ゴールデンウイークに旅行してきたところ

  ゴールデンウイークに旅行してきたのですが、どんな所へ行ってきたかと聞かれたても、何と説明したらいいのか。勿論行き先は説明出来ます。簡単に言えば青海省の西寧から甘粛省の蘭州まで行ってきたわけです。そう中国人に説明しても、そこに何があって何のために行ったのか、中国の人には殆ど分からないようです。青海省には青海湖があって、甘粛省には莫高窟がありますが、そこへは行かないでよそへ行ったのですから、想像がつかないらしいです。行ったところに3000mもの高原があると言っても、チベット族がいると言っても想像のほからしいです。

  大体多くの中国人は、甘粛省の南にチベット族がいるなんて知らないようです。大部分の中国人のチベット人に対する知識は、チベットの歌や踊りに付いてだけかもしれません。それは中国政府が少数民族と仲良く楽しく暮らしていると宣伝するために、何時も少数民族の歌と踊りを放映しているから知っているわけです。それに地理に付いての知識が少ないのは、反日教育に時間を割いているからかもしれません。それはともかく、西寧から蘭州まではバスで一日で行けるのですが、そこを回り道して、六泊七日で旅行してきました。

中国人でもそこに何があるのか、分からないようなところなので、日本人であればなおさら分からないかもしれません。それで地図を書きましたので、見てみてください。行き先の説明は一発でどこどこと言えないので長くなります。

  そこに何があって、何を見てきたか。例えば高原があるのですが、高原と言っても3000mに近い所です。実際に日差しが強くて大分日に焼けました。峠ともなると3500mはあったと思います。高い峠を三箇所は超えました。その一つの峠は三回行き来したのですが、ここの高さは後で確認したところ3650mでした。峠を越していくと黄河があったり、回族の住む村があったり、別の峠を越すと大草原が広がっていたりしていました。

  ある高原は草原でもあったわけです。そこには羊や山羊がたくさんいました。高原であるからヤクもいました。運転手は6月になれば草が青々と茂って、とても綺麗だと言っていました。今の時期は海抜が高いので、未だ草原の草が繁る時期には早いようでした。ここがほんとにそうなったら綺麗だと思います。高原に殆ど人はいませんが、あるところにぽつんと小さなチベット族の村がありました。そんな高原の小さな村で、チベット族の小学生に囲まれて写真を撮りました。みんな緊張して体を硬くして写真に収っていました。あまり外から人が来ない所だからかもしれません。写真を送ってあげたら喜ぶのにと思いましたが、言葉が全く通じないようだったので、話しませんでした。

  一番たくさん見たのは、羊やヤクは別として、チベット仏教のお寺でした。十ヶ所も見ました。十とは建物の数ではなくて、寺の境内の数です。あちこちに綺麗なラマ教のお寺があるわけです。一つは遠くから見ただけで、他の一つは白塔だけの寺でした。文化大革命のとき、こんなところまで紅衛兵が来て、完全にある寺を壊したと言いますからご苦労な事です。今は再建されていますが。こんなことを二度と起こさない為にも、もっと歴史を勉強して、反省してもらいたいものです。五体投地で祈るチベット人も見ました。マニ車を回す人も見ました。ロブロン寺がある夏河の町では、イタリア料理のピザも食べました。こんな辺鄙なところでも外国人がよく来るとこころでもあるわけです。勿論ここには、普段高原で放牧に従事しているチベット人が、祈りの為にたくさん来る処でもあるわけです。そん人をたくさん見ました。

  ラマ教のお寺をあちこち回ると、観光客が殆どこない寺ような寺もあります。そんなところでは、坊さんが一緒に写真を撮らせてくれたり、寺の中も撮ってもいいと言ってくれたりで、なかなか友好的でした。大部分の寺の中は撮影禁止ですが、撮ってもいいと行ってくれた寺では、歓喜仏の壁画を撮ってきました。

  吾屯寺というところでは、ラマ僧が民家まで案内してくれて、屋根にも上がっていいと言ったので遠慮なく上りました。経験から言って高い所というのは決して登って損はしません。上からの眺めはよかったです。そのラマ僧もそれを知っていたから勧めたのでしょう。屋根の上は土で出来ていましたが傾斜がほんの少しあって、排水が良いように出来ていました。しかし屋根は平らな泥の屋根なのですから、この地方は雨が少ないのかと思います。そこは綺麗に掃き清められていました。屋根は収穫物を干す場所でもあるようです。

