北京は芸術の季節

  実は今の北京は、芸術の季節でもあります。言い換えれば、他の季節は、日本のようには音楽会などあまり無いと言うことですが、しかし今の季節だけは、音楽会とか外国からの公演とか、ロシアからのバレーなどが多いです。これは例年のことで、年末、クリスマス、新年、それから中国の正月である春節にかけてです。

  妻が北京に来ていたので、あちこち連れて行きましたが、やはり芸術も鑑賞しなけばと、中国の東方歌舞団の公演に一緒に行きました。流石に中国を代表する歌舞団ですから踊りがとてもよかったです。ほんとに素晴らしかったです。世界のいろいろの国の踊り、例えばアイリッシュダンスとか、アルゼンチンタンゴとか、インドの踊りとタイの踊りとか、太鼓を叩きながら踊る朝鮮の踊りともありました。衣装も照明も装置とかも奇麗でした。それに皆美人です。みんなすらりとしてスタイルのいい人ばかりです。何もかもが奇麗なんですが、そういう奇麗な中で、踊の動作がピタット決まると、気持ちまでスカッとするような踊りでした。

  歌舞団ですから歌もあるんですが、私にとっては踊りの方がよかったです。歌はやはり中国人向けの歌が多いですから。妻が、この歌い方は、中国の北島三郎だ! と言っていましたが、その歌手に中国人観衆は熱狂していました。私達には熱狂するほどの事もなかったです。中国人達は踊りにはあまり盛大な拍手をしないところを見ると、踊りより歌のほうがいいらしいです。

  オペラ歌手風のテナーの人も歌っていましたが、やはりなんか艶がない。この理由は、中国人の男性歌手は「愛国」の歌を沢山歌うからかもしれません。この説は当っているかもしれません。イタリヤ人の歌手は「我が太陽」を歌うかもしれませんが、「我が国は素晴らしい」なんて愛国の歌を歌わないでしょう。そう言えば年末には三大テナーの一人ババロッティーの引退記念音楽会と言うのが北京でもありました。とても高かったので行きませんでした、艶があると言う声はババロッティーのような声の事です。ババロッティーが中国の愛国の歌を歌ったとしらた中国人は泣いて喜ぶでしょうけれど、ババロッティーがああいう非芸術的な歌を歌うはずはないですね。

  私は何時も音楽会のチケットなどは、ダフ屋から買います。今回はいい席が無くて、二階の200元の席しかなかったのですが、150元に値切って買いました。ダフ屋から安く買うのは駆け引きがいります。二階の席は全体がよく見えて意外とよかったです。

  オペラ歌手風の人たちが歌ってくれた、ロシアかウクライナの歌もよかったです。これは公演ではなくて、ウクライナ料理のレストランの事なんですが、ここではオペラ歌手風の人達が8人もで歌を歌ってくれます。ほかにアコーデオン伴奏の人が一人か二人いました。歌ってくれる人はウクライナ人かロシア人か? とにかく腹回りがでかい。女性は顔は小さいですが、やはり豊かな感じ(体が)です。当然ロシア民謡は得意のようで、「ボルガの舟歌」をリクエストした人の前で歌っていました。私は「赤いサラファン」という歌をリクエストしましたが、伝わらなかったのか、歌えないのか歌ってくれなかったです。今度また、リクエストに挑戦してみます。こちらが歌ってみせれば伝わるでしょう。

  リクエストすると、目の前まで来て歌ってくれます。歌の半分以上は聞いたことのある歌なのがいいです。歌うのを惜しまないで歌ってくれるのもいいです。民族服を着て歌い、タキシードとかドレスに着替えて歌い、最後には軍服姿になって歌っていました。歌が好きな人なら、たまらなく楽しいところです。

  妻とは他にも雑技(常設劇場)とかチベットの踊り(チベット料理のレストラン)を見に行きました。北京には結構こう言うところがあります。実はタイ料理の店にも行って、そこでもダンスがありましたが、そこにはタイ人はいなくて、なぜか陽気なフィリピン人のウエイターとウエイトレスがいて、バンブーダンスなんかも踊ります。しかしフィリピン人のウエイターと言うのはなんか怪しい感じで・・・・ オカマッぽいというか、なよなよしているというか・・・・ 面白い所ではありますが、これを北京の芸術の一つとして紹介するに相応しくないかもしれません。

  ウクライナ料理の歌と、チベット料理のレストランでの踊りの様子は、ホームページに載せましたので暇と関心がある方はご覧ください。声をお伝えできないのが残念です。本当は東方歌舞団の公演の写真を撮りたかったのですが、ここは撮影ができないのが残念でした。東方歌舞団は一年に一回位は見ているので、以前の写真がホームページにありますので、暇がある方は見てください。

  本当は北京の芸術的な公演の様子をもっとお伝えしたかったですが、他には音楽会の公演にも行かなかったので、北京のレストランシアターの案内のようになってしまいました。

  最後に北京には決して行ってはならないレジャーセンターみたいなところがあることも付け加えておきます。そこはかっての船橋レジャーセンターのように舞台があって、そこで中国の流行歌を歌うわけです。食事がビュッフェ形式と言うのが新しい感覚と言ったところでしょうか。それに人工の青々とした椰子の木が茂っていました。中に入ったら勝手に食べ物を取ってたべていると、そのうち歌と踊りが始まると言うところでした。

  そこにはクリスマスのイブの日に、ある中国人が連れて行ってくれたのですが、決して行ってはならないレストランという理由は、その音響設備にありました。エコーが効き過ぎているというのか、ハウリングを起こしていると言うのか、とにかく大音響で意味が全くわからないまでにデフォルメされた音響が響くのです。音が伸び過ぎて全体がワーンとうなっている感じ。

  今でもその音を思い出すと耳の中でその音がガンガン鳴って、鼓膜が破れそうです。こんな非音楽的な音響を何故喜んで聞くのか、私には全く理解が出来ませんでした。しかし私には全く聞き取れない言葉でも、中国人達には聞き取れるらしく、司会者の言葉に相槌を打って喜んでいました。

  クリスマスのイブに一人で過ごすのは寂しかろうと、私と別の日本人がそこに連れて行ってもらったのですが、ビールも冷えていなし、料理も美味くないし、本当は直ぐにでも帰りたかったのです。しかし相手の面子もあるので、お付き合いで騒音を聞かされる羽目になってしましました。

  それにしても解らないのは、騒音にも勝る酷い音であるのに、何故中国人がこれを聞いて喜ぶのか? これは謎です。もしかしたら彼らが育った頃に、右翼の街頭宣伝のような騒音を毎日聞いていたのか、商店街の割れたスピーカーの音を聞きながら育ったのか、あれは普通なら酷い騒音に間違いないのですが、何故なのかやはり疑問として残りました。

  もし、皆さんが北京に来られたら、中国人が只で連れて行ってくれるといったも、こう言う処には行かず、もっと芸術的な処に行ってください。ここには書きませんでしたが、奇麗なウイグル美人が踊るレストランもありますし、モンゴルの婚礼をテーマにしたレストランシアターや唐の時代の飛天(天女)をテーマにしたシアターも、ロシア美人が踊る店も、かっての日劇のレビューのようなものを踊る店もありますので。中国のものが好きでしたら京劇や変臉などもやる店もあります。