勝手に中国はこうだと思い込んで、実際に中国に行ってみたら実際は違うということが結構多い。元々が勝手な思い込みだから、予想とは違うのは当たり前と言われればそうなのだが。多いもの(例えば偽物)はすぐ目に付くが、無いものを無いと気が付くまでには、結構時間がかかる。

○中国は陶磁器の国だから、いい陶器がたくさん有る
  答えは、殆んど無いと言うのが正しい。有るには有るが、いい陶磁器が有るのは骨董屋に有るのである。しかし気の利いた皿や花瓶を買おうとして、デパートに行ってみると無い。食器売り場では、ほんとに貧弱な陶器しか並んでいない。瀬戸物屋らしき店も有るが、埃まみれなった、あまり模様も無い食器類があるだけである。

  日本人は中国の歴史で、中国に景徳鎮があることを知っている人も多いから、中国には、良い陶磁器があると思い込んでいる人が多いかもしれない。確かに景徳鎮の磁器は、専門店に行けば売られている。しかし他の有名な陶磁器はあまり見たことがない。そして景徳鎮の磁器はデパートでは売っていないのである。中国のデパートにも高級インテリア売り場みたいなところがあるが、そこに並んでいるのは、韓国の皿であったり、東欧のガラス器であったり、却って日本の食器セットが並んでいたりする。

  ちょっとした皿と書いたが、この"ちょっと"言う言葉を付けると、益々捜すのが難しくなる。"ちょっと"とは超高級品ではなく、旅行に行った時のお小遣い程度で買える程度の、気の利いた、と言う意味とすると、こう言ったものは殆ど手に入らない。景徳鎮の磁器は、超高級を誇る壺とか、人の背の高さ位もある大きい花瓶ならばある。

  何と言っても日用雑器の類で素晴らしいのは、日本のものであって、もともと日本人は日用雑器の良い物に拘り過ぎるのかもしれない。こう言うものに日常的に接している日本人から見ると、中国の皿や花瓶は何とも愛想が無いというか、殺風景過ぎる。それでもホーローの食器よりはずっと良いのだけれど。繰り返すが、骨董屋になら高級な皿や壺がちゃんとある。

○中国にもラーメン用どんぶりがある
  日本にはラーメン専用のどんぶりが有る。縁の模様は卍のごとき中華模様があるどんぶりである。上に書いた中国の陶器の事情も有り、中国にはラーメン専用のどんぶりは無いのである。中華紋様とは私が勝手につけて名前であるが、あの模様も中国で見たことがない。あの中華紋様はもしかしたら、日本人が作ったものかもしれないなんて考えた。何度も書いているが中国のラーメンは日本のラーメンほど重要な食べ物ではないのも理由かもしれない。

○ 中国では街角から二胡の音が聞こえてくる
  日本では住宅地などを散歩しているとピアノの練習の音をよく聞く。ならば中国では二胡の音が聞こえてくるかというと、今までに、町中で二胡の音を聞いたことはない。これは家の構造が違うと言うこともあるかと思うが、中国では日本のピアノほど二胡がありふれたものではないらしい。

  公園などに行くと二胡のような音が時々聞えてくるが、二胡のようであっても二胡ではない楽器が多い。棹の長さが違っているものだったり、共鳴の胴の部分が違っていたりする。京劇などでキイキイ鳴っている音を聞くが、あれも二胡ではない。

  中国では二胡の発表の場があまり無いように思う。北京でも二胡演奏会などは滅多に無い。稀にホテルや茶芸館などで、二胡を弾いているところがあるが、最近気が付いたのだが、そう言うところの演奏であまり楽しそうに弾いているのを見たことがない。

  中国人による二胡の演奏会や音楽のCDの数は、中国より日本の方が圧倒的に多いと思う。特に古い楽器である二胡と新しい音楽のコラボレーションによるのCDなどは、中国に殆ど無い。だから二胡を聞きたいなら日本でとい言う事になる。

  ところで、コラボレーションという言葉の使い方は、これでいいのだろうか。日本に居ない間に新しい言葉がどんどん増えて困る。

○ 中国には梅が多い。
  梅の花は北京辺りでは多くないのである。中国には梅の花が多いはずだと思っていのだが、何故か期待はずれだった。梅の花が多いと期待させる理由は、中国画の題材として梅の花がとても多いからである。画には白い梅も、赤い梅も描かれているが、実物はとなると極めて少ない。梅の花の写生の時、何処の梅を見て描くんだろうと思ってしまう。この話は北京から北のほうには梅が無いか、少ないと言っているだけで、江南地方には多いのかもしれない。北京で 植物園に行けば有るそうである。私も北京植物園に行ったことがあるが気がつかなかった。梅の花なんて我が家の庭にも有ったのだが、北京ではそんなにありふれたものではない。北京に多い春の花は、本当の桃ではない桃の類いの花が沢山咲く。こっちは日本より多いのではないだろうか。会社のある女の子の名前が"冬梅"だったので、梅を見たことがある? と聞いてみてたら、やはり無いとのことであった。

○ 四合院には中庭がある。
  元々中庭を囲んで、四方に部屋を構えるのが四合院である。しかし今では、昔の貴族の大邸宅などは別として、大きい民家の四合院の中庭はなくなってしまった。これは北京の話しである。北京から100kも離れている川底下村に行けば、農村の四合院に中庭が残っていた。

  北京の四合院は文化大革命の頃に、大混乱が起きて、中庭に勝手に人が入り込んできて、違法建築を建ててしまった。当時は憲法も機能しなかった時代だから、違法だとは言えないのかもしれないが、今の当局は違法と言っている。恐らく特別に保護された所を除いて、四合院の中庭は全滅なのではなかろうか。北京には胡同を回るツアーがあるが、そのツアーに参加すれば、違法建築の無い、空間の有る中庭を見せてもらえるのだろうか。大いに疑問である。

○建物の軒には樋がある
  日本では、軒先には横樋があって、雨を集めるから、軒先から雨が直接地面に落ちないようになっている。これが常識である。しかし中国では軒先に横の雨樋が無い。軒先から雨がジャアジャア落ちる。ある時、雨がジャアジャア落ちているので、上を見上げたら、日本では常識的な樋が無いことに気がついた。しかし建物については、よくみると日本にあって中国無いものが沢山あるのである。まず玄関が無い、廊下が無い。表札も無い。傘立てが無い。もっとも傘が無いから傘立ての必要ない。傘が全く無いわけではないのだが、折り畳み傘が一人一個有る程度だから傘立ては必要ない。長い傘は殆んど無い。玄関が無いから靴脱ぎ場が無い。下駄箱が無い。勿論中国には下駄が無い訳で有るが、かといって靴入れがあるかと言うと有る所が少ない。あるところでは郵便受けさえも無い。押し入れ物入れがない。壁に絵などを掛けるところが無い、これはコンクリートだから釘も打てないからである。柱も無い。これもレンガ作り、またはコンクリート作りだからそうなるのである。同じ家でも結構違うものである。

中国に有りそうで無いもの