初冬の今は蟹のシーズンである。日曜日に蟹を四匹買ってきて、その晩に二匹を蒸して食べた。この蟹は上海蟹といわれるものであるが、北京あたりでは上海蟹とは言わず、大閘蟹と書く。この蟹の美味しいところは、蟹の味噌と言われるところで、これはオスもメスも黄色くて、ねっとりとしていて、とてもおいしい。おいしいのであるが、蟹の細い足の肉まで穿り出して食べると、二匹で一時間はかかった。残りの二匹は翌日に食べようと思って残しておいたら、逃げられてしまった。一匹は机の下でガサゴソ音がしていたので、見つけ出したが、もう一匹はどこかへ逃げて行ってしまった。この家はほとんど密封されたような状態だから外に逃げ出すはずは無いのだか、どうしても見つからない。

  逃げられたと言っても、値段はそう高いものではないから、勿体無いと言うほどのものでもない。中国では一斤(500g)でいくらと言うが、一斤25元で、約三匹買える。ざっと計算してみると一匹170gぐらいで、約8元=110円くらいになる。この値段でおいしい蟹が食べられるのだからうれしい。北京にいるからこそ食べられるというものであろう。北京にいるからと言っても、家に持って帰って、自分で料理しなければ、この値段では食べられない。料理と言っても蒸すだけだから簡単である。

  しかしこの料理方法は、活きたまま蒸すのであるから、見ていると結構残酷な料理方法である。面倒なことは、この蟹を買いに行くのに、北京の中心まで40分ぐらいバスに乗って行かなければならないことである。この蟹が安いと言っても、北京の庶民が気軽に食べられると言うものはない。近くのスーパーなどでは売っていない(たまには売っていることもあるが)。しかし北京の水産物の大きな市場がある紅橋市場に行けば、それこそ蟹がうじゃうじゃいる。大きい水産物市場と言ってもここは北京なので、マグロやタイがたくさん並んでいるなんて事は無く、多くは川や湖のものである。しかしその中で上海蟹がたくさんいるのは壮観でさえある。

  実は、一斤25元の蟹を買う前に、一斤150元の蟹を買ってきて食べた。値段は実に6倍の値段であったが一匹の重量は320g位で、安いものの二倍弱だった。一匹の値段を計算してみると1200円もした。この大きさのものを一晩一匹づつ、二晩にわたって食べた。やはり大きいものは味噌がたっぷり入っている。
  今回食べたのは170gのを二匹食べたから、二匹で340g位となり、値段は220円である。前回食べたのは、一匹320gくらいでだから、大きい蟹を食べたと言う満足感はあったが、6倍もの値段の差の価値があったかどうか。こう聞かれるとちょっと疑問が残る。本当は小さいほうの蟹を1200円分くらい買って、その味噌の部分だけ食べたら、その食べ方のほうが絶対においしいと思う。しかしこの方法は、多くの蟹の白い肉を捨てることになるので、小心者の私にはそんなことはとてもできない。とにかくせっかく北京に居るのだから、12月位まで、この安いほうの蟹をもっと買ってきて食べるつもりである。

  追記;蟹の身をほじりだすのに、日本の箸ならほじりだせる。日本の箸の先は細くなっている。中国の箸だとダメである。中国の箸の先は、細くなっていなくてずん胴である。だからほじり出せない。デジカメだけではなく、箸もまた日本の物は素晴らしい。

蟹に逃げられる