中国化すると美味しくなくなる

  今回は、美味しくないと言うグルメ情報です。美味しくないならグルメ情報ではないと言われそうですが、これもグルメ情報の一つだと思います。美味しくない所では食べなければいいわけですから。勿論美味しくないと言うのは、あくまで私の感想であるわけですから、間違っているかもしれません。しかし日本人であるなら、案外私の感覚が間違っていないと、同意していただけるかもしれません。その為には不味くても一度は試食してみる必要がありますが。

  それは北京の日本風のラーメンの話です。日本風のラーメンの話を書く前に中国のラーメンについて書きますが、中国のラーメンは元々美味しくないのです。その理由は、スープの味が薄い、そのスープが少ない、麺が軟らかいと言う三原則があるわけです。つゆが少ないというのは、元々、麺の上に具だけを載せて食べていた習慣があったのかもしれません。北京のジャージャー麺と言うのはそういう麺です。しかしこの麺はこれで結構美味しいです。私がこの麺を美味しいと思う理由は、麺に腰があることと、甘味噌の味で、味が結構濃い(自分で調節もできる)からです。

  日本のラーメンに腰があって、中国のラーメンが軟らかいのは、かん水が入っていないからです。中国のラーメンにかん水が入っていないなら、それはラーメンではないと言うご意見があるかもしれませんが、これもラーメンなのです。本来、手で引っ張って作るのがラーメンだからなのです。ラーメンのラーは拉と書く字で、引っ張ると言う意味です。なお、麺にかん水を加えて固くする方法の発祥地は中国であるらしいです。中国にラーメンがあると書きましたが、日本のラーメンのようなラーメンは無いようです。日本のラーメンは中国から来た物だから、日本より美味しいラーメンがあると思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。

  前置きが長くなりました。今、美味しくないと言っているのは、日本から逆に北京に進出したチエーン店がやっている店のラーメンです。当然日本の味を売り物にしている日本のラーメンです。それなのに美味しくないと言う理由は、つゆの味が薄いからです。その店の味はトンコツベースなのですが、何回食べて確認しても、塩気が足りないと思います。塩分を足せば美味くなるというものではないですが、とにかく味が薄いのです。

  日本の料理が中国に来て味が薄くなると言うのは、北京の吉野家の味噌汁も同じで、味が薄かったです。これは、あまり人気がなかったのか、今では販売中止になりました。中国人向けの回転寿司屋で、日本のラーメンを食べたことがありますが、つゆがとても薄くて、おまけに麺がやわらかになっていました。ここでは味噌汁も薄いです。実はここの回転寿司屋によく行くのですが、ラーメンや味噌汁は決して頼みません。

  スープ系の料理は中国化すると味が薄くなるようです。中国化すると言っても広東料理の本場の広州などではどうなのかわかりませんが。中国化すると味が薄くなるのは、元々中国のラーメンの味が薄いから、日本のラーメンが中国にくると、味が薄くなるのだと思います。中国料理の味が全般的に薄いのではなくて、スープ系とお粥系だけが味が薄いようです。レストランのスープはそうでもないですが、庶民が行く食堂ともなると、全く塩気が無いスープが出ます。「卵スープ」なんて言って頼むと、塩、醤油のような物が一切入っていないスープが出てきます。有名な北京ダック屋の鴨のスープも味が薄いですね。

  コーンスープの素として売っている粉末は、スープにして飲むとこくがあって美味しいですが、普通のトウモロコシのスープは味が無いです。コーンスープから塩気を完全に抜いたような味で美味しくありません。もっともこれはスープではなくて、お粥の範疇かもしれません。お粥と言うと、北京辺りでは米のお粥は少なくて、雑穀が多いです。小米(粟のこと)のお粥が多いですが、とにかくどんなお粥でも塩味は全く無し。お粥専門店でなら、いろいろな味のお粥がありますが、甘いお粥の方が多いような気がします。日本には米の食べ方として味噌味とか、醤油味がついたオジヤや雑炊がありますが、中国にはこのような味が付いた物は無いようです。話は飛びますが社員食堂では、中国人は、ご飯と、餡の無いの無いマントウと、雑穀から作る粥を同時に食べたり飲んだりしています。主食または主食に近いものを、なん種類か同時に食べるようです。

  なお、このチェーン店は日本人の為の店ではありません。中国人の為に中国化した店です。日本式ラーメンを標準としてみれば、ここの麺は、硬さを保っているだけまだましで、それほど中国化されていません。美味しくないと言っているのは、日本人にとっては美味しくないでしょうと言っているので、中国人にとっては美味しいのだと思います。事実、このチェーン店のラーメンは、中国のラーメンなどより値段が二倍もするのに流行っています。味は中国人の口に合わせてあるのだと思われます。北京には日本人向けのラーメン屋がありますから、そこへ行って食べれば、日本人の口に合うラーメンが食べられるでしょう。でも私の家の近くにはそう言った店が無いし、そのチェーン店は便利なところにあるし、麺自体は固さがあるし、中国のラーメンよりはずっと美味しいし、ラーメンが好きで食べたいしで、ぶつぶつ言いながらも時々はそこに行きます。

  北京の吉野家の味噌汁は味が薄すぎて、私には美味しいとは思えませんでしたが、それが吉野屋から消えたのは、中国人にとっては濃すぎたせいかもしれません。

  では、中国でイタリーミェン(面)と呼ばれるスパゲッティーは、中国化するとどうなるでしょう。そうです。見事に軟らかくなります。十分に茹でられてぶつぶつ切れて、フォークにもひっかかなくなります。当然巻き付けることも出来なくなります。箸で食べれば、これこそ箸にも棒にも掛からない状態で出てきます。これもまた美味しくないです。北京で腰のあるスパゲッティーを食べたければ、中国人向けの店ではない、純正のイタリア料理店に行くのがいいかもしれません。

  話がややこしくなったかもしれませんが、
@ 中国にはラーメンと言われているが、日本のとは違ってかん水が入っていない軟らかいラーメンが、中国には元からある
A 中国には日本から逆輸入されたラーメンがあるが、中国人の為に中国化されてスープが薄く、軟らかくなってしまった麺がある。
B 経済交流が盛んなので、日本人のための日本発祥の純粋日本ラーメンもある、

と言うのが私の観察です。