  このチベット族の殆ど土で出来ている家が、意外に清潔なことに驚きました。北京の漢民族のとても乱雑な平屋と、どうしても比較してしまいます。おりしも家の中庭では梨の白い花が満開で、これも綺麗でした。トイレも使わせてもらいましたが、トイレは家の敷地内の隅にあり、流石にドアはありませんでしたが、脇には灰がたっぷりと置いてあり、これをかけて、出した物を覆い中和する方式でした。却って清潔な感じがしました。

  実は吾屯寺があるあたりは、チベット仏教画の「タンカ」の画家がたくさんいることで有名なところらしく、案内してくれた坊さんは漢字が読めないようでしたが、ちょっと英語が話せるみたいでした。アメリカ人やカナダ人がこんなところまで買い付けに来ると言っていました。部屋の中では画工が一生懸命に細密画を書いていました。これはカナダ人の注文だとのことで、完成したら送るのかと聞いたところ、取りに来るのだと言っていました。

  回教の方は都会(西寧)で大きなお寺を、小さな村では回教の高い塔をたくさん見ました。回教徒の村では、お葬式もちょっと見ました。回教は男性は白い帽子を、女性は黒っぽい緑色のベール(?)のような物を被っているので直ぐわかります。回族の女性は葬式に参加しないようでした。

  奇怪な山(カンブラー公園など)もたくさん見ました。行く先々に、荒々しく侵食された肌をした山があちこちにあって、旅行の第一日目、二、三、四日目、それから第六日目まで毎日そんな山が見えました。そんな山の襞の奥を辿って行くと、孟達天地という池がありました。そこに行くのにラバに乗って登りました。木が殆ど生えていない山の奥に、森に囲まれた神秘的な池がありました。綺麗な池は別の草原(桑科草原)にもありました。ランドクルーザーがその綺麗な池に突っ込んでいるのも見ました。全く危険ではない所なので、何故ここで事故を起こしたか不思議なのですが、あまりにも綺麗な景色に見とれたせいかもしれません。確かに鏡のような池に山が映る様子は綺麗でしたね。

  船にも乗りました。炳霊寺石窟を見物に行ったときのことです。

  黄河は青い黄河が黄色くなるまでを見ました。旅行の二日目は青く、三日目では黄色が少し混じり、五日目のダム湖(劉家峡ダム)では荒土が沈殿しているせいか、黄色ではなく、六日目の蘭州ではダムの“排砂”の影響で真黄色の濁流でした。

乗り物で一番利用したのはタクシーで、行く先々でタクシーをチャーターして乗り継いで行きました。ルートの半分は、あまり観光客が行かないところかもしれません。ある場所は秘境といってもいいかもしれません。道は青海省側では全部舗装されていましたが。甘粛に入ると舗装されていないところがあって、按摩器で揺すられている状態の所もありました。しかし総じてタクシーでの移動でしたから、そんなに疲れませんでした。

  私は体重が重いので、自らの体を自分で高いところに運びあげるのが一番疲れるんですが、孟達天地に登るときはラバに運んでもらったので疲れませんでした。それより一番疲れたのは、ラバに乗って山を下るときで、私が重いものですから、ラバの方も慎重になり、足元を確かめながらで、なかなか進まなかったり、私の方もラバからずり落ちないように足をつっぱったりして、ちょっと疲れました。勿論、ラバが疲れたのは登りの方だったでしょう。ラバが疲れて休み休みになりましたから。今回の旅行は二人で行ったのですが、連れの方は体が軽いものですから、登りも下りもすいすいと上り下りしていました。

  実はこの旅で一番、身構えたのは、山の上に行くとき、運転手から馬(実はラバだった)に乗ると言われたときです。私の体重が重いからか? 連れが馬に乗れるかという心配か? それもありましたが、以前、馬やかごなどの乗り物に乗ったとき、トラブルが起ったからです。雲助みたいなのがいて、最初に決めた金額を途中で吊り上げたりするからです。今回は金額は運転手が交渉してくれて、金は運転手から払うことに話を決めてくれました。しかしここでは、そんな心配をすることは全く必要無く、決めた通りの金額で済みました。ここがまだあまり人が行かない場所だからかなとも思いましたが、こんな重い体を運んでくれたロバには申し訳ないくらいの金額(たしか一人20元だったか、40元だったか)でした。

