隠されている海軍副司令の犯罪−2

  ところで、どうしてこの汚職情報に気が付いたか? それは中国にもブログがあって中国のブログを研究していた(研究とは大げさな!)からである。中国語では、ブログのことを「博客」といい、読み方はボークゥと読む。音をとって上手く外来語を訳したものである。

  中国のブログ「博客」のなかに、海軍副指令王守業死刑判決のニュースがあるのを見つけた。そしてこのニュースは大きな新聞にも載っているかと思って、「海軍副指令王守業」という言葉を入力して検索してみた。すると何と8,730件もヒットした。その内容を見てみて分ったことは、

○ ヒットは多いが新聞やテレビなどのマスコミ系の情報ではない。大部分はブログ 「博客」か、掲示板系のページの情報である。
○ マスコミ側から見れば、この情報は一応秘密の情報である。中国のマスコミが当局の支配下にあることも分かる。
○ ニュースが漏れ出てきたのは二回だけである。最初は海軍副指令王守業が免職されたと言うニュースでる。このことを伝えた一番早いニュースは4月6日であったが、実際に何時免職になったのは昨年の暮れらしく、12月23日に逮捕されていた。このニュースソースは香港の新聞であるらしい。免職と逮捕は殆ど同時であったかもしれにない。
○ ニュースが漏れた二回目は、海軍副指令王守業が死刑の判決を受けたと言うニュースである。中央軍事法廷での判決は4月10日であったが、ニュースになったのは5月8日以降である。ニュースソースが書かれているのは殆どないが、香港の争鳴月刊という情報もあるが。

  ところで、共産党幹部が腐敗(多くは汚職)の疑いを受けたとき、いきなりは逮捕されないらしい。普通は共産党内部での“特別”の調査を受けるらしい。今回はいきなりの逮捕だったらしいので、この点は共産党幹部の腐敗の捜査としては珍しいのかもしれない。

  普通、共産党幹部の腐敗の捜査は、「双規」という共産党内部の調査によって取り調べでられる。刑事訴訟違法による強制執行ではなくてあくまで調査である。「双規」とは中国共産党特有の制度で、「双規」の双の二つとは、決められた場所で、決められた時間以内で調べると言う意味らしい。ということは共産党員に与える恩恵とも保護とも取れるし、共産員は他の模範とならなければならないから、非党員よりモラルが厳しく問われので、そのための取り調べだという解釈も有りそうである。しかし、皮肉なもので多くの共産党員幹部が「双規」で取調べを受けるので、「被双規」(双規の捜査を受けた)という言葉でインターネットで検索すると、共産党幹部の腐敗の、たくさんの犯罪が引っ掛かり、共産党幹部に腐敗が多いことがハッキリ分かってしまう。

  それはともかく、中国には共産党員用の特別の取り調べ方法があると言うことである。これは憲法や他の法律とも矛盾があるという、中国人の意見もある。法の下の平等という、他の国が普通に考える法概念(私がこんな言葉を使うのはチョッと重過ぎるが)とは違うらしい。中国共産党特有の「双規」は、法律にはチャンと決められているのだが、「双規」の双の二つとは、決められた場所で、決められた時間以内で調べると言う意味だと言われても、その内容が曖昧なのだから、当然政敵をやっつけるに時にも使える。汚職をしている者が共産党の大物であれば、共産党内部のこの双規によって告発者を逆告発もできる。 反対に曖昧な結論を出して逮捕する必要がないと言う結論を出すこともできる。今回の海軍副指令王守業についても、「双規」による取り調べでは、彼の定年が2006年の上期であったので、その定年を待って、うやむやになるのではないかという憶測もあった。しかし今回は「双規」ではなくいきなり逮捕ということになり、死刑(執行猶予)の判決まで出てしまった。

  今回は中国のブログ「博客」を調べていて、当局が秘密にしている情報が、中国ではインターネットのブログなどを通じて、どのようにして広がるのかと言う、その広がり方も分かった。地下水脈みたいなところで、裏情報が脈々と流れているようである。そうして中国には中国共産党員を専用に取り調べる方法がこあることもわかった。

 分からないのは、何故、共産党員を特別に扱うのかと言うことである。共産党員は特権階級だからなのか、それとも共産党員に汚職犯罪が多いからなのか。法に拠らないで内部でこっそり処理したいからなのか。共産党員だから特別扱いするという事は、人間は法の下には平等であると言う、普通の法概念からはなかなか理解し難いことである。良くも悪くも共産党員を特別に扱うのは、中国共産党の伝統的な特別の考え方なのだろうか。ずっと昔の話であるが、「ワイルド・スワン」と言う小説の中で、主人公の両親が、共産党による隔離審査とか言う方法で、過去の思想をねちねちと調べられる場面があった。中国共産党の伝統的な方法と推測するのも、あながち見当はずれではないかもしれない。 

  始めの話題に戻るが、海軍副指令王守業の死刑(執行猶予付き)のニュースは未だに発表されていない! ずっと隠し通すつもりかなのだろうか? 後追いで発表するつもりなのか、広まってしまった情報をいまさら禁止できるか? これだけ広まってしまった情報を、今更禁止することも、削除する事もできないのではないだろうか。やはり隠し通すつもりかもしれない。

  中国が秘密にしている情報がネットで広がったという話は以前にもあった。それはSARSの時で、マスコミがこの話題に一切触れない中で、解放軍○○○病院に怪しい患者がいるとか、既に何人か死んでいるとか、医者まで感染したという情報が流れた。その話は真実であった。その頃は未だ中国に「博客」という言葉は無かったかもしれない。その頃はメールで秘密の情報が広がった。この時も中国の隠蔽体質が問題になった。