危ない日本豆腐と注水豚
(3月5日)

  北京の危ない食べ物のことばかり暴きたてて、どうするつもりだと言われそうであるが、また危ない食べ物の話である。日本では鳥インフレエンザの卵が話題になっているが、北京ではもっと危ない卵の話が載っていた。この話と比べると、鳥インフレエンザの卵など大したことではないのではと思ってしまう。今日の新聞に載っていたのは卵そのものではなくて、卵から作られた卵豆腐のことである。何故か中国ではこれを日本豆腐と言う。新聞の記事となったのは、不潔な日本豆腐の製造方法である。

  不法な製造ということで作業所が閉鎖されたが、場所は何故か卵の孵化工場の中で作られていた。記者が記事にする為こっそり訪問してみて真相が解った。孵化しなかった卵や孵化しかけて死んでしまった卵を原料に使っていたのである。記者が行ったときは鴨の毛卵を使っていて、これを割って、液状のところを利用していたらしい。記者がほかの卵を割ってみると腐っているのも有ったとか。中国人は孵化しかけた卵を毛卵(毛鶏卵)と言って、これをよく食べるが、今回のは毛卵を作るのが目的ではなく、孵化が目的であった卵のようである。ここでも記者の現場の描写によれば、吐き気を禁じえない匂いと、不潔さとであるらしかった。

  ほんとに毎日、反吐が出そうな食べ物の話が載っている。以前、注水豚の話を書いた時、こんなのはスーパーには出てこないだろうから自分には影響がないだろうと書いたが、実はそうでもなくて、この注水豚はレストランで食事をしたとき、私も食べてしまったのではなかろうかと心配になった。一日1000頭もの注水豚が北京に入ってきていたということが分かったからである。

  新聞の書き方では、注水肉と書かれていたが、これは豚に無理に口などから水を高圧で注入して、肉の重量を増やしてから売る方法である。肉が水増しされただけならまだいい。屠殺される所が、目を覆うばかりの酷いところで、生きている豚と死んでいる豚と、糞尿とが混ざり合って、更に腐った肉も転がっているのだとか。当然凄い臭いがする所でもあり、そんな不衛生なところで処理されていたらしい。この記事を読むと本当に気持ちが悪くなる。記者が暗訪(身分を隠して訪問)してのレポートだった。記者曰く、吐き気を堪える事が出来ないとも書いてあった。

  その場所は北京市と天津の間にあるらしい。3メートルもの高さの壁に囲まれていて、外からは覗けないけれど、その中には、大きい作業所もあるし、小さい作業所もあって、いずれも高圧で豚に水を注入できる設備を備えているのだとか。ここは"慶賢屠殺場"といい、記事になった後、直ちに閉鎖になった。

  そしてまた、日曜日の「品質報告」という番組を見てしまった。今度はインスタントラーメンの調味料。ラーメンは大きい工場で作っているのだが、スープに使う調味料は、仕入れているらしい。それで調味料を混ぜて作っているところの暗訪になるのだが、不衛生な所で、防腐剤やら着色剤やらを釜にぶち込んで作っていた。釜は土間に置かれた大釜で、ハエも埃も跳び込む可能性は大である。やはり見るに耐えないくらい汚いところである。なにやら地面に立てかけておいた棒で掻き回してもいるようだったし。

  中国の不衛生さはとどまる所をしらない。でも全部の食べ物が不衛生ってこともない。インスタントの麺はチャンとした工場で作られているのだから。ネクタイをした人が対応していた(不潔な食べ物を作っている所は服装も相当酷い)。しかし小さい袋に入れられている調味料のほうは仕入れたものであって、自工場製ではない。牛肉味の紅焼牛肉という味であるが、牛肉のエキスなど全く入っていなくて、その代わり防腐剤がタップリ入っている。テレビで曰く、インスタントラーメンに付き物の調味料の方には、規制が無いのだとか。規制が無くても、別の規則で禁止できないのだろうか。

  上に書いた話は北京の話であるが、製造しているところは北京ではない所が多い。注水豚については北京市と天津と河北省の境あたりで、先日の死んだ肉入りのハムもやっぱり省の境界に近い所であった。一応北京ではこんな不衛生な食べ物はちゃんと摘発しているのかもしれない。しかしこの違法行為は地方が引き受けていて、日本の都会のゴミを、地方が引き受けている構造と同じように、中国でも地方に違法のものが行くと言う構造になっているのかもしれない。

  こう言ったニュースを見て何時も不思議に思うのだが、記者が震えながら必死の覚悟で暗訪して、ニュースになるまで、何故この事実がばれないのかということである。記者はほんとに怖かったらしい。確かにこの闇の屠殺場は高壁に囲まれていて、他人が覗けないようにはなっているが。正規の屠殺場が別にあって、そこでは当然注水などは許されないので、コストが高くて、注水肉が好猪肉を駆逐してしまったと書かれていた。そうであれば、地元の監督官庁は気が付くはずだと思うのだが。新聞記者は地元の監督官庁の職員と一緒に訪問する方法は避けたと言っていた。それで隠密裏の暗訪が出来て、記事が書けたという事である。

  中国には危ない食べ物が多いと言うだけでなく、地方政府とか監督部署とか、製造業者の間に何かあるのではないだろうか。ある地方に集中的に同じ場所で、毎日1000頭もの注水豚が違法に処理されていたのに気が付かないってのもおかしい。異常な注水装置があるのだから、調べようと思えば判るはずである。別の事件、死肉を混ぜたハム工場の話も、長い間問題にされなかったのも何かおかしい。

  監督部門の怠慢とか、監督部門と業者の癒着とかが有るとすれば、この状況は良く理解できるのだが。ほかの事件の記事で、そのような見方を書いた記事があった