ダフ屋からチケットを買おうとしたとしたときのことである。チケットを半値ぐらいで買おうと思って、数人のダフ屋に囲まれた中で交渉をしていたら、別のダフ屋が割り込んできて、何にか言った。それに答える形で、前からいるダフ屋は、私のことをアメリカ人だと説明しているのである。何回も言っていてから、私は確かにアメリカ人であるらしい。真っ暗がりでもないのだから、私の顔は鼻が高くもないことは、直ぐ分かりそうなものなのに、何故か私は突然アメリカ人になった。私が中国人ではないことは、中国語がいいかげんだから、分かるとしても、アメリカ人とまで飛躍しなくてもよさそうなものだけど。今回の出し物はアイルランドの踊りだったから、こういうものを見にくる外国人は、アメリカ人とでも決め付けているのだろうか。

  そう言えば日本人でも、外国人のことを全てアメリカ人という傾向がある。それと同じ理由だろうか。しかし日本に居る中国人が、日本人ではないと分かったとき、アメリカ人だとは言わないだろう。私がアメリカ人と言われたのは、ネクタイを締めていたせいだったのだろうか。アメリカ人ならダフ屋のチケットの値段の実情を知らないから、高く売れるはずだとも言ったのだろうか。 北京ではダフ屋からチケットを買うと、定価よりかなり安いのである。しかしこのときはあまり安く買えなかった。680元のチケットを500元までに負けさせるのがやっとだった。理由は分からなかった。何故私はアメリカ人なのかと聞けばよかったかもしれない、しかしそんなことより、チケットを安く買おうと一生懸命であったので、聞く余裕などなかった。それでよく理由が分からなかった、というだけのお話でした。

   ところで、上の話と全然関係無い話だけれども、本当に突然アメリカ人になる中国人が居るのである。北京の街を歩いていると、東洋人の小さき子供を連れた白人を時々見かける。こういう組み合わせは珍しいから、オヤッと思ってみるのであるが、東洋人の子供は中国人で、白人はアメリカ人だと思う。アメリカ人はよく白人ではない子供を養子にすることがあると聞いたことがある。だからアメリカ人が中国人の子供を養子に貰って連れて歩いているのだと思う。珍しいと書いたが、外国人がよく行く辺りに行くと、時々見かけるから、極めて珍しいとくことではなく、時々見かけるのである。あるとき日本に帰ったときのことであるが、アメリカ系の飛行機であったかと思うが、周りに座っている外国人が全部東洋人の小さい子供を、いとおしそうに抱えていた。きっとどこかに中国人の子供を、アメリカ人に紹介する組織があるように思える。これらの子供は物心がつく前のこどもであったから、知らないうちにアメリカ人になっているのだと思う

突然アメリカ人になる