反腐敗闘争
(3月3日)

  中国には賄賂、汚職がかなり蔓延っているらしい。中国政府もこれらの腐敗現象に危機感を感じているのか、いろいろと対策を立てて、腐敗撲滅運動みたいなものを始めた。そう言えば中国では、3月始めは、二つの国会(?)みたいなものが始まる時期で、一時的な"政治の時期"でもある。この時期に合わせて反腐敗闘争が始めたのかもしれない。しかし実際のところなかなか根が深くて、効果はなかなか上がらないようである。

  中国共産党としても、現状を放っておくわけにも行かず、最近、次の二つの条例が公布された。一つは、「中国共産党紀律処分条例」で、もう一つは、「中国共産党党内監督条例」である。日本の政治形態から考えると、一政党のために条例を作るなんてことは、考えられないが、一党独裁の党で党員が多いから必然的に党員の腐敗は多くなるとしても、無視できないくらいに腐敗が多いのだろう。それで共産党員の引き締めの為に条例を作ったに違いない。やっぱり共産党員は権力の座にいることが多いから、腐敗も多い。特に権力の座に座った中国人の場合は。いや、日本人だって県知事で、不正を働いた人も居る。しかし、中国人の場合は・・・・・  

  腐敗の一種の形態に官を売ると言うのがある。人事権を握った者が、部下などの要求に応じて、いや、受け取った金に応じてといってもいいかもしれないが、いい地位を調達してやるのである。これを"売官"と言うが、最近の新聞では"売官"という文字がよく載っている。実際に四大"売官"が、腐敗防止のキャンペーンとして公開された。派手に官の役職を売りすぎたのかもしれない。ほどほどにしておけばよかったのに。

  ○吉林省のある県の県委員会書記、李鉄成は在職中、2366万円の賄賂を受け取った。そのうち2001万円は、幹部の選抜に便宜を図って110人から受け取ったものである。

  ○遼寧省のある県の県委員会書記、商殿挙は在職中、1637万円の賄賂を受け取った。そのうち869万円は、幹部の選抜に便宜を図って30人から受け取ったものである。

  ○安徽省のある県の県委員会書記、孫孔文は在職中、532万円の賄賂を受け取った。そのうち500万円は、幹部の選抜に便宜を図って15人から受け取ったものである。その外に、説明できない3360万円もの巨額な財産があった。(中国では財産の由来が説明できないと、財産来歴不明罪として、それだけで罪になる)

  ○海南省の工商行政管理局局長、馬招徳は、在職中、1288万円の賄賂を受け取った。そのうち896万円は、幹部の選抜に便宜を図って13人から受け取ったものである。

  上の四大売官を見ると、委員会の書記と言うのが多い。日本の制度から推測すると、県であるならば、県長が一番えらく、人事権を一手に握れるのかと思うと、そうでもないらしい。人事権を握れるのは、どうも県の長ではなくて、一般には偉いのか偉くないのか分からないような共産党の書記と言うのが人事権を握っているようである。このことをみても共産党党内の規律を正し、監督を強化しなければならないことを表している。

  このような地位についた人は、権力を握れた!これから金が入るぞ! と体が喜びで震えるのではないだろうか。このように思った人物は上記の四人だけではあるはずはない。やはり負の伝統として続いている事であるからこそ、腐敗撲滅キャンペーンをしているのだろう。旧悪を打倒して、革命を成功させた共産党といえども、伝統の袖の下による売官の弊習を無くすのは難しいという事かもしれない。何と言っても法より人間関係の国だから。

  中国の社会の場合、役所とか国営企業などでは、金と人事権を管理する部門の地位が異常に高く、一旦その地位につくと、この権利を自分で勝手に自由にできると勘違いして、金と人事権を操りたいという誘惑に勝てない人が多いように思える。実は私の身近にもそういう人物(中国人)がいたので、詳しいのだけれでども。

  以前の別の新聞によると、腐敗が激しいところとして、幾つかの分野が挙げられていた。それには教育、医療、法曹関係、人事部門、建設などが含まれていたと思う。我々日本人にとって建設の分野で腐敗、不正が多いというのは理解しやすいが、教育、医療、法曹関係での腐敗というと、どんな形で、不正が行われているのだろう。知りたいものである。教育も医療も金次第、袖の下によって、受けられるサービスが違うという事かもしれない。袖の下は紅包といって、この程度のことは聞いたことがある。そう言えば、大学入試(全国統一試験))でも偉い人に電話したら、入れた話を聞いた事がある。

  しかし法曹関係でも腐敗が横行しているとしたら、これは結構大変な世界である。まさか賄賂によって罪が決まるのではないだろうけれど。法曹関係の腐敗が明らかになることは、滅多にないが中国の法曹界と言うのは、日本とはかなり違うのだと思わせる事件があった。

ちょっと前のことであるが、裁判の証拠品の金塊を売り払って、金に換えて、警察、検察、裁判所の三者が分配してしまった事件が新聞に載っていた。この事件で分かった事は警察、検察、裁判所が意外に仲が良いことである。中国人は他人と関係が良い事を誇るが、警察、検察、裁判所が仲が良かったら、どんな事になるのだろう。しかもこの事件は冤罪の可能性がある事件らしかった。更に不可解な事は、この行為が直ちに罪になったとは書いてなかった。これは罪とはいえないのだろうか。警察、検察、裁判所が罪を犯したとなると、都合が悪いことになるのだけれども。

  それに中国の法官というのは、レベルが高いとは言えない。裁判官、検察官の資格というのがハッキリしていないようである。たいした学歴でなくてもなれる(所もあると言った方がいいのかもしれないが)。国家試験も無い(今年から始まるのか、もう始まったかの程度)。任命するのも、地方毎に任命するから地方の幹部とも仲がいいことになる。関係がある人とは、できるだけその関係を良くしておくのが中国の伝統である。

  中国の腐敗というのは、やっぱり中国の負の伝統に関係しているようである。だからこのようなことが起こる事は、一般の中国人にとって、理解しやすいことだと思う。一方中国では貧富の差が激しいから、不正によって蓄財した人に対する恨みはかなり激しい。甘い蜜を吸えなかった人の恨みもある。そんことも理由になって腐敗の摘発は、密告がきっかけになるケースがとても多い。それに不正蓄財をした人を放っておくと、社会に不満が広がる恐れもある。それを恐れて、先の「中国共産党紀律処分条例」などが作られてのだろう。正義が行われる事は、何処の国のことであってもいいものであるけれども