死んだ豚の行方
(2月26日)

  ある人が、中国へ始めて来て、朝食の目玉焼きを見て、"卵が黄色くて盛り上がっていて、新鮮ですね。やっぱり自然の中で育った卵は違いますねと、感激していた。中国の鶏は大自然の中で、のびのびと育っているとでも思っているのかもしれない。その人には中国に環境汚染があるなど、考えられないのだろう。

  こういう人の夢を壊して、申しわけないが、中国でも今では、卵工場のような鶏舎で採卵しているのであるから、大自然の中でということはない。仮に農家の庭先で生んだ卵だとしても、その親鶏は何を食べているのか疑った方がいい。中国の食品に関しては、無防備に、中国イコール大自然なんて考えてはいけないのである。

  もし中国に自然のまま、ということを当てはめたいならば、放置されていて管理されていないという意味で、自然というを言葉使ってもいいかもしれない。自然に飼われている鶏は何を食べているか、わからないと言う意味でもある。

  先日の新聞からであるが、北京郊外の養豚場の近くで、残飯から油を回収しているのが見つかって摘発された。中国料理の残飯というのは、油がとても多い。日本の残飯だとこうはいかない。私はこの残飯だったら、キット油を回収して商売にする人はいるに違いないと想像したのだが、想像どおりのことをしているのが、新聞に載っていた。"残飯から油を回収する"と言ったって、ドラム缶に残飯を放り込んで加熱して、浮いてきた油を掬い取るだけである。それをそのまま油として売るのである。こんな油で炒め物など作られたら堪ったものではない。しかもほんとに汚い(写真が載っていた)ところでやっている。

  作業する人は、側に掘っ立て小屋を建てて生活しながら、それを商売にしているようであった。それにしても、残飯は一桶200元だとか。結構するものである。高いから、油を回収して、その残りを豚の餌として売れば、結構利益になるのだろう。北京の市内では、ドラム缶に残飯を入れて運んでいくリヤカーをたくさん見る。その残飯を覗いてみると、中国のは、残飯が液体状になっている。中国料理というのは、ドロっとした料理が多いし、油をたくさん使うから、液状の残飯になるのだろう。こんな事を細かく書く必要はないかもしれないが、見たことなので書いてしまった。

  注水豚というのご存知だろうか。注水鶏というのもある。中国語で豚は猪だから“注水猪”と言うのが正しいのだが。これは無理に口とか肛門から水を注入して、肉の重量を増やしてから売る方法である。これはすでに書いたことであるが、このような肉は多分スーパーでは売られていないと思うので(多分?)、これを知らずに買ってしまうという心配はないもしれない。しかし、下の二例はスーパーで買い物したとしても安心なんだろうか?

  漬け物と言うのは、元々ぐちゃぐちゃな感じがするものだが、容器も器具も、服装も地面も、漬け物と同じく、ぐちゃぐちゃなところで作られている様子が、テレビに映った。埃だらけの屋外で作っていた。その製品が結構有名な漬け物工場に入っているのを記者は見たのだとか。

  日曜日に中央テレビの「毎週品質報告」という番組があるが、北京と天津の中間にある県のハム工場が取り上げられていた。ハムの肉に病気で死んだ豚の肉を練りこんであるのだとか。私はテレビの中国語はよく聞き取れないのだが、翌日の新聞にこのことが書かれていたので詳しく分かった。中国ではテレビが流したレポートを、そのまま新聞記事にするのが普通である。

  死んだ豚の肉は、専門の販売人が集めてきて、工場に売るのだとか。ある販売人の話だと、死んだ豚は、大脳炎、流感、拉稀などで死んだ豚だと言う。拉稀ってどんな病気なんだろう?

  記者が訪問した工場の女工場長は、死んだ豚の肉を使っていることをあっさり認めて、原料の肉の仕入れ値は、健康な豚の半分くらいで、1000kg当たり、7000元(11万円位)で買えるので、原価の削減ができると言っていた。女工場長は更に驚く事を言うのだが、「あなた達安心しなさい。この工場は正規の許可書も貰っているし、何時も衛生防疫局からも度々人が来て検査している。それにこのハムはもう何年も生産していて、何の問題もないのよ」とおっしゃっていた。この工場は天津金釜食品工場と言うのだが、ハムには"天津市技術監督局品質模範単位"と、れいれいしく書いてある。もう一つ死んだ豚肉を仕入れて、使っている工場があって、こちらは天津食芸園食品有限公司というのだが、こちらのハムには、"天津市百万職員安心食品"と印刷されているのだとか。

  このように表示されているハムがスーパーで売られていたら、このハムを疑いたくても疑えないだろう。工場の届け出や許可書などにしても、チャンとしていて問題がないのである。

  それから二日後の新聞を見たら、天津郊外の上記の二つの工場の製品が北京で販売禁止になった。しかし天津では禁止ではないようであった。北京で販売禁止といっても製造は禁止ではないらしいから、北京以外の地区に売られるに違いない。製造禁止にしないのが不思議でもある。それにこのあたりは天津と北京の中間にあって、北京と天津へハムを供給する産地でもある。だから同じようなハム工場はこのあたりにたくさんあるのであるが、死肉を使っていた工場は二つの工場だけだなんて、誰も信じないだろう。

  最近は中国でも、鶏の流感がよく話題になっていて、鶏への対策は問題ないと言っているが、大脳炎で死んだ豚の行方も管理して、ハムに混ざらないようにして貰いたいものである。