中国の国慶節の7連休に、丸々7日間の旅行をして来たが、やっぱり中国の旅での一人での食事は不便である。何年も中国にいて、未だに慣れないのかと言われそうだが、確かにそうなのである。前にも同じようなことを書いたが、中国もWTOに加入したのだから、この辺のことは何とかならないものだろうか。マクドナルドとか、西洋料理屋とかが進出してきたので、前よりは少し良くなったけれど。

  始めに行った揚州で、昼飯を食べようと思って、どうせなら有名な店に入ろうと思って、ガイドブックに載っている店に行ってみた。店を外から覗くと、テーブルは中国に特有な丸い大きなテーブルだけがあった。10人も掛けられるテーブルの一角に一人で座るのは憚られて、美味しいと言われる料理を食べるのは諦めてしまった。この中国の大きなテーブルは、一人とか二人とかで入ってきた人が座るところではなく、多人数用なのである。テーブルの形からして一人の客を拒否している。二人用のテーブルなども無かった。

  揚州のホテルは朝食付きのホテルだったのだが、食堂に行ってみたら、主食がマントウだった。これは日本人の私には食べられない。中味がある肉まんならまだしも、小麦粉を膨らませて蒸しただけのマントウでは、どうも口に合わない。小麦粉製品でもパンなら食べられるがパンも無い。それで麺を作って貰ったが、それが大きなどんぶりになんと4人前の量があった。これにはビックリした。三人前くらいはよくあるが、今回は4人前くらいである。これには何年も中国にいてもビックリした。当然、4分の3は残してしまった。客が一人なのに何故4人前の料理を作るのだろう。それに私は、中国では中国の麺を注文しない。中国の麺は柔らかすぎて、スープも味が薄いので美味しくないからである。日本のラーメンが美味しいから中国の麺も美味しいかと思うととんでもない。中国の麺は美味くないのである。仕方が無く麺を頼んだのだが、揚州の麺は中国の平均的な麺よりは腰があって、味も濃く汁も美味しかった。しかしなんとしても量が多すぎた。

  一人旅であるから、西洋料理の店があれば、一人分の料理と席があって便利であるから、どうしてもそこに入りたくなる。揚州とか鎮江には、上島珈琲と言う店があったのでそこに入った。この店は北京の店でも感じが良くて、本格的コーヒーを出す。ここでオニオンリングをつまみながらビールを飲み、それからスパゲッティーでも食べようかと思った。ところがオニオンリングが山のように出てきた。玉ねぎの輪に、膨らし粉をたっぷり使った衣が付いていて着膨れていて、かなりの量になっているのである。どうも西洋料理も中国化すると大量化するらしい。スパゲッティーを注文しないで良かった、と思い、コーヒーを頼んで終わりにした。

  スパゲッティーは、その次にそこに行ったとき改めて注文して食べた。

  揚州で、人力三輪車に乗って、レストランが沢山あるところに行ってくれるように頼んだ。本当はそこで韓国料理でも食べようと思ったが、三輪車の運転手は、ここの揚州料理が美味いなんて言って、勝手に揚州料理屋に連れて行かれた。見たところ高くはなく庶民的で一人で座れる席もあったので、そこに入ることにした。しかしいつものことであるが、メニューを見ても料理の内容がよく分からない。高級料理店であるほど、料理に勝手な名前を付けるからである。たまたま、北京の会社の前に江南料理の店があって、そこで食べたのと同じ料理の名前があった。それは「○○獅子頭」という名前であって、獅子頭とは大き目の肉団子であることを知っていた。しかもこれは一個だけで頼めることも知っていたので、無駄が出ないからこれを注文した。注文が肉団子だけとはいかないので、揚州の名物という料理をもう一つ頼んだ。これも前の店で食べたことのある料理だったが、やはり量が多くこれは半分ぐらい残してしまった。やはり主食を注文しないでよかった。肉団子を一個だけ注文できるなんてのは、中国では珍しいことである。中国料理は一人分という概念が無く、量が多ければ、“好”とする料理(特に東北料理)が多い。ツアーでない旅行者には困ったことである。

  揚州で二泊、鎮江で二泊、南京で二箔したのだが、上島コーヒー店には揚州で二回、鎮江で二回も行った。やっぱり西洋料理には一人分の料理があるから便利である。

  その他の西洋料理にも行って西洋料理を注文した。西洋料理と言っても、サンドイッチである。ところがここのサンドイッチは硬いパンの耳がしっかり付いて、おまけにハムの味が、なんか中華味がする。日本で言う中華味と違う味である。日本で言う中華味は所謂アミノ酸の味であるが、本場の中華味は中国香料の味、多分、八角の味かもしれにない。やはり中国式中華味のするハムサンドイッチはいただけない。これも中国化の一種かもしれない。

