日中子育ての違い
(6月18日)

  バスの中で赤ちゃんに小便をさせるのを、二日も続けて見てしまった。小便が床にジョロジョロと流れて気持ちが悪かった。子供を抱えた爺さんは、孫自慢なのか小便で床が濡れたことなど我関せず、回りの人に子供を披露していた。子供は愛嬌を振りまいて可愛い顔なのだけれど、小便の排泄を見てしまったからには可愛いとも思えなくなった。

  日中子育てについて書こうとしても、あまり子育てに熱心に参加しなかったので、日中子育ての違いについて細かい事は分からない。しかし外見から見ても分かる違いが多い。例えば、中国では子供にオムツを使わないで、尻割れパンツを使うことである。このパンツを使う結果として、何処でも排泄させる。二日続けて見たのは、1歳くらいの赤ちゃんだったが、尻がむき出しだったから、出すのではないかななんて考えていたら、見事に予想が当たって小便を床にさせた。抱っこしている人の膝などを濡らさないでさせるのも、見事なものである。

  これってやはり不潔だと思う。以前汽車の中で前の席に可愛い子供がいたので、抱っこしたら、ズボンが濡れていた。可愛い子供であってもズボンが濡れていると気持ちが悪い。

  尻割れパンツは寒い冬でも使うが、暖かくなると、パンツを汚さないようにする為か、パンツの割れが大きくなるような気がする。そうすると前も後の部分も剥き出しになって、見るつもりがなくてもよく、見えるのである。中国人は見えることで、却って可愛いなんて思うのかもしれないが、あんまり見たいものではない。私にとっては見えないほうがいい。

  前に書いたバスの中の例の様に、中国では爺さん婆さんが良く子供を連れて歩く。これは二つの理由が考えられる。一つは爺さん婆さんが親の代わりに子供を育てている場合が多いからである。もう一つは中国人は子供を連れて歩くのに、絶対におぶわないからである。そうすると、子供を連れての外出がとても不便になる。それで赤んぼ連れの外出の場合、必ずほかの人が付き添う事になる。荷物の運搬役か、赤んぼの運び役がもう一人要ることになる。

  中国では親が子供を育てないで、別の人が育てる場合が非常に多い。中国の爺さん婆さんと言うのは早くから仕事がなくなってしまうから閑な人が多い。男は55歳から、女は50歳から退職だなんて言っているが、男でも50歳過ぎで仕事が無い人も多い。実際に多くの職場で老人はおろか中年でもあまり見かけない。大連のマッサージに行ったときのことであるが、そこの女性が言っていたが日本人は60歳を過ぎても働いている人が多いと言っていた。大連のマッサージ屋というのは日本人ご用達の店だから日本の事情についてよく知っているのである。中国の老人は、いや中年でも早くから仕事が無くなってぶらぶらしてるが、このことは日本と比較してみると驚くべきことである。

  わが社に入社したばかりの大卒の社員、6人にお父さん、お母さんの職業は何かと聞いたら、4人もの両親が仕事が無いと答えたので、ビックリしてしまった。まだ若い社員の親だから、多分両親の年齢は55歳以下ではないかと思うのだが。

  爺さん婆さんには時間がタップリあるから、親に代わって、子供を育てる事になるかと言うと、それは間違いである。日本人であれば、親が閑であっても、あれほどにまでに子供の育児に介入しないと思う。中国人の場合は、手伝ってもらうなんてものではなくて、完全に任せてしまう。日本人の親は育児を人に任せたくはないと思うだろうし、仕事を持っていても自分の側で子供を育てたいと思うから、育児が大変なことになる。

  中国人が子育てを人に任せるといっても、任せるのは親とか兄弟である。子育てを肉親に任せるなら、誰が育てても同じだと考える中国人が多いのではないだろうか。日本人でも昼だけ子を親に見てもらうというのは多いと思うが、中国の場合は、完全に任せてしまう場合も多い。親が遠い所に住んでいる場合、そこに預けてしまったりする。日本の場合でもおばさん子という言い方があるが、全面的におばあさんに育てられたというより、おばあさんに可愛がられたと言う意味の方が多いのではなかろうか。この辺りの考え方は日中で随分違う。

  おぶい紐で子供をおぶう習慣は北京辺りには全く無い。田舎に行くと少数民族の風習としてはあるようである。理由としては、子供の体を締め付けるのは良くないとのことであるが、そう言いながら中国では赤ん坊の時、ぐるぐる巻きにして育てたりしている。中国では大勢で子供の面倒を見るが、日本では母親一人で何人もの子供を育てるので、おんぶするのが便利だからと言うことも有るかもしれない。しかし中国人はおんぶが便利であってもおんぶしない。冬であると、毛布で巻いた赤ん坊を抱えてバスに乗ってくるが、いかにも大変そうである。おぶったほうがよほど便利だと思うのだけれど。

  これは私の意見であるが、おぶわない理由は、もし子供をおぶうと、あの尻割れズボンでは、排泄の兆候を察知できないからなのかと思ったりしている。おんぶしていては背中を汚されてしまうだろう。抱いているとその兆候を察知できるという利点がある。おぶわない理由は尻割れズボンと関係があるかもしれない。とにかく中国人は子供をおぶうのは嫌いで、大変でも抱いて運んだほうがいいらしい。

