ブログ風日記はグルメ情報で

  再びブログ風に日記を書こうと思った。日本から持って来た雑誌を見ていたら、“ブログも食い物ばかり”と言うコメントが載っていた。そうだ、ブログ風に日記を書くならば、食い物の話を書かねばならない。書かねばならないと言うことはないけれど、今までの日記の話題にグルメ情報が無かった。折角北京に居るのだから、北京のグルメ情報を書いた方がいい。料理の写真を貼り付ければもっとそれらしくなる。しかしいまさら北京のグルメ情報と言っても・・・・、まだ紹介されていない北京のレストランと言えば・・・・、あるにはあるが、例えばわが街牛街の回教スーパーの上にある食堂は、ユニークであってそこで食べる羊の串焼きやウイグルの麺(拉条子)は、シルクロードの香(どんな香?)がして、おまけにとても安いのだけれど、グルメの店として紹介するわけにはいかない。

  誰でも書くというグルメ情報を日記に書かなかったのは、グルメの店に行っていないからだろうと言われそうだが、確かにグルメの店にそんなには行っていない。しかし行ったことはある。魚釣台の迎賓館で食事をしたことがある。魚釣台賓館(ホテル)の方ではなくて、国賓などに使われる魚釣台の方である。日本人がめったに行かないところなので、紹介する価値はあるかもしれないが、いまさらそれを紹介してみてもかなり以前のことだから状況は変わっているかもしれない。以前の値段は一人一万円チョッとであったが、今はえらく高くなってしまっているらしい。

  美味しいグルメの店として紹介したいところは、「お馬鹿な象さん」(大笨象西餐庁)という店である。中国語を日本語に訳せばそうなるのだと思う。読み方はダーベンシャンである。笨と言う字は、間抜けなという意味である。英語では「エレファント」と言う名前がついていて単に象のことである。ロシア語ではなんと言う意味の店なんだろう。ここはロシア料理の店である。ロシア料理の店だからと言ってロシア人が多いとは限らないが(先日行ったウクライナ料理の店は中国人ばかりだった)、ここは本当にロシア人が多い。昼間に行くと大部分がロシア人である。その理由はロシア人街の真中にあるからである。場所は雅宝路にある。雅宝路(ヤーボールウ)と言えばロシア人の街なのである。

  それならば、雅宝路はロシア人街として北京で有名であるか? 多くの北京人に取ってはそうではないかもしれない。雅宝路が特にニュースになるわけでもないし、この街の宣伝があるわけでもないからである。実は雅宝路に新しい大きなビルが出来たりして、宣伝もしているのだが、その相手はロシア人だけである。高価な毛皮のコートを売る店がずらりと並んでいるが、買い手として、中国人がここに足を踏み入れることは決して無い。輸出用の商品だからである。勿論日本人もこの街に足を踏み入れることは殆どないと思う。だから珍しいと言う意味では、「お馬鹿な象さん」の店に行ってみる価値はある。

  しかしこの辺りの様子は雑然としている。ここで働いている中国人は多いのだが、ここではロシア語が話せないとダメなのである。雅宝路は北京で一番人力三輪車が多いところかもしれない。この人力三輪車は違法である。そして車夫は殆ど正規の職業には就けない出稼ぎの人だと思う。その車夫でも「ハラショー」とぐらいは言えるようである。雅宝路には中国の品物を求めて多勢のロシア人が集まり、そのロシア人の周りに人力三輪自転車が群がるのである。しかしロシア人の便宜のためだろうか、当局はこの違法の三輪車を取り締まらない。そんなことで雅宝路は人力三輪自転車で溢れていて、雑然としているのである。

  ブログ風日記だから、食い物が美味しいとか不味いとか書かなければならない。ここ「お馬鹿な象さん」の料理は安くて美味しいのである。この店のお奨めは・・・・、と書くにはメニューを見て、食べ比べるとかして紹介すべきだと思うが、メニューはロシア語なのである。中国語でも書いてあるが、それが西洋料理の何に当るのか分からないので、「食べ放題」にしてみた。結果的にはこれが良かったのだが、ここではロシア料理の食べ放題がいい。

  西洋料理だから「食べ放題」ではなくて、「ビュッフェ形式」と言ったほうがいいのかもしれない。中国語では自助餐と言うようである。ここには注文形式とビュッフェ形式があるが、ビュッフェの方がいろいろ食べられてお徳である。やはりメニューを見て注文するのではなく、目で確認出来るところがいい。値段はビール、ウオッカ、珈琲の飲み放題で68元(1000円とチョッと)なので決して高くない。いや、この味でこの種類でアルコール付ならば安い。

