私がいるビルにはエレベーターおばさんがいることは書いたかもしれない。会社の美人の女部長から、おばさんがエレベーターを運転しているのでは、高級マンションではないわね、といわれてしまった。彼女は保安が入り口でチェックしている高級マンションに住んでいるのである。ところで何故エレベーターおばさんが、エレベーターの操作をしなければならないのか。これは平均的な日本人として是非誰かに聞いてみなければならない疑問である。日本にはこんな方式は無いし、エレベーターの操作は子供でもできるのだから。

  この理由について周りの人に聞いてみたところ、大方の平均的な回答は失業対策だろうという見方が多かった。北京あたりでも女性であれば50歳で退職になる人が多いのである。更に、この問題について会社の人事担当のおばさんに、改めて聞いてみたところ失業対策の為ばかりでなさそうであった。

  こっちのおばさんは本当はまだ若くて、子供が4,5歳の若奥さんなのであるが、なんだかおばさんぽい。しかし世情にはかなり良く通じている。そのおばさんの解説に寄れば、最近の高級マンションには多くの守衛がいて安全であるが、エレベーターおばさんがいるビルには守衛(保安という)がいなくて、安全上問題があるから、おばさん必要なのだと言う。確かに私が住んでいるビルにはエレベーターおばさんは居るが保安はいない。

  当社の方のおばさんの解説によれば、高級マンションでは、緊急の際にエレベーターの中の電話が、保安に通じているが、エレベーターおばさんタイプのビルでは、それが無くて、エレベーターおばさんがその代役なのだそうである。つまり緊急の場合はエレベーターおばさんが何としてくれるということらしい。

  もう一つのエレベーターおばさんの役割は、エレベーターに過重な負荷が掛かるのを防いでいるのだそうである。ではどんな場合に過重の負荷が掛かるのか。誰でも思いつくのは、一度に大勢の人が乗り込む場合である。でもこんなことは、重量センサーをつけて、アラームを鳴らすことで防げないのだろうか。

  過重負荷に成る原因はもう一つあるらしい。それはエレベーターに過重な建築材料や、家具を持ち込む可能性があるからであるとか。新しいビルでは引越しが頻繁にあることも予想されるが、もう一つの中国的事情と言えば、新しい家の場合、内装は買い主が行うものなのである。内装をすると言っても元からある壁をぶち抜くこともあるし、床の土間を高級化してタイルを敷き詰める家も多いから、大量の建材、廃材を出し入れするのである。エレベーターおばさんはこれらを監視していて、エレベーターに過重の負荷が掛かるのを防いでいるのだそうである。

  確かにエレベーターが過重積載になれば危険である。このようにエレベーターおばさんにはちゃんと役割があって、ただ漫然と行き先のボタンを押しているだけではなく、エレベーターの安全を司る役割があるのだそうである。

  でも、緊急の場合、エレベーターおばさんで対応できるのであろうか。もっと心配なのは、エレベーターおばさんが居ない時もあることである。そのときは自分でエレベーターを操作することになる。エレベーターの操作ぐらいはできるが、安全を担っているおばさんがいないとき、誰が安全を担うのか。建材を大量に乗せることは無いのだろうか。そういえば過重積載の警告アラームが鳴ったのを聞いた事が無い。もしかしたら、アラームが無くて、おばさんがアラームの代行していたのかもしれない。

  エレべ−ターおばさんなんかいなくても、自分で操作できるからいいと思っていたけれど、会社の方のおばさんの話を聞いたら、なんだか怖くなってきた。エレベーターの積載制限を無視して建材を持ち込む人がいるかもしれない。何しろ住民の中にはエレべ−ターの中に自転車を持ち込む人なら大勢いるのだから。それになんだか住民の民度も低いようでもある。

  最近、ビルの入り口の壁に、上の階からごみを捨てるなと言う、下の階の住民のお願いの張り紙がしてあった。それくらいだから、おばさんが居ない時、積載オーバーになるまで、荷物を積み込むことがあるかもしれない。チョッと心配である。

エレベーターおばさん