今度は怪しいスーパーの袋
(3月10日)

  そんなことが有り得るのではないかな、と思っていたことが、やはり起こっていた。中国ではプラスチックの回収を、ゴミ拾いの人が熱心にやっている。ミネラルウォーターのペットボトルが1.4円くらいになるらしい。物価の安い中国ではかなりの値段である。だから飲み終わったペットボトルを中国人にならって、放り投げ捨てても心が痛まない。すぐ拾う人がいるからである。但し谷底に投げては、拾えないから駄目である。

  ほかのプラスチック、例えば農業用のビニール、油の容器、などもゴミ箱を引っ掻き回して、回収されるし、洗濯機やテレビの外側、発泡スチロールも回収される。資源の再生として、いい形でリサイクルされているように見える。それがどんな方法で再生されているかが問題なのであるが、これらの容器がトラックに山のように詰まれて、北京から郊外に運び出されるのよく見る。運ばれたプラスチックは何処で何に使われるのだろうかと思っていた。

  このペットボトルの運び方が傑作なのだけれど、ペットボトルを潰さないで(潰す為の高価な機械など買えないので)運ぶから、軽い物を山のように積み上げる。荷物が上に扇状に広がるのである。上の荷物の幅は、トラックの幅の二倍にもなる。このような状態で、公道を走れるというのも中国らしい。よく目立つのは食用油のペットボトルである。中国人は油をたくさん消費するから、油のペットボトルは10リットルくらい入る大きいものである。この空き瓶の口のあたりを数十個まとめて括り、まるで風船を束ねたようにして運ぶのである。

  前置きが長くなってしまったが、これを原料にして食品を入れる袋などを作るのだから恐ろしい。この原料はほんとに汚い。まるでゴミの山のようになっている。そのプラスチックのゴミの山から、白い袋を作るときは白いプラスチックを、赤い袋を作るときは赤いゴミを選び出して原料にするのである。赤いプラスチックというのは化粧品であるかもしれないし、化学薬品の可能性もある。それをかまわず溶かして、機械からひねり出し膜をつくり袋にするのである。この方法を見れば、この袋に化学薬品とか毒物とかが混ざっているのではと思うに違いない。テレビを見ていたら、医療用らしい透明なチューブもあった。まさか輸血に使ったチューブではないと思うけれど、そうでないという保証はどこにもない。

  テレビでは、一度この危ないプラスチックの再生の事実が問題なって、実はその後のレポートであった。レポーターが監督局みたいな所に行って話を聞くと、対策を立てた、取り締まったという、立派な答えが変えて来た。けれど記者が汚い工場に行って、工場長に聞いてみると、検査に来たがすぐ帰ったとか、お金を受け取って帰ったとか言っていた。

  このような工場があるところは、都会ではない。都会から離れた、しかし都会に近いところでこのような怪しいものが作られている。先に書いた死肉が混ざったハムも、注水肉もまた、同じように都会から離れた位置で作られている。この地方政府にとっては、地方の財政に役立つ産業だから、真剣に取り締まれないのではないだろうか。都会では嫌がられる仕事を引き受けていて、製品は都会に供給していて、立派に役立っているのである。ましてその県が大きな被害受けている訳でもないし、製造者も何年もこれで、問題が起きたことがないと言っているし、・・・

  でも、見た目にも汚いない。プラスチック再生工場が十軒以上も集まっているから、ゴミの山は道の両側にずっと連なり、まるでごみ街道になっている。ここは再生プラスキックの産地なのである。主にここで再生されている物は、簡単に出来る袋である。資本が必要な金型を必要とする油の入れ物などは見かけなかった。袋と言っても大手スーパーの名前が印刷される袋はここでは見かけなかった。だから大手スーパーの袋なら大丈夫なのもしれない。

  プラスチックはよく回収されると言ったが、実はここで作られている袋は恐らく回収されない。と言うのはここで作られる袋は、大手スーパーで使われる袋よりもっと薄い袋である。こっちのほうは、小さいスーパーや八百屋ではよく使われる。好み焼き屋のような所でも出来たての食べ物を包んでくれる。これはあまり薄過ぎて回収されない。そしてここ中国では、ゴミをやたらに捨てるから、この薄い袋は風が吹くと遠くに飛んで行ってしまう。中国人は赤や、青の色の袋が好きらしいから、袋にもこの色が付いている。それで大風が吹いた後は、枯れ木にこの袋が引っかかり、いろいろな色の花が咲く。でも汚い。

  テレビの報道がきっかけで、不潔な食べ物の製造場所が閉鎖になるケースはとても多い。その点、新聞は正義の味方なのである。しかし、食品の包装にも使われる危ないプラスチックの袋は、最終的には取り締まれるのだろうか。この問題については、テレビでは問題を投げ掛けたが、禁止にはなっていないようである。

  尚、プラスチックは確かに回収されているのだが、北京では、捨てる側のゴミの分別は殆んどされていない。プラスチックやダンボールや空き缶は捨てられた後に、金になるから、ゴミの中から見つけ出されるのである。近い将来、北京市民と地方からの農民工に、ゴミの分別が出来るようになるのだろうか。それよりやたらにゴミを捨てる習慣を無くせるのだろうか。