  冬バスに乗るとき赤ん坊を毛布でくるむと書いたが、子供は一般に厚着で育てる。大人でも厚着であるが、子供は特に厚着である。常に厚着というよりは、厚着の必要がないときでも厚着である。暖かい部屋の中でも厚着。春で暖かくなってもまだ厚着。それに中国人はあまり、着たり脱いだり、着替えたりしない様である。だから一番寒いときに合わせて厚着をしたままと言うのが正しいような気もする。厚着をさせるのはそれなりの理屈があって、足を冷やしてはいけないということらしい。しかし冬でも尻が剥き出しで冷えるのは問題にしないらしい。

  中国では子供に、何かの補助栄養剤、今の言葉で言えばサプリメントをよく飲ませる。幼稚園くらいの子供がグロンサンのビンよりもっと小さいビンから、細いストローでチユーチユーやっているの見ることがある。主に不足しているカルシュウムを取らせるとのことであるが、本当はカルシユウムが不足してるというより、中国人は補助食品を飲ませるのが好き、と言ったほうが正しいのではないだろうか。テレビでは子供が飲むと聡明になるというサプリメントも宣伝している。確かに中国では小魚類を食べようとすると少ないのは確かであるが、栄養は食べ物から補給したほうがいいのにと思うけれど。

  子供に対して、過剰に厚着をさせる、過剰に何かの中国的サプリメントを補給する、というのは中国の伝統的な養生訓のような考え方によるものかと思うが、他にも過剰に面倒を見るということがある。ある人の子育ての比較によると、食事の時、日本では汚れても早くから一人で食事させるが、中国では汚さなくなるまで親などが子供に食べさせてあげるのだとか。

  過剰と言えば、学校に入ると勉強は凄くさせる。もし勉強時間の長さと、頭の良さが比例するとすれば、中国人は世界で一番頭が良い方の国民かもしれない。朝の授業前に早出をして勉強をし、放課後も学校に残って、勉強をするらしい。とにかく勉強の時間は長いらしい。もっとも農村ではそんこともないのだと思うけれど。聞いたところによるとカナダ人の小学生なんかは、学校から帰ったら、クラブでスポーツをしたり、外で遊んだりして、一切勉強はしないらしい。これでは中国人からみれば、子供の将来が心配になってしまうと思うが、何故かカナダは中国人が移住を熱望する所の一つなのである。

  勉強の時間は確かに長いが、交通安全の教育などはしないらしい。中国の将来の為には、ルールを守るという教育をもっとして、赤信号を守るように教えた方がいいと思うのだが。

  当然国旗に敬礼するとかの愛国教育は非常に熱心にやっている。中国にも子供の日(休日ではない)というのがあるが、何の事は無い子供を集めての愛国教育の日であったりして、少数民族の衣装を着た子供に、大きくなったら国のために役に立つ大人になりたいなんて言わせていた。日本の例で分るように、愛国教育を大げさにやらなくても、日本から逃げ出してどこかに移民したいなんていう国民はそうは居ないはずなのであるが。

  しかし情操の方面の教育はどうなんだろう。日本の児童文学の出版社の人が言っていたが、中国の創作絵本と言うのは殆どないらしい。児童文学書が貧弱なんだそうである。以前にも書いたが、子供の為の童謡なども少なそうである。大きな本屋に行ってみたが、子供に知識を増やすための本は沢山あった。やはり本の種類から見ると知識の詰め込みに偏っているのではないだろうか。
(絵本や童謡が少いからと言って、中国の情操教育が少ないと言うわけではないだろう。中国の知識水準の高い家庭では、子供に漢詩を暗誦させると言うから、中国らしい情操教育があるに違いない)

  中学高校でのクラブ活動やスポーツについても、殆んど無いらしいのは味気ない気がする。大学に入学しても勉強ばかりやっているだろうか。若い社員に聞いてみても、中国では日本の様に、大学でクラブや同好会に入っていた人はほとんどいなかった。といってもアルバイトのチャンスも殆んど無いらしい。やっぱり勉強ばかりやっているのだろうか。大学を卒業した人が団員とか党員になれたとか、なれなかったとか言うから、団員または党員の活動とかが、日本のクラブに相当するもんのだろうか。このへんの実態については、よく聞いてみないと分らない。

  話を小学校低学年の頃の子育てに戻して、あることで中国人に聞いてみたいのだけれど、聞きづらい話がある。中国で働いている、日本語教師の方のホームページで見たのだが、中国人の同僚から、あることで日本人は不道徳だと言って責められたのだとか。それは日本の女の子がいる家庭なら、子育て中に当然ありえることであるが、お父さんと女の子が一緒にお風呂に入ることである。小学校の低学年くらいなら親子の文字通りのスキンシップとしてお風呂の一緒に入るのは普通の事である。これが中国人から見ると不道徳となるらしい。中国の家庭には殆んど風呂桶はないから、当然そのような習慣も無い。しかし父親と女の子が一緒に風呂に入るのが中国人にとって、本当に不道徳と思えるのかどうか、もっと聞いて見たいところであるが、なかなか聞けない。