  田舎を走り回ったにもかかわらず、六泊のうち、四泊は都会の四つ星ホテルでした。食事は六回の晩飯のうち三回は、都会での夜店の屋台で食べました。こんなところで、ビールを飲みながらシシカバブーみたいなものを食べるのは、なかなか趣があってよろしいです。それにとても安いです。西寧の夜店はとても賑やかでした。そしてある晩は山奥でピザを、ある晩は羊のシャブシャブでした。もう一回は何を食べたか忘れました。昼は回族式の面などでした。回族地帯なのでこれは何回か食べました。例によって本格中華料理らしい物は食べませんでした。

  こんな所を旅行するとトイレが問題になりますが、実は今回の旅行の連れというのは女性なのですが、私は外で一回用を足しましたが、連れは外で用を足したことはありません。全て室内で用を足しました。ある村の回教寺院でトイレを借りた時に、女性が入っていったので、対応してくれた人は、ちょっと戸惑った様子が見えました。本来は女人禁制なのかなと思いました。少なくとも、回教寺院の本堂は女人禁制です。

  それはともかく、田舎のトイレでは、ドアもなく、下に落下物が堆積しているのが見える状態のところもありましたから、こんなのを見てキャーなんて悲鳴をあげるようではこの旅行には向きません。今回はそんなことはなく、夜店の屋台の食事にも腹具合が悪くなることもなく、軽々とラバにも乗り、雄大な景色に感激していたので、今回の旅行は連れにとってもよかったのでしょう。

  他にもいろいろな物を見てきました。骨董市場とか、私の趣味である新石器時代の土器(このあたりではたくさん出土する)の博物館だとか、民間の京劇のような物とかも見てきました。京劇のような劇は見るのはタダでした。ドサ周りの一座のような感じもしましたが、土地の芸人だったかもしれません。

  中国語は問題が無かったか? このあたりの中国語は全く別物です。しかしホテルやタクシーの運転手なら問題無し。屋台では、注文を指で指せばよく、“ビール”とか金額は通じるので問題なし。悪人や騙す人が居たか? そんな人には出会いませんでした。長距離で六日間タクシーを使いましたが、運転手にも問題がありませんでした。

  オヤッと思ったことは一回ありましたけれどね。一人のタクシー運転手は隣りの街まで言ってくれと、前日に頼んだところ、当日になって奥さんが便乗してきました。ホテルに迎えにきたときは、乗っていなかったのですが、臨夏と言う町まで行く前に、家に寄ると言ったので、私には何かピンときたのですが、ピンときた通りの結果になりました。以前もそう言うことがありました。大きな町まで行くので、便乗して買い物にでも行きたかったのでしょう。

  ほかに問題点は? 別に無かったですね。そういえば田舎のホテルでバスのお湯が出なかったのですが、翌日聞いてみたら、出るはずで、使い方が悪かったのではないかと言われました。翌日都会の豪華ホテルに泊まる予定だったので問題にはしませんでしたが。そうそう、回教徒地帯では、酒、タバコがダメなようです。この地区の回教徒は私の家の回りにいる回教徒より厳格なようです。しかしチベット族地帯や西寧や蘭州の都会の夜店では、屋台の親父が回族であっても、ビールが飲めました。しかも冷えていたかもしれません。田舎の町では酒はダメでした。おまけに隣のテーブルの女の子達から、思いっきりジロジロ眺められました。変わった動物が来たように思えたのかもしれません。

  タクシーを利用していいところは、トイレを探してくれたり、値段の交渉をしてくれたり、周囲の風景を説明してくれたりで、利点が多いのですが、ある運転手の説明はいい加減でしたね。峠を越えるときここの高さは何mかと聞いたら、こちらは何か胸苦しさを感じる高さなのに、「ここは高くない、1900m」との答え。これから下って行く夏河が2900mあるのだからおかしいと言ったら、それならここはもっと高いのだろうと言っていました。しかし観光用の運転手ではないので仕方が無いですね。そんことより、タクシーの最大の利点は、自由にタクシーを止めて写真が撮れることです。バスではこうは行きません。ではこのあたりを移動するのにバスは無いのか? カンブラー公園以外はバスで移動できます。しかし、バスではこれだけあちこち効率的に回ることは出来なかったでしょう。 ホテルは豪華ホテルと言っても、ネットで予約すると半額くらいになりますね。飛行機代も半額くらいで行けるはずなのですが、ゴールデンウイークにかかってあまり割り引き無し、残念でした。タクシー代は交渉する必要があります。