ここ牛街に越してきてから、時々変な音が聞こえる。ビール瓶を横から吹いたような音で、風をきる音がする。夜はその音がしないようで、朝早くからその音が聞こえるときもある。その音の理由にやっと気が付いた、その音がするとき、窓の外を鳩が飛んでいるのである。

  それは、どうもは鳩笛であるらしいことが分かった。日本で鳩笛と言うと、鳩の形とか鳥の形をして、それを吹くと鳥の声に似た音がするものであるが、中国の鳩笛はそれと違って、呼子である。中国のは「鴿哨」と書く。「鴿」は鳩のことで、「哨」は呼子のことだそうである。鳩の体のどこかに呼子を括り付けて、鳩が飛ぶとき、呼子に風が当り、音がでるらしい。ボ〜っというような音が出る。

  今度越してきたところは高層ビルの9階なので、目の前を鳩が飛んでいく。するとその音が聞こえるので、鳩につけた笛が鳴っていることが分かった。北京人には結構、ハト好きが多くてハトを飼っている人が結構多い。集合住宅にいても鳩を飼っている人がいる。どうしてそんなことができるか? このことは既に書いたが、ベランダの外に大きなハト小屋を張り出して作って、そこで飼っているのである。多分違法であるにも関わらず、飼うのである。まあ、ここは中国であるから、違法であっても飼えるのだろう。

  違法かどうかと言う事より、ハトを飼う事を、趣味としてみれば、なかなかよい趣味であるとも言える。ハトにハト笛を括り付けて、その音を楽しむなんてしゃれた楽しみ方だと思う。その音も、なんだか哀愁を感じさせる音で、なかなかいい音である。

  北京人の趣味には、このほかにも小鳥を飼って、外に連れて行き、鳴き比べをさせるとか、凧揚げとかがある。これらはいずれも子供の遊びではなく、大の大人の男の遊びである。北京では大人が夢中になって、何百メールもの高い空に凧を揚げている。

鳩笛の音が聞こえる