お茶屋へお茶を買いに行ったら、目が大きくて、中国人にしては、ちょっと化粧が濃いお姉さんが、久しぶりですねなんて言ってくれた。隣の中年のおばさんも、いつもはよく来るのに、とか言っていた。日本へ帰っていたので、暫くお茶を買いに行かなかったのである。その店は、会社の近くにあって、昼休みによくお茶を買いに行くのだが、いつもはつんとしていて、愛想が良いとは言えないのである。しかし今回はそんなことを言った。私のことを覚えたくれていたんだ、なんて単純にもうれしくなったのである。

  私のことを覚えたのは、外国人らしいからではないだろう。道を歩いていると、中国人に道を聞かれるくらいであるから。お茶の買い方が特殊なのかもしれない。ウーロン茶を自分の飲む分だけ買っていくのは珍しいのではないだろうか。中国ならウーロン茶と思うかもしれないが、北京あたりでは、ウーロン茶ではなくてジャスミン茶なのである。ウーロン茶を買うのはレストランとかプレゼント用だとすると、買うとすれば綺麗な箱に入れるとか、大量に買うはずである。だからウーロン茶を少し買う老人が珍しかったのかもしれない。ついでに書くが中国なら紹興酒と思っている人がいるかもしれないが、北京あたりでは招興酒を飲まない。酒ならば白酒を飲む。

  しかもこの老人は、ネクタイを締めて、お茶を買いにくるのであるから、なお印象に残ったのかもしれない。このことは何度も書いたが、この歳で働いているのは珍しいのである。もしかしたらお茶屋のお姉さんは、私の言葉がおかしいことを感じて、中国の南方からきている老板(経営者)と思っているかもしれない。しかし一方では、本物の老板ならは、自分で茶をちょこっとづつ買いにくるのは、なんかおかしいと思っているかもしれない。

  ところで、お茶を買いに行って、お愛想を言われて思ったことは、ウーロン茶を200gも買ってしまって、しまった! と思ったのである。普段は100gづつ買うことにしているのだが、すぐなくなるから、今回は200gにした。しかし200gにすると、お茶を買いにいく機会が減ってしまう。100gづつ買ったほうが、たびたびお茶を買いにいけるのに、と考えたのである。また買いにきてくれたのね、なんていわれるなら、たびたび買いに行きたいと思った。

  「小人―閑居して不善をなす」ほどではないが、私のような小人は、つまらないことを考えるのである。

お茶を買いに行ったら