会社の女部長が言うには、マンションを買ったから自動車を買たいと言うのである。じゃ、自動車が学校に行って、免許を取らなければならないね、と言ったら、まず自動車免許を買って、自動車も買って、それから運転を習うと言うのである。おいおい、それは違うだろう、免許を取ってそれから自動車を買ってだろう、日本語の使い方が違うよ、と私は言ったのである。彼女は中国人でも、日本語はかなり上手いのだが、何か言っていることがおかしい。でも何回か確認したが、間違いでは無いらしい。

  中国では運転免許は買えるの? と聞いたら確かに買えると言う。どうも本当に買えるらしい。彼女いわく、また、本間さんに中国の問題のあるところがバレてしまった、と言っていたが、中国には私が知らないことがまだまだたくさんあるのである。その値段は地方に行けば1050元だそうである。北京で買うのは難しいとも言っていた。この買える免許は偽物ではなく本物である。勿論中国には偽の免許もある。偽の免許を手に入れる方法については、後で書くこととして、最初の話しは問題の無い本物の運転免許証について買い方である。

  会社の別の女の子で、最近免許を取った人がいるので、そのことを女部長に、許さんはもう免許を取ったらしいよ、と言ったら、時間はどのくらいかかったのと、女性部長が聞くので、二ヶ月ぐらいだろう、と答えた。それに対する女部長の反応は、それは怪しい、もしかして買ったのかもしれない、という意見であった。この言い方は、やっぱり運転免許が容易に買えることを、如実に物語っているようであった。

  今の北京では、土日の休日に教習所に行って免許を取ることは可能である。しかし予約が難しかったりして、なかなか時間がかかるらしい。で、免許証を買った方が手っ取り早いということで、買う場合もあるのだとか。運転免許を買うことは、それを先に買ってから練習するのか、練習してから正規に取得するものか、選択肢の一つに過ぎないと言った感じである。

  女部長の今後のもくろみでは、自動車と運転免許証を先にそろえ、その後、個人的に運転の先生を雇って、練習すると言うことらしい。そのほうが時間を効率的に使え、安全運転もきっちりと練習できるとのことであった。全体の費用は学校に行って正規に取るのと同じくらいらしい。だから運転免許を買うと言っても、異常に高いと言うものではなく、結構安いと私には思えた。(地方での値段1050元は、日本円に直せば、15,000円以下である)。彼女は国慶節の休暇に故郷に戻ると言っていたので、故郷の東北地方の大都市で運転免許を買って、戻ってくるかもしれない。そういえばどういう所で、誰から買うか聞いていなかった。これも聞かねばならない。こういうことを聞くときには、好奇心丸出しではだめなのである。さりげなく聞かなければならない。

  一方、偽の運転免許証の入手方法についてであるが、多分、次のような方法だと思う。それはどこの壁にでも汚らしく書かれている番号に電話するだけでいいのである。値段のほうは、そうは高くないはずである。この国の身分証を500元(7,000円位)で手に入れたと言う日本人がいたくらいであるから。

  汚らしく書かれている電話番号と言うのは、例えば橋の下とか建物の壁に汚らしく書いてある、二文字熟語と一緒に書かれている電話番号である。この落書きのような広告は、他人の家の壁にも無断で書きなぐられていて、全く汚らしくい。北京当局もオリンピックを控えて困り果てている代物である。

  (今は、時あたかも中国の国慶節であるから、多分この広告は見られない。北京当局が指示を出して、徹底的に消させたからだろう。しかし消したと言っても、電話番号の上を、下の壁の色と違った色で塗りたくって消しただけなので、却って目立ってしまって、汚さは消す前と変わらない)

  電話番号と二文字熟語からなる汚い広告についての、二文字熟語の方であるが、この字は、この文字だけを取り出したら恐らく、中国人でも汚い字なので読めないのではないだろうか。しかし電話番号と一緒に壁に書きなぐってあれば、多くの中国人は、あぁ、あれはあのことかと直ぐ分かるに違いない。その意味は“証明書を扱う”という意味の言葉で、もっと深く読み解けば“偽物の証明書でもなんとかする”と言う意味でもある。日本の漢字で書けば、“弁証”と言う字になるが、書かれている字は中国語の簡体字なので別の形の字である。古い字で書けば、“辧証”と言う字になるのかもしれない。いや辯という字だったかな?

  とにかく、そこに電話をして免許証を頼めば何とかしてくれるはずである。しかし非常に簡単とまでは行かないかもしれない。電話一本で相手が簡単に出てくるようであれば、すぐ警察に捕まってしまう。そんなことならばこの違法な汚らしい広告は根絶できる筈である。しかし実際にはこの違法広告が無くならないのは、警察でもこの広告主を、なかなか捕まえられないからである。そういうこともあるので、電話を掛けて直ぐには相手に接触できないのではと思う。

  私も中国の記念に、偽の北京大学の証明書でも作ってもらおうかな、なんてチョッと考えたが、私の年にふさわしい卒業証明書って、40年以上も前のものになってしまうのである。で、電話を掛けてみた事が無いので、電話を掛けたらどうなるかの体験談は無いのだが、体験してみたい気持ちもある。

運転免許は取るものか、買うものか