  やはりたまには中華料理も食べたほうがいいかと思って、南京の浅草みたいなところで、南京料理屋に入ってみた。しかしやはり何が美味いか分からないので、例の獅子頭の肉団子と、もう一つ別の料理を頼んだ。その別の料理は外れであった。やはり中国料理は予想と違うものが出てくる場合があるから困る。注文するときに、料理の内容が把握できていないからである。ところで中国人でも、別の地方に行って地方料理を注文するとき、料理の内容をしっかりと把握しているのだろうか。私ほどではないにしても、中国人もしっかりとは把握できないのではないだろうか。一般に中国人は料理を注文するとき、これはどんな料理かとしつっこく質問している(高級料理店の場合)。

  南京には桂花鶏という名物があると聞いていた。丁度旅行したときは、金木犀が真っ盛りだった。あれは金色ではなかったから銀木犀と言うのかもしれない。それで桂花鶏という料理の名前を思い出したのだが、それを注文しようかと思った。しかしその料理はもしかして骨付き料理ではないだろうかと思って止めてしまった。中国の地方に行ってここの名物は何かと聞くと、地鶏が美味いと言う答えがとても多い。その料理の殆どが鶏の骨付きぶつ切り料理である。中国の料理は牛にしても豚にしても、羊にしても、骨付きぶつ切り料理が多いのだが、私の偏見ではどうも骨付き料理は洗練された料理とは思えない。骨付き料理と言っても骨を叩き切ったという感じの切り方である。中国料理は魚にしても、骨を外してなくて骨が付入ったままの料理である。中国人から見れば生の魚(刺身)を食べるほうが野蛮と思えるかもしられないが、私には生であっても骨をちゃんと取った料理の方が洗練された料理に思える。鶏の骨が歯に当って、欠けてしまっては困ると思って、それは注文しないことにした。

  中国料理でも、軽食の店とか食堂でなら、ハッキリと分かる料理の名前が書かれているから、その点は街の食堂のほうがいい。それに安い。それで鎮江では汚い食堂に入って、チャーハンを頼んだ。このあたりのチャーハンは中国では揚州チャーハンと言って有名なのである。本当は揚州で食べた方がよかったのかもしれない。隣りの街で食べたせいでもないと思うが、あまり美味しくなかった。やはり日本のチャーハンの方が数倍美味い。

  中国のチャーハンが美味しくない理由はハッキリしている。塩気が少ないのとタマネギが入っていないからである。塩っぱければいいと言うものでもないが、たっぷり油でだけ味付けしたチャーハンと言うのも美味しくない。いや不味い。中国料理の主食に塩気が少ないのは何故だろう。麺の汁も味が水みたいである。中国料理のスープにも塩気が全く無いものがある。塩気の無いスープも不味い。中国には炊き込み御飯みたいに主食に味を付けたものが少ない。ご飯にチョッと薄味を付けると美味しいのにと思うのだが。中国のチャーハンは卵と油をたっぷり使えば美味しいはずだ、というような料理だった。日本で売っている中華味の素を振り入れるとずっと美味しくなるのだが。


  南京ではレストラン広場みたいなところができていて、そこにはいろいろな料理があった。ここでも一人では入りにくい中国料理は避けて、韓国料理屋とか日本料理屋とかにも入った。日本料理屋では、フライの盛り合わせを頼んだが、やはり中国化しているせいかやはり量が山盛りであった。中国人向けには、皿にチョコッと盛り付けるだけでは満足しないのかもしれない。それはいいとしてもキムチを頼んだが小皿に、一寸しか載ってなくて10元(140円)もした。このキムチは中国の辛いだけのキムチよりずっと美味しかったが、なんとしても量が少ない。日本でならこういう盛り付け方はある。しかしここ中国で、しかも別の料理は皿に山盛りなのに、キムチは一寸しかなくて、10元もしたのでは、この店は流行らないのではないかと思った。

  タイ料理の店にも入った。春巻きはメニューを見て分かったからこれを注文した。もう一つの料理も、良く漢字を見て注文した積もりなのだが失敗した。味の方は酸っぱくて辛いと書かれていて、そのとおりだったが、材料はナマコだった。私はナマコと言う漢字を知っていて見落とすはずはないのにと思ったが、料理はコリコリとしたナマコだった。

  一人旅の食事にはマクドナルドがいい。ケンタッキーでもいい。吉野屋の牛丼でもいいい。中国の旅なのだから美味しい中国料理を食べたいという人には、一人旅は向かい。しかしあのあたりには吉野屋は無かった。ケンタッキーは? 有ったかもしれない。しかし中国の旅先でハンバーガーを食べ気にはなれなかった。

やっぱり一人旅の食事は不便