  グルメの店としての紹介だから値段より味が肝心である。その味は安心して食べられる西洋料理といった感じで美味しい。ロシア料理の味の特徴など、よく知らないのだが、日本人向けに作ったといわれても違和感がない味である。中国料理の馬鹿馬鹿しいほどのような刺激的な味などは無い。本物のロシア料理かどうかは分からないのだが、ロシア人が大勢来るのだから、これが本来のロシア料理の味なのだろう。私が一番美味しいと思ったのはサラダとボルシチ(赤カブのスープ)である。赤いのはトマトでなくてビーツだと思う。甘かったから。ボルシチを飲んだらローリエの葉っぱの切れ端が口に残ったが、これが入っているので、さすがに西洋料理だと思った。これぐらいのことで、「さすがに」なんて思うのは日ごろ、西洋料理に飢えているからかもしれない。確かに西洋料なのだけれど、そんなに西洋料理っぽくない。西洋料理っぽくないという事は、チーズ類がすくなということか。自分でもよく分からないのだが。

  サラダにもビーツを細く刻んでマヨネーズでまぶしたサラダがあった。これも甘くて美味しかった。ビーツ(赤カブ)の甘さかもしれない。サラダの種類はこの他にもいろいろある。鮭のフレーク入りとか、勿論ポテトサラダも、キャベツのサラダもあってどれも美味い。サラダと言っても野菜を洗って切っただけのものではない。ここのレストランに行くのはサラダが目的のようになってしまって、サラダを優先的に食べるので、他の料理が食べられない。

  暖かい料理もいろいろある。ピロシキなのかペルメーニェというロシア餃子なのかがあった。ロシアのピロシキというのは揚げるとは限らないらしい。だから大きい餃子なのか、ピロシキなのか区別できないのである。名前のことよりは、まず食べてみたいのだが、食べ放題なのにまだ食べていないのは残念なことである。他にはロールキャベツとかピーマンの肉積めとかそんな料理が多くて、なんか家庭料理と言った感じがした。

  このロシア料理の店に行ってから思い出したのだが、魚の卵のイクラはロシア語でもイクラーというのである。そう言う位だからビュッフェの中にイクラがあるのかと期待したが、無かった。生の鮭のスライスしたものや、大きい海老の茹でたのはあった。海老はロシア料理なのかどうか分からないが、ロシア人がこれを皿一杯に取ってきて食べていた。あれだけ食べれば元が採れるだろうと思うくらい海老を平らげていた。ロシアでは珍しいのかもしれない。

  ロシア人といえばウオッカである。ロシア人のお姉さんが小さいグラスで,ウオッカを口に放り込むようにして飲んでいたりする。飲み放題だから、わたしもの飲むのだが、わたしの場合は直ぐ顔が赤くなるので、それがなんか場違いのような気もする。彼らは顔色一つ変えずに、ウオッカを放り込むところが私と全然違う。

  ここは殆ど日本人が行かない所である。そのはずであるのだがつい最近行った時、外国語の響きの中から、突然良く分かる言葉が飛び出してきてビックリした。わたしの名前が呼ばれたからである。我が社のお客さんにあたる人が来ていて会食をしていた。そう言えばその人はお洒落な店が好きそうな人である。と言うことは私もお洒落な店が好きということか? この店がお洒落な店かどうかは別として、日本人が殆ど行かない店であることは確かである。

  私はそこへ何回か続けていったので、従業員の一人は、又一人で来たのね、なんて言っていた。何故私のことを記憶しているのだろう。一人で来るからだろうか、ロシア人ではないからなのだろうか。頭の毛が少ないからだろうか、多分老人だったからかもしれない。中国では老人は決してレストランに一人では来ないのである。

  ここにはロシア美人のショーもある。このショーは夜9時頃と12時頃である。このションーの時間を見れば、このレストランが中国人の為のものではないことがハッキリ分かる。中国人がレストランに行く時間は早くて、9時頃はもう帰宅の時間なのである。先回行ってみたら、そのショーの内容が変っていた。文化大革命の頃の紅衛兵が、文化人を“反動だ”と言って酷い迫害を加える様子を外国人がダンスにして踊っていた。中国文化への皮肉の様に思えたが、中国人の観客はどう見たのだろう。日本兵が毎日お馬鹿な残額行為をしているのを、中国ドラマで見ている者としては、この点はおおいに興味がある点である。その演目の変更などについては、入り口のところに書いてあったのかもしれないが、ロシア語で書かれているから、何のことだかさっぱり分からなかった。

  「大ベン象西餐庁」の場所は、雅宝路から更に一本北へ入らなければならないから、分かり難いかもしれない。分からなければ雅宝路の三輪車の車夫に、「ダーベンシャン」(お馬鹿な象さん)と言えば教えてくれるかもしれない。三輪車に乗って行ってもいい。その場合の料金は、既に「ダーベンシャン」の近くに来ているはずだから、10元と言うかもしれないが5元でいいはずである。料金の交渉は乗る前に決めないとトラブルになる。最初に料金を交渉するのが、中国での常識である。