隠されている海軍副司令の犯罪−1

  今年の4月10に中央軍事法廷で、中国海軍副指令王守業(中将)が巨額の汚職で死刑(執行猶予付き)の判決を受けたというニュースは、未だに公表されていない。秘密にされている理由はその犯罪が前代未聞の汚職金額であって、この事実を公表すれば人民解放軍、引いては中国共産党への信頼を著しく損ねるから、それを恐れて公表しないのかもしれない。

  ところで、この秘密にされているはずのニュースは良く分かるのである。それをみるには中国語のページの「百度」という検索エンジンに、この事件の主役である「海軍副指令王守業」と入力して検索すると、たくさんの情報が引っ掛かるからである。しかしそのニュースはマスコミと言われる新聞やテレビの情報ではない。全て中国版グログ系か掲示板系の、口コミ系のページによって分かるのである。

  このようにマスコミ系の情報にない重大ニュースが、口コミ系の情報だけに流れている事によって、当局が何を隠したいのかが、却ってハッキリ分かってしまうのも皮肉である。この部分を読まれた方は、既に中国人民解放軍の中にも巨額の汚職犯がいて、しかもそれが隠されていて、それを当局が隠したいと思っていることを、分っていただけたと思う。同時に中国のマスコミが情報を流すのは、当局のコントロール下にあることも分ると思う。従って以上の事件のニュースは、一応は、秘密の情報である。

  何故当局はそのニュースを隠したいのか? それは「海軍副指令王守業」が日本円にして20億円もの賄賂を受け取ったという、人民解放軍では前代未聞の金額であると言うことだけではなく、せっせと汚職を働いていたまさにその時に、優秀党員、優秀幹部の表彰を受け、二回も三等勲章を貰っていたとか、五人もの愛人(ということは2号から6号まで)がいたなどという、あまりにも酷い腐敗の実態を公表すれば、人民解放軍とか共産党の名誉にも傷つくと考えたのかもしれない

  元々中国は隠蔽体質だから、当然隠すということもありえる。しかし最近は共産党幹部の汚職については、積極的に公表してその危機感とか、取り締まりの厳格さをアッピールしているようにも見受けられる。にも関わらず、何故解放軍内の汚職を公表しないのか。やはり解放軍が隠蔽体質であるからかもしれない。それより内部の腐敗はかなり酷いから発表したくないのか? それはわからないが、事件が発覚する発端も異常なものであった。こんなことがあっては、発表したくなくなると思わせるような出来事があった。

  そもそも悪事が露見したのはある愛人とのトラブルであった。5人いた情婦の内1人に子供が出来て、その子供は俺の子供ではないなどといったようなことからトラブルになり、二人の関係がおかしくなった。そしてその蒋と言う女性は中央軍委員会、海軍司令部などに訴えたらしい。それもかなりまえのことである。始めは愛人が訴えても門前払いでされて事件にはならなかった。訴えが通らないので、二年以上たって別の愛人二人も巻き込んで、中央政治局、中央委員会主席、副主席などに連名で58通もの訴状を送りつけた。それで58通目に、ついに無視できなくて事件になったらしい。別の死刑判決前の情報に拠れば、訴えが通らないので、作戦を変えて北京の海軍大院の門の前で、雨の日も風の日もビラを配ったのだとか。

  そしてこの事件はスケールがデカイ。汚職の期間は海軍副指令に昇進する前のことで、后勤部(海軍ではない)の基地建設だか建物建設の、部門の部長の時のことでる。1997年から2001年までのかなり前の5年間の事で、せっせと汚職を働いたらしい。その汚職の額は1億6000万元である。日本円にすれば、何と20億円以上である。逮捕後の別荘などから発見された現金は、元で5,200万元(約6億7千万円)、アメリカドルで250万ドル(約2億7500万円)もあったとか。現金は洗濯機や電子レンジの中から見つかったのだとか。預金も5000万元以上あった。人民の為の解放軍と何時も言っているのに、人民解放軍の中まで汚職が蔓延していたとあっては・・・・・。 しかも優秀党員、優秀幹部の表彰を受け、二回も三等勲章を貰ったのは、この汚職していた5年間のことのなのである。

  中国は国もデカイが汚職もデカイ。中国人と日本人の汚職のタイプは違うのである。日本にも汚職はあるが、日本人は小心翼翼と汚職をする。中国人はふてぶてしく汚職をする。副指令王守業はこんな派手派手にやって、発覚しないとでも思ったのだろうか。中国版ブログの中に、王守業は、美人は災いを招くという言葉を知らなかったのかとコメントがあった。愛人の行動をみくびっていたのだと思う。汚職もばれないと見くびっていた。その愛人であるが、本当に美人であったかどうか? 美人であったと思う。何故なら5人の愛人の内3人は、それぞれ南京軍区文工団、総政文工団、北京文工団の団員であった。文工団とは歌とか踊りで慰問する歌舞団みたいなものらしい。歌舞団と違うところは、軍隊や鉄道部などの組織に所属しているところが違う。共産国に特有な組織であるらしい。北朝鮮にもあるのでは? 公費で育てた軍の美人をも、職権を利用して掠め取ったわけである。他の二人も軍内部の女性である。海軍大員の門の前でビラを撒いたのは、南京軍区文工団の美人(多分)の演員であった。この女性はただの女性ではなく、例えば高級幹部の娘とかだったかもしれないと、口コミのコメントにあった。そうでなければ、消されていたという推測である。

  この愛人にたくさんお金でも与えておいて、上手くコントロールしておけば事件にならなかったのかもしれない。元々の彼女の金額的な要求は300万元であったのだとか。それをケチって100万元にしろと突っぱねたらしい。5,200万元も現金を隠しておいたのだから、300万元でも400万元でも与えておけばよかったのに。そうすれば死刑の判決など受けないでも済んだかもしれない。その可能性は大きい。当局は長期間訴えを握りつぶしていて、見て見ぬ振りをしていたのだから。惜しむらくは愛人を操作する作戦が悪かったのだろう。そういえば副指令ならば作戦が上手いのではと思えるが、王守業の経歴をみると、ずっと設備、建設関係の経歴である。だから作戦に携わったことは無く、作戦は下手なのだろう。しかし同僚部下11人(少将二人を含む)には5000万元もの大金を、口止めとして分け与えているから、全くのけちではないらしい。11人は処分を受けて、内5人は首になった。

  こんなていたらくならば軍の中には、まだ愛人に訴えられていない汚職者がいるのかもしれない。そんな疑惑が生じるから隠しておきたかった・・・・・・。隠しておきたかったがインターネットで秘密が広まってしまった。そのインターネット情報はブログ系、口コミ系情報だから、個人のコメントも見える。実際この事件に対する世間の目は厳しい。その批判は王守業個人に対するより、軍自体の腐敗とか軍の対応とか隠蔽体質に疑問を述べているのが多い。王守業は文工団員とどこでどんな踊りを踊ったのだろうなんて、揶揄もあったが、マスコミが何故口をつぐんでいるのかと言う、根本的な批判、疑問も当然あった。

  別の情報だが二三日前の日本からの報道で、中国の新聞のある編集長だかが、首になったという報道があった。理由は共産党幹部に対する取締りについて、上部から指示(厳し過ぎないようにしろと言うような)があったことを報道したことが理由らしい。このことは、「海軍副指令王守業」のことをニュースにすると首にするぞ! と言うメッセーだったのだろうか?  (続く)