はるか昔のこと、私が幼い子供であった頃、トイレに入って紙が無いことに気が付くと、「紙が無い!」と叫ぶと、母親が紙を持ってきてくれた。今の状況はトイレの中からでないのだけれど、若い中国人の女性が紙が無いと言っている。

  中国のトイレには、大体紙が置いていない。必要なときは自分で持っていく。その紙を持って行くとき、ロールからちぎってガバッとわしづかみにして持っていくものだから、女性であってもどこに行くのかがよく分かる。ガバッと言っても大量の紙を持っていくわけではないのだが、それが(私にとっては)目立つものだから、ガバッと鷲づかみに持って行く感じに見えるのである。

  私がいる会社は、規模が大きくなって、私がいる部署が別のフロアーに移った。そうなると別の会社との雑居状態になったので、トイレの紙をトレイの近くに置いておくわけには行かない。他の会社の者に、紙を勝手に持っていかれてしまうからである。それでトイレットペーパーはドアの近くに置いて、我が社の者がロールペーパーからちぎって(当然一回分である)持っていけるようにした。しかし使い切って補充されていないときがある。

  「紙が無い」と言って騒いでいる若い女性は、別に私に対して「紙が無いから補充してくれ」といっているわけではないが、「紙が無い」程度の中国語なら私でも分かる。言っていることが分かったので、何とかしてあげたほうがいいかな、と思って、多めのティッシュペーパー(日本で無料で配られるようなもの)をあげたのである。

  用を足して帰ってきた○さんは、「ありがとう」と言って残りの紙を返してきた。私はそれを受け取りたくないから、「あげたのだからもういらない」と言って受けとらなかった。この○さんは、私がいる会社の品質管理部門の長である。私がいる会社は社員の平均年齢が27,8才で、日本の会社からく比べれば、とても社員が若いのである。それで○さんも若くして品質管理部門の長をやっている。

  数えたことはないが、○さんが一日何回トイレに行くか数えられる。こんなことが気になるのは、私が日本人だからなのだろうか。中国人は全く気にならないのだろうか。中国では、こんなことが気になってしまう私の方がおかしいのかもしれない。
  
紙が無い!