過程で、隠された闇の部分は本当に無いのだろうか。新聞は社会の闇の部分を追求出来ないのだろうか。警察は南礼士路の北京市民李建平の本当の犯人を捕まえられないのだろうか。

  死亡した南礼士路の北京市民李建平は、病院の治療費を払っていない為に、死亡診断書も未だに貰えないのだとか。 中国共産党が現在宣伝している「和諧社会」(穏やかな安定した社会)と